【UFN265】仕切り直しのウランベコフ戦へ、堀口恭司「UFC復帰戦で皆が『凄ぇっ!!』と思うような試合を」
【写真】試合の10日前には現地入りしていた堀口。その点からもUFC再デビューへの意気込みがうかがえる(C)SHOJIRO KAMEIKE
22日(土・現地時間)、ドーハはカタールのABHAアリーナで開催されるUFN265で、堀口恭司がロシアのタジル・ウランベコフと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
堀口にとっては2016年11月のアリ・バガウティノフ戦(堀口が判定勝ち)以来、9年振りのUFC再挑戦だ。当初は6月のアゼルバイジャン大会でウランベコフと対戦予定だったが、練習中の負傷で欠場に。5カ月の期間を経て、仕切り直しの一戦となる。その堀口がUFC出場への想い、そして正式発表とともに語った「日本を背負う」という言葉の真意を語ってくれた。
RIZINでフライ級のベルトを獲った頃、正直もう日本ではやることがないと思って
――遂にUFC再デビュー戦を迎える堀口選手です。現在は米国で調整中ですか。
「お久しぶりです! 今はもうカタールのドーハですよ」
――えっ、随分と現地入りが早いですね。
「昨日、現地入りしました(※取材は日本時間の11月13日に行われた)。だから試合の10日前になりますね。時差もあるし、気候とかも心配だったので、早めに現地へ入って調整しようと思ったんです」
――現地での調整はどのように?
「知り合いのファイターが、こっちにいるんですよ。あとATTからもコディ・ダーデンというUFCフライ級の選手が、一緒に来てくれていて」
――コディ・ダーデンですか。ウランベコフと対戦経験のあるファイターですよね(2023年12月、ウランベコフが判定勝ち)。
「そうです、そうです。そのダーデンが一緒に来てくれて、これから試合に向けて調整していこうかなって感じです」
――堀口選手のUFC再挑戦は今年3月のRIZIN高松大会で発表されました。本人としてもホッとしたのではないですか。
「やっと決まったな、という気持ちはありましたよね」
――堀口選手がUFCと交渉していることは伝わってきていましたが、公式的に表明したのは2024年初頭だったかと思います。RIZINに出場するなか、もう一度UFCに出たいと考え始めたのはいつ頃だったのでしょうか。
「RIZINでフライ級のベルトを獲った頃(2023年大晦日、神龍誠を下してRIZINフライ級王座を獲得)です。正直、もう日本ではやることがないと思って。自分としては『まだ日本人が獲ったことのないUFCのベルトに挑戦したい』という気持ちは、ずっと持っていました」
――ただ、UFCとの交渉はなかなかうまく進まなかったと。
「結構、難航しました。どこまで話して良いのか分からないけど……やっぱりUFC側もプライドがあるし、なかなかうまくは行かないですよね。自分は一回UFCから離れた人間だから」
――堀口選手は2016年11月のバガウティノフ戦を最後にUFCとの契約を更新せず、翌年からRIZINに出場しました。当時のUFCでは、それほどフライ級に力を入れているとは言い難かったと思います。自身がUFCを離れて以降のフライ級は、どのように見ていましたか。
「自分もあの場所を目指したいな、とは思っていましたよ」
――交渉が難航するなか、正式にUFCと契約に至ったのは急転直下だったのでしょうか。
「ちょっと前から話はありましたけど、正式決定は急でしたね」
――改めてUFC出場が決定したことで、練習内容やチームの体制に変化はあるものですか。
「いや、変化はないです。自分がやることは変わらないので、いつもどおりですね。チームとしては『やったな! ここからチャンピオンを目指していくぞ』とは言ってくれたけど、今はチャンピオンになるための1試合目に勝たないといけない状態で」
――その1試合目を負傷でキャンセルしました。
「怪我をしたのが試合の1カ月か1カ月半前——確か試合が決まってすぐでしたね」
――これが10年前、UFC初参戦の時であれば「怪我をおしてでも出よう」と考えていたかもしれません。しかし今回は……。
「怪我して戦っても、勝てる見込みは全くないですから。同じ人間同士、負傷でも何でもある状態では勝てないと思っています。ドクターやチームも『今回は試合をするべきでない』という判断でした。
自分は選手として『やってやるよ!』みたいな気持ちでしたけど、皆が止めるじゃないですか。『いやいや、ちょっと待て』と(笑)。まぁ、冷静に考えればそうですよね。自分もチャンピオンを目指してUFCで戦うので、ここは万全な状態で臨もうと」
レスリング能力だけでいえばウランベコフよりコードウェルのほうが上なので、心配はしていないです
――対戦するウランベコフについては、どのような印象を持っていますか。
「もちろん強い選手ですよ。UFCファイターだし、武器もいっぱい持っている。そんなファイターをどう攻略するのか。相手は身長が高くて、まだ試合でやられていないことも多いと思います。体格が小さい選手の踏み込みの速さとか、自分は他の選手にはないものを持っているので、その点を生かしていきたいですね」
――これまでウランベコフは体格的に小さい相手のパンチやカーフキックをもらっている印象はあります。それでも必ずレスリングの展開に持ち込むというファイターです。
「そうですね。グチャグチャ、って(笑)。前の試合で対戦していた選手(アザット・マクスン)も、ATTで練習していたんですよ」
――そうだったのですね。今回同行してくれているダーデンも含めて、UFCの試合が決まれば相手と対戦経験のあるファイターが身近にいる。そういった点でATTの良さは感じますか。
「その良さはありますよ。ただ、いざ自分が戦うとなったら話は別になりますけど」
――いまや多くの選手が堀口選手を窓口にしてATTで練習しています。堀口選手、元谷選手、そして神龍選手がATTで並んでいる写真を見ると、なかなか感動的で。
「えぇ、なぜですか」
――戦った経験のある日本人ファイターが、さらに強くなるために一堂に会する。それは日本のMMAが、さらに前に進もうとしている証でもあります。その中心に堀口恭司がいます。
「自分が中心ですか? それは単に写真を撮った時の位置でしょう」
――少なくとも日本人ファイターがATTに行く際の窓口になっているのではないですか。
「ダハハハ! 窓口であって、中心ではないですよ。というか、自分を窓口にするなって話で。俺は窓口係じゃない!!」
――アハハハ。話を戻すと、ウランベコフのようなレスリング地獄に持ち込む選手に対しては、どのような対策を講じていますか。
「自分も今までそういうタイプの選手と試合してきていますからね。ダリオン・コードウェルもそうだし。レスリング能力だけでいえばコードウェルのほうが全然、上なので。だから、そんなに心配はしていないです。取らせないところは取らせない、というところで」
――相手に取らせないことも重要ですし、もしレスリング地獄に持ち込まれても大丈夫という自信はありますか。
「はい。しっかりディフェンスできるし、何なら自分が上を取っても良いなと思っているので。今までやってきていることもあるし、ただただ相手のレスリング力から逃げようとするだけじゃなく、自分から仕掛けている時のほうが逃げやすい面も多いですからね」
――改めてUFCに臨むなか、気持ちもRIZINやベラトールで戦う時と変わらずに。
「変わらないですね。そこで変わっちゃダメだと思っているし」
――自身のYouTubeチャンネルでは「日本を背負う」という言葉がありました。10年前のUFC初挑戦の時と変わったのは……あの当時であれば「日本を背負う」という言葉は出てこなかっただろうと思います。
「あぁ、確かに……日本に帰ってきてRIZINさんに出たことで、人気をつけて来たほうが『日本を背負う』という気持ちも絶対に大きくなるじゃないですか。試合を見てくれる人の数も全然違うし。
10年前というとUFCのことを知らないファンの方も多いし、いくら自分が『日本を背負う』と言っても、実際に日本を背負うことなんてできないですよね。その点は、今は違うと思います」
――一方でその認知度と期待が、自身の中でプレッシャーにはならないですか。
「それが――プレッシャーにはならないんですよねぇ」
――それこそ堀口恭司というファイターが最も変わらない部分であり、堀口恭司の強さであると思います。
「他の人たちはプレッシャーになるのかもしれないけど、自分の場合は逆にパワーをもらうというか。『こんなに多くの人たちが応援してくれているんだ』って、自分のパワーになります」
――応援のパワーを得て、どれくらいの期間でUFCのベルトに辿り着きたいと考えていますか。
「UFCは実力主義じゃないですか。そのうえでファンの方が見てくれるという人気もあれば――今回の試合の結果にもよるとは思いますけど、ポンポンポンッと行けると思っています。だからまず次の試合は、しっかりと仕留めたいですね」
パントージャは『キョウジと戦えるなら嬉しいよ』という感じで。自分は自分は『いつかお前をやってやるからな』と(笑)
――ウランベコフは現在フライ級12位で、勝てば次はランキング中盤、そして上位ランカーと対戦することになるでしょう。そんなフライ級の頂点にいるパントージャは、堀口選手のUFC出場について何と言っていますか。
「パントージャは『キョウジと戦えるなら嬉しいよ』という感じですね。自分は『いつかお前をやってやるからな』と言っています(笑)」
――アハハハ! 良い関係ですね。堀口選手がUFCフライ級で戦うことで、同じフライ級にいる平良達郎選手との絡みも注目されているようです。しかし堀口選手がYouTubeなどで平良選手について触れることもないですね。
「ないですよ。接点もないし、関わりもなくて」
――平良選手と中村倫也選手が同じ大会に出る時、堀口選手が中村選手のセコンドとして同じ場所にいながら交流がなく……。
「たぶん向こうのほうが意識しているんじゃないですかね。自分のほうから挨拶もしているのに、何も返ってこないし……(苦笑)。ただ自分の場合は、戦うことが決まらなければ何も意識しないんですよ。もちろん『いつか戦うかもしれないな』っていう漠然とした意識はありますけど、それ以外は全く何も思っていないので」
――なるほど。今後の展開にも注目しています。最後にウランベコフ戦への意気込みをお願いします。
「UFC復帰戦で皆が『恭司、凄ぇっ!!』と思うような試合を見せるので、楽しみにしていてください。しっかり極め切りたいですね」
■視聴方法(予定)
11月22日(土・日本時間)
午後11時30分~U-NEXT
11月23日(日・日本時間)
午前0時00分~UFC FIGHT PASS




















