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【World NO GI 2019】ルースター級。アッパレ、レフ判定負けも澤田伸大は、ホドネイ=世界と互角に戦う

12日(木・現地時間)から15日(日・同)にかけて、カリフォルニア州カリフォルニア州アナハイムのアナハイム・コンベションセンター・アリーナで行われたIBJJF主催の世界ノーギ柔術選手権。

ここでは昨年の黒帯ルースター級世界王者、澤田伸大の戦いぶりを振り返りたい。


<ルースター級準決勝/10分1R>
ホドネイ・バルボーザ(ブラジル)
Def. by 4-4 レフェリー判定
澤田伸大(日本)

シードにより準決勝から登場の前年度王者澤田は、初戦でいきなり世界柔術2年連続準優勝の超強豪、バルボーザとの大一番を迎えた。

下攻めを主武器とする両者。指を掴み合った瞬間に同時に座るが、バルボーザがそこからシットアップして上を選択し、アドバンテージを獲得する。まずは澤田が、ここから右足を内側から右足に絡ませる得意の形を作ることになった。

左足を旋回させて崩しにかかる澤田に対して、バルボーザは左手をマットにポストして後ろ重心で対処。やがて距離を取って立ち上がったバルボーザは足を捌いてのパスを狙うが、澤田も対処し再び右足を絡める姿勢を作る。

一度離れたバルボーザは両足かつぎを狙うも、澤田はエビで対処して凌ぎ、シッティングに戻す。この動きで、バルボーザアドバンテージが追加された。

6分半。右足に絡まれたまま立ち上がったバルボーザは、前方にダイブしながら澤田の頭を抱えてのギロチンへ。澤田はすかさず反応して頭を抜き、上を取って2-0とする。が、バルボーザも澤田の右足に絡む得意のディープハーフの形を作ってみせた。

対する澤田はバルボーザの左ワキを左手ですくいながら、上半身を低くマットに密着させて上を保つ。足を抜いてのパスと同時に、得意のサワダバー(ファーサイドへの腕十字)を上から狙える姿勢だ。

ここでバルボーザが体を翻して上を取ると、澤田は下になりながらも、すくっていたバルボーザの左腕に腕十字を仕掛ける。バルボーザは後ろ重心になって腕を引き抜くと、その勢いで再び下になった。この動きで澤田にアドバンテージ。世界的強豪バルボーザの必殺ハーフガードを得意の腕狙いで切り返した澤田は、2-0のリードを保ったまま、アドバンテージ数でも並んだのだった。

残り4分半。先ほどとは逆に澤田の左足に絡むハーフを作ったバルボーザはもぐりにゆくが、澤田は両足を広げて右足をマットにポストする体勢でバランスを保って対処。これは、かつて中井裕樹との日本頂上対決に臨んだ澤田の師匠の早川光由が、中井の日本ハーフガードに対処した時の姿勢に非常によく似た動きであった。

この姿勢から両手でバルボーザの頭を押さえ、澤田は侵攻を止める。が、バルボーザは素早く逆回転して澤田を崩しながら上に。必殺技の切れ味を見せつけて2点取り返したバルボーザが、同点に追いついた。

そのままバルボーザは澤田の右足をキャッチしてアキレスへ。表情を変えない澤田。バルボーザはそれを解除して上を狙うが、澤田がすばやく反応して上に。これでバルボーザは2点を失ない2-4となったものの、同時にアドバンテージを獲得。この時点では負けているとはいえ、スイープで上を取れば勝てる状態をバルボーザが作ったとも言える。

残り3分。一旦離れた澤田に対して、バルボーザはシッティングから左足に絡む。そのまま正座して立ちにかかるバルボーザに対して、澤田は再び頭を押して対処。先ほどはここからの逆回転で上を取ったバルボーザは、今度は一旦マットに背中を向けて倒れて澤田の体勢を崩してから、向き直ってシットアップ。残り2分、またしてもディープハーフの崩しの妙技を発揮したバルボーザが2点追加し、アドバンテージ差で逆転した。

時間のない澤田はシッティングで絡む。バルボーザは距離をとって頭を付けて対処。澤田は右足を絡む体勢から内回りで崩しにかかる。そのまま澤田はバルボーザの両足に絡んでゆき、そのバランスを前方に崩すことに成功する。

が、両手をマットにポストしてバランスを取ったバルボーザは、スクランブルしての上キープを試みる。澤田はここで素早く反応して先にシットアップ。するとバルボーザは逃げるように前転。そこで澤田はすかさずバックに。バルボーザはすぐに腰を高く上げて澤田を前に落として危機を回避した。それでもこの息詰まる攻防の末に澤田にアドバンテージが与えられる。土壇場の残り30秒で、澤田はポイント&アドバンテージ両方においてまったくのイーブンに追いついたのだった。

スタンドから再開。どちらも得意の下を取りたいが、同時にダブルガードから相手に先に立たれてのアドバンテージは与えたくない難しい状況だ。

澤田の手首を掴んだバルボーザが、すぐに引き込み。同時に引き込む澤田。ここで立ち上がったバルボーザは、澤田が立つとすぐに座り、アドバンテージを献上せずに上下を成立させることに成功。そのままバルボーザは澤田の左足に絡むディープハーフへ。澤田が背筋を伸ばしてそれに対処するうちに試合が終了した。

ポイントもアドバンテージもまったくの同点だった両者だが、レフェリー判定はバルボーザに。バルボーザが取った4ポイントが、得意のディープハーフからの見事なスイープ2本。対する澤田の獲得した4ポイントは、どちらもバルボーザの上からのサブミッションの仕掛けに合わせて上を取ったものであったことを考えると、これは妥当な裁定だろう。レフェリー判定とは言え、まだ両者の間にゲームメイク力の差があったということか。

が、今回澤田が世界的強豪のバルボーザ相手に、試合終了までどちらが勝つか分からない大接戦を演じたのも事実だ。特に前半、ディープハーフを取るバルボーザの脇を上から制し、スイープを狙われてもサワダバー狙いで切り返して逆にアドバンテージを奪った動きは見事の一言。長年磨き続けてきた必殺技と、最近強化しているというトップゲームが融合した見事な動きだった。

さらに残り30秒の土壇場で、ポジションキープを狙ったバルボーザを下から崩し、簡単には逃さずにバックまで奪いかけて追いついた事実も特筆に値する。世界の舞台で超強豪相手に勝負所でポイントを取りきれる力を付けていることを、この日の澤田は証明してみせた。

初戦敗退となってしまった澤田だが、この試合を経て橋本知之、そして先輩の芝本幸司と並んで世界にマークされるルースター級日本人柔術家としての地位を確立したと言っても過言ではないだろう。

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