【WJJC2019】マルファシーニ、カイオ・テハ&ムスメシが揃い踏みのルースター級に日本勢4人が挑む!!
【写真】MMA専念と思いきや、シレっとエントリーしるだけでなく、絶対的優勝候補のブルーノ・マルファシーニ (C)SATOSHI NARITA
5月29日(水・現地時間)から6月2日(日・現地時間)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのカリフォルニア大ロングビーチ校内ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われる。今年度における各階級、そして無差別級における競技柔術世界一を決定するこの大会。日本勢が4人出場、メダルに最も近い最軽量ルースター級の見所をお届けしたい。
今年のムンジアル・ルースター級最大の話題は、昨年も圧勝して10度目の世界制覇&5連覇を達成したブルーノ・マルファシーニ(アリアンシ)のエントリーだ。昨年の世界大会後、黒帯をマットに置いてMMAに専念し競技柔術から引退と思われた絶対王者だが、どうも(やはり、というべきか)気が変わったようだ。
驚異的な身体能力と反応速度を誇り、世界中の全ての同階級選手から研究され、ありとあらゆる攻略法を試されてなお、それらをことごとく凌駕する強さを示してきた超人マルファシーニ。とはいえ、この一年間は昨年9月にMMAで1R一本勝ちを収めた以外は試合をしていないので、どのようなコンディションで出てくるかは気になるところだ。とまれ、この絶対王者攻略を達成する者が出てくるかどうかがトーナメント最大の焦点となるのは間違いないところだ。
さらにもう一つの大きな話題が、マルファシーニの最大のライバル、カイオ・テハ(ブラザCTA)のエントリーだ。
2013年にマルファシーニを下し2度目の世界王座に輝いた至高のテクニシャンは、16、17年の世界大会決勝でもアキレス腱固めグリップを巧みに用いてマルファシーニの攻撃を封じ込め、紙一重の接戦を演じている。この二大巨頭による2年ぶりの頂上対決の実現を世界が待ち望んでいるといえるが、なんと今回はポイントを持たない両者は同じ山になったばかりか、初戦をクリアすると準々決勝──つまり最終日の最初の試合で相対することとなる。
カイオ・テハ門下からはさらに2名、師のテハをも凌ぐような強力な優勝候補が(ブラザCTAとカイオ・テハ・アソシエーションに所属を分けて)出場し、マルファシーニを包囲している。一人はライトフェザー級にて世界2連覇中のマイキー・ムスメシだ。世界最高峰を決める場の準決勝と決勝において、相手を防戦一方に追い込んだ上で完勝し、頭一つ抜けた強さを見せつけた24歳の天才。
いわゆるモダン柔術の攻防において、世界の並み居る強豪たちに明確な差をつける圧倒的な技術力を持つムスメシは、強力なトップゲームと極めの力も持ち合わせている。
この驚異の若者とマルファシーニの初対決もまた、世界が期待するところだ。ムスメシが勝ち上がり、仮にマルファシーニが準々決勝でカイオ・テハを倒せば、両者の対決が準決勝で実現することとなる。テハ門下が誇るもう一人の優勝候補が、昨年のパン大会優勝者にして、世界大会では一昨年、昨年と続けて3位入賞している橋本知之だ。難攻不落のデラヒーバフックからの多彩な攻撃を誇る橋本だが、今年のヨーロピアンでは上からの攻撃を多用していた。決勝ではホドネイ・バルボーザ(カタールBJJ)に僅差で敗れたものの、新たな一面を披露している。
世界最高峰の舞台にあがってなお、目先の勝ち負けに拘り自分の得意な動きに固執するのではなく、さらなる実力向上を見据えて戦う姿勢に大きなスケールを感じさせる橋本。パン大会は肩の怪我で欠場したものの、テハの下で最終調整に励みカリフォルニアを南下する。今回、橋本は上記の三強とは別ブロックに配置されているので、二年連続で一本負けを喫しているマルファシーニとの対戦が実現するとしたら決勝戦となる。これまで以上に絶対王者の牙城に迫り、そして切り崩すような戦いが期待できるだろう。
さらにこの階級には、前述したように昨年準優勝者にして今年のヨーロピアンを制したベテランのバルボーザ、今年の春から階級を落としてパン大会を制したクレベル・ソウザ(アトス)や、そのソウザを今年のワールドプロで倒して準優勝し、その前の1月のヨーロピアンでは芝本幸司に完勝したカルロス・アルベルト(GFチーム)ら若手の有望株もエントリーしている。
彼ら3人の強力な優勝候補は、いずれも橋本と同じ(つまりマルファシーニ、テハ、ムスメシとは別の)ブロックに配置されている。橋本が勝ち上がれば準々決勝でソウザと、準決勝ではバルボーザとアルベルトの勝者と当たることになりそうだ。
そんな有力選手がひしめく最軽量級だが、日本からは橋本の他に3人の選手が参加する。まず挙げるべきは、橋本と並んで日本の最軽量級のトップを走る芝本幸司(トライフォース)。まぎれもなくワールドクラスの実力を持ち、ヨーロピアン優勝をはじめとして国際大会でも輝かしい実績を残しながらも、世界大会ではベスト8以降の壁を破れずにいる。近年は橋本やイアゴ・ガマらとの競り合いに遅れを取る試合も増えてきた。
が、今年のパン大会におけるガマとの3度目の対決では、最後まで主導権を渡さず勝利への道をしっかり見据えた試合運びを見せている。終盤の不可解なジャッジングもあり敗戦を喫してしまったものの、38歳にして進歩を見せつけ、悲願達成に向けて光が見えた戦いだったといえるだろう。今回初戦のデイヴィッド・ヘレイラ戦を突破すれば、準々決勝でムスメシと当たる公算が高い。この大きな山を越えると、準決勝でマルファシーニとテハの頂上対決の勝者と当たることとなる。その芝本の後輩の澤田伸大、渡辺翔平(今成柔術)もエントリーしている。
独自の仕掛けからの腕十字=澤田バーという絶対的な得意技を持つ澤田は、今年は精力的に国際大会の舞台に出場。特にパン大会では、優勝者のクレベル・ソウザ相手に澤田バーを起点とする仕掛けで渡り合う堂々の戦いを見せた。
今回は初戦で橋本に挑む形となる。世界柔術黒帯初挑戦となる渡邊は、その澤田に昨年のアジア大会で勝利した実績が光る。初戦の相手はムスメシだ。二人が世界的強豪にどう挑むか、見届けたい。