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【UFN150】初勝利も夢への第一歩、佐藤天「誰とやっても……勝っても地獄だと思って、やるしかないです」

Takashi Sato【写真】既に次戦も決まっているという佐藤、充実の日々を送る (C)Zuffa LLC/Getty Images

4月27日(土・現地時間)のUFN150で佐藤天がベン・サンダースを2Rで倒しオクタゴン初陣を飾った

ようやく辿り着いた世界最高峰、そこで最高の勝利を手にした佐藤は試合後もそれほど興奮することがなく、冷静だったという。これから待ち受ける茨の道を、後悔無く戦い抜くための覚悟が彼にはもうできているのだろう。

UFCでの勝利から2週間後、佐藤に取材を申し込むと「勝っても地獄」という言葉が聞かれた。


──UFC初出場、そして初勝利から2週間以上が経ちました。改めて、あの時はどのような心境になりましたか。

「もちろん凄く嬉しくて、気持ち良かったです。でも、もっと興奮するかと思っていたんですけど、ホッとした方が強かったですね。あまり実感がないというか、思ったより冷静でした」

──帰国後、祝福の声を受けて浮かれるようなことはなかったですか。

「帰国して……そういう風に言ってもらえたり、メッセージをもらった時は嬉しかったですが、UFCで勝ち続けるという目標に対し、一歩を踏み出したばかりなので……でも、凄く嬉しかったです」
 
──試合中、どれぐらいから行けるという気持ちになりましたか。

「1Rの中盤ぐらいに距離が合い始めて、行けると思えました。序盤は手探り状態でパンチも被弾していたので作り直しましたが、そこに時間が少し掛かってしまい。中盤以降、後半からリズムと距離を掴めました」

──これはもう左が当たるぞ、と。

「距離を合わせて、位置も合わせ相手の反応を見るところまでいったので。1Rを落としたこともあり、2Rはまず取りに行こう……自分からアクションを起こして創っていこうという感じだったので、左につなげていくイメージは1Rが終わった時点でできていました。

本当は1Rから取りに行きたかったですが、固くなっていて情報収集に時間を使い過ぎました。ただ2Rには取れる自信もあったので、それがKO勝ちにつながって良かったかと」

──UFCで戦うということで気持ちの高まりなどは、試合当日になかったですか。

「いえ、そこも意外とリラックスできていました。いつも通りに平常心で会場入りできましたし。フロリダに行ってからも毎日9時間ぐらい睡眠時間を取ることができて、昼間は散歩とか軽く動けていましたので、本当にそこは問題なかったです」

──図太い(笑)。

「アハハハハ。自分はいつもそんな感じで、試合の直前になって気持ちを創るのですが、去年のパンクラスのタイトルマッチの時に試合の2時間ぐらい前から入れ込んでしまって。あの時の経験もあったので、次の試合からもまたリラックスして挑むようにしていました」

──そうやって気持ちをコントロールできることが素晴らしいです。

「そうですか(笑)。良い精神状態で戦えたと思います」

──入場のときに、ついに来たと感極まるようなことはなかったでしょうか。

「もうスイッチも入っていて、歓声が凄くて気持ち良かったです。試合前なのですが、にやけてしまいました」

──やはり図太い(笑)。

「ケガから復帰して、タイトルマッチで失敗してから気持ちを創れるようになってきたという実感はあったのですが、それがUFCでできたので、今回だけでなくこれからも同じようなメンタルで戦えると思います」

──勝利後、秋葉選手への言葉にはさすがに感極まっていましたね。

「自分にとって夢の場所ではあったのですが、秋葉が亡くなってから毎日想ってきたことなので、あの時は耐えられなくなりました。今、思い出しても泣きそうになります……」

──お客さんにも、視聴者にも伝わる言葉だったと思います。リングアナのブルース・バッファーが立ち上がって拍手をして、解説のドミニク・クルーズも「亡き友達の存在が力になった。素晴らしい試合だった」と感激していたんですよ。

「そうですか、嬉しいですね。自分が勝手にした約束なんですけど、果たすことができて感極まってしまいました(苦笑)」

──UFCと契約でき、勝利することができたので、あえて聞かせていただきますが、その約束を守ることが重しになっていたというコトはないですか。

「そこも含めて、プラスになっていました。UFCという舞台で約束を叶えるには、自分の持っている全てを出さないと後悔すると気持ちで挑むことができたので」

──なるほどっ!! 当初対戦予定だったマイク・ペリーが、佐藤選手の4試合後で出てきてアレックス・オリヴェイラに勝利しました。この戦いの輪に入るんだと、やはりとんでもない世界だと思えました。

「誰とやっても……勝っても地獄だと思って、やるしかないです。実は次ももう決まっているのですが、まだ正式発表でないのでインタビューでは話すことができなくて……強くて良い相手だと思います」

──では正式発表がなってから、また話を聞かせてください。UFCファイターになり、次も決まっている。気持ち的にも張りのある日々を送ることができているのではないですか。

「格闘技を始めて6年になり、時間は限られていると思っています。ここで一気にギアを上げて、環境をしっかりと整えてやりたいことはどんどんとやっていきたいと考えています」

──それは海外での練習ということですか。

「ハイ、長南さんとしっかりと話してからですが、HARDKOCKで練習する時間を増やしたいと思っています。拠点を向こうに移すことも視野に入れています。後悔しないため、そういう練習をしていきたいです」

──それこそが勝っても地獄という場所で、戦うということなのかもしれないですね。

「地獄にいても充実している。自分がやりたいことをできている。それは嬉しい限りです」

──おかしな言い方ですが、地獄を満喫してください。

「こんな生き方はなかなかできないので、覚悟をもってやっていきたいと思います。UFCという日本人選手が勝つことが難しい場所で、僕だけでなく今いる日本人選手が勝っていき、日本人でも勝てるんだという存在感を示したいです」

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