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【Special】月刊、青木真也のこの一番:3月─その参─堀江圭功×田中半蔵「バンバンとUFCへ」

Horie vs Tanaka【写真】空手時代のサウスポーを消化し、MMAではオーソの構えで自らの距離を作りだす堀江 (C)MMAPLAET

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2月の一番、第3弾は17日に行われたPancrase303から堀江圭功×田中半蔵の一戦を語らおう。


──3月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合で青木アワード受賞は誰になるのでしょうか。

「堀江圭功✖田中半蔵です。堀江選手に関しては……僕はこれまでも言ってきたのですが、田中半蔵って強いと思っているんです。決してチャンピオンクラスではないですけど、一定数の実力があって本当にここを越えたらという選手なんです。

ハーバート(バーンズ)が田中選手に勝った時に、これは凄いことなんだよと説明したことがあるんですよ」

──2014年8月のONEドバイ大会ですね。

「ハイ。ハーバートに『彼は本当に強いファイターなんだよ』と話した思い出があります。その田中選手をぶっ飛ばしたというのは、まぁ時代は流れるよなっていう。パンチのある打撃選手特有の時間の経過というか、やっぱり『ヨーイ、ドン!!』で出して負けるようになるんでしょうね」

──あぁ打撃戦を積み重ねていくと。

「反応が遅れるようになる。若かったころは『ヨーイ、ドン!!』で出して先に届いていたモノが、相手の方が先に届くようになる。そういう現象なのかと。だから堀江選手もこのままだと、若い選手が出てきてその輪の中に巻き込まれることになる可能性もあります。

テクニカルなヤツは臆病で、当たるかどうかのヨーイ、ドンはやらない。堀口(恭司)さんとかそうじゃないですか。強い奴というか、上手い奴はリスクを背負うことを凄く嫌うので。伸るか反るか、乾坤一擲なことは一切やらない。堀江選手は今は若くて自信もあるから、ヨーイ、ドンで打ち負けないんですよ」

──その堀江選手がUFCに行きたいと訴え続けていることは、どのように捉えていますか。

「UFCは厳しいと思います。負けているからダメだったいう話ではないんですけど去年、田村一聖さんに負けていることを考えると、そんなに甘くない。それでも目指しているんだったら、頑張ってほしい。

彼なんかが可哀そうだなと思うのは、マスコミも団体も含めて『UFCを目指しなさい』と言ってきたわけじゃないですか、間違いなく。それがさ、『今日からUFCを目指さなくて良いから』というのは……」

──大人の事情で梯子を外すなと。ONEとの提携も良いけど、UFCへ行きたい選手の道も残しておけよと。

「ハイ、そうなんです。これってオウム真理教を信じていて、やっぱり嘘でしたって聞かされた信者のようなもんじゃないですか。んで、あの時のオウム真理教で言うと村岡達子しか残らなかったみたいな」

──スイマセン、その例えが分かりません。

「本当の一部の信者しか、残らなかったということですね。最後まで信じていたのは極僅かで。でも格闘技なんで。宗教じゃないし、そこまで変わるのって選手が可哀そうですよ。そのなかで自分を貫いている選手がいる。それは困惑しますよ。大人たちは変化したことを説明しろよ。お前ら無責任だろうと思いました」

──そうですね、それは我々メディアも含めて追及しないといけなかったことです。若い選手が気を使って発言していますからね。

「ハイ。選手が可哀そうです。若い選手に気を使わせるなよと。彼らがそんなことを言わないですむように、説明をしてよ。僕は選手ですが、業界を良い方向に導いていかないといけない立場ですし、今の状況は選手たちにゴメンナサイという感じです」

──青木選手が謝罪することは一切ないです。修斗もパンクラスも苦しい台所事情があるから、提携自体はポジティブに捕らえるべきなのですが、状況説明は必要だと。

「説明して、総意を取れよって。皆、空気を読んじゃって。高島さんが言ったように大人たちが実を取ることは当然なんです。正しいこと。ただし、説明責任はお前ら果たせよって気がしますよね」

──それでいて堀江選手はUFCと言い続けていると。

「今、なかなか日本人であんな風に倒せる選手はいない。期待値があります。体壊したり苦労もしている。それでいて真っすぐ。だらこそ、パンパンとUFCに行ってほしいですね」

──3月は国内もHEAT、DEEP、グラチャン、パンクラス、修斗と大会があったなかで青木選手のお眼鏡にかなった堀江選手ですし、これからも要注目です。

「そうですね……田中路教選手もいたのですが……僕は田中さんに関しては、こういう風に触れることはできないです」

<この項、続く>

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