【Special】『この人と話しておきたい年末、2018』。嶋田裕太─01─「ムンジアル後、NYに移り住みます!!」
【写真】この日、嶋田が撮影のために用意した道着は長年サポートを受けて来たALMAではなく、Enois──エノイスだった…… (C)MMAPLANET
2018年ももう残すところ僅か……。MMAPLANETでは、年内に1年の総括と新たな1年の話をどうしても聞いておきたい格闘家を5人ピックアップした。
題して『この人と話しておきたい年末──2018』。2人目は──日本のブラジリアン柔術界のトップランナー嶋田裕太。
このタイミングで彼に尋ねておきたかったことは、16日&17日にカリフォルニア州アナハイムで行われたIBJJFノーギワールドで、日本人世界チャンピオンが誕生し、ジョアオ・ミヤオと互角の戦いをやってのけた日本人選手が存在したことについて、だ。
ノーギワールドはスキップしても、特に問題視される世界大会ではなかった。しかし、そこで活躍する同朋の姿を見て嶋田は何を想ったのか。柔術のノーギ問題も踏まえて、彼の考えを尋ねると、嶋田がMMAPLANETを通して報告したいことあるという……。
──ノーギワールドで澤田伸大選手がルースター級で優勝、橋本知之選手はライトフェザー級でジョアオ・ミヤオと互角のレフ判定で準優勝。この両者の結果について、国内柔術家トップランナーの嶋田選手に伺いたかった次第です。
「ジェラシーでいっぱいです(苦笑)。自分のなかで諦めていたのが悔しいです。環境のせいにしていました。ノーギの練習をする場所がない。あったとしても週に1回の練習で、ノーギの試合に出たくなかったと。
僕のなかでADCCの本戦に出てからは柔術とノーギは別競技だという結論に至ったので、ノーギのトーナメントに出るのであればそれ相応の準備が必要になる。それができない状況だったので、周囲から『柔術のために良い経験になるから出るべき』と言われても出なかった。
でも、ふたを開けてみれば橋本君は凄く良い勝ち方で……危なげない試合を見せていて。僕が諦めた大会で、諦めずに結果を残した日本人柔術家がいた。NYやLAで一緒に練習していた選手が大活躍していた。彼らと一緒に出たかったと、大会後に思うようになりました。
来年は準備をしっかりして、出たいと思います。このモチベーションを持続していても、準備ができていなければ出ないですけど、しっかりと練習をして自信を持ってトーナメントで出たいと思います」
──柔術とノーギは別。でも、柔術に役に立つ。それは柔道でもサンボでもいえることかもしれないですが、より役立つ別競技だと。
「ハイ。澤田君や橋本君は、あくまでノーギをしてノーギで勝ったのだと思います。大会前はこういう気持ちになるとは思っていなかったです。でも、本当に良い試合があって……」
──ノーギワールドは、ポイント等には関係のない大会ですよね。
「ハイ、現時点では誰でもエントリーできる大会ですし、ムンジアルに出るためのポイントが獲得できるわけではないです。もちろんムンジアルで勝つことが一番大切で、あそこが僕がやっている競技の頂点だと思っています」
──橋本選手や澤田選手もそうでしょうね。
「ノーギはノーギで、柔術の経験になるという発想は今はもう少ないと思います。ノーギの練習をすることは、柔術のためになります。これまでの経験上、そういう実感はあります。ただし、ノーギのトーナメントに出るのは柔術のためではなくて、ノーギの試合をして勝つために出たいです。柔術のおまけにノーギがあるとかではなく、明らかに僕のなかでは別競技なので」
──別競技なのにジェラシーを感じるのですね。ただし、1月にはヨーロピアンが控えている。ここでノーギの試合に出ない選択肢が間違っているとも思えないです。
「う~ん、多分……二足の草鞋を履いたあの人たちが格好良く見えたんです。別モノだから、僕はできなかった。ノーギの練習を増やして、アメリカまで十何時間もかけて行って。時差ボケと戦いながら試合に出る。そこからヨーロピアンというのは……できなかった。賭けることができなかった。
でも、あの人達はヨーロピアンにも出るのにノーギワールドに出て結果も残した。格好良いです。その場に行けなかった自分が悔しいです」
──志の高い、無い物強請りといった感じですね。なるほど……。IBJJFの世界大会で、アダルト黒帯の日本人・世界王者が生まれ、それが自分でないことに嶋田選手がどう思っているのか。そこを尋ねたかったです。なかなか複雑な心境だったのですね。
「ハイ。2019年は強い意志を持って、練習をしてあの場に自分も立っていたいと思います」
──押忍。ではヨーロピアンの健闘を願っています。
「ありがとうございます。あのう……実は今回、こうやって話を聞いてもらっていたので、実はMMAPLANETを通してお知らせしたいことがあって……、個人的なことになるのですが、話をさせていただいても良いでしょうか」
──ハイ。結婚の報告とかでしょうか。
「いや、それはないです。クリスマスも柔術をして、一人で家にいるだけなので……(苦笑)。そんなことではなくて、もうお世話になった人には伝えさせてもらっているのですが、来年のムンジアルが終わればNYに移り住んで、向こうで柔術をすることを決めました」
──えっ……つまり、移り住むということは日本を離れ、NYに拠点を置くということですね。そして、当然マルセロ・ガウッシアのところで練習をすると。
「ハイ。MGで練習し、3年は向こうにいるつもりです」
──いよいよ、その決心をしたと。しかし、長期滞在をすることは簡単ではないと思うのですが……。
「ハイ、そこは就労ビザ、アスリートの就労ビザを取得することが可能になったんです」
<この項、続く>