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【ONE79】5カ月で3試合目、エブ・ティンと戦う青木真也─01─「相手を研究すると自分を崩す」

Aoki【写真】小外刈り、自分の形を崩さない練習を修斗ライト級チャンピオン松本光史を相手に行っていた青木 (C)MMAPLAET

10月6日(土・現地時間)にタイはバンコクのインパクト・アリーナでONE79「Kingdom of Heroes」が開催され、青木真也がエブ・ティンと対戦する。

WBC世界スーパーフライ級王者シーサケット・ソー・ルンヴィサイがイラン・ディアスを相手に王座防衛戦を行うリングで戦う青木の1日をAmeba TVが制作するドキュメンタリー番組= ONE DAY が追った。

MMAPLANETでイブ・タン戦に特化した青木のインタビューを活字でお届けしたい。


──7月27日のウィラチャイ戦から、すぐに10月6日のエブ・ティン戦が決まりました。

「そうですね。短いです」

──ウィラチャイ戦の前はラスル・ヤキャエフ戦が5月にあり、この5カ月で3試合というのは青木選手クラスのファイターになると、今やなかなかあるスパンではありません。

「特に何も変わっていないです。基本的に来た仕事は全部受けています。仕事なので、自分の都合を優先させようとは思わないです」

──DREAMの頃とは回復力なども違ってきているかと思いますが、このスパンで試合のための練習をしていると体がきついと感じることはないですか。

「違っては来ているんでしょうね。でも、ここは本当にあんまり変わらないです。僕の場合は減量がないというのが関係しているかと思いますが。むしろONEの計量システムだと体重が足りない感じなので」

──無理はしていないから、連戦でも平気だと。

「う~ん、あんまり関係ないですね。減量がないのは一番です。試合が決まっても、飯村(健一)さんのミット打ちで連打が入るのと心肺トレーニングを増やすぐらいで、練習内容はほとんど変わらないですし。

要はルーティン・メニューを疲れたといっても削らない。それだけですね。基本は試合の時も試合でないときも変わらないです」

──試合前にイヴォルブで調整していた時は、試合前の追い込みが存在していたわけですよね。

「ありましたね。フォラヤンに負けるまでイヴォルブでやってきたのですが、結果的に追い込むって非効率だと思うんです。それなら山を作らず平坦にやる方が良いじゃないかと、それが今の僕の一つの実験のようなモノですね」

──昨年まで年に1度、多くて2度という試合間隔だった数年がありました。その時は、やはり試合だからという気持ちが芽生えていたのでしょうか。

「年に1回の時は……追い込むのとそうでないので、逆に体の調整が難しかったです。暇になるよりも、忙しくさせてもらっている方が充実感もあります。試合がない状態で練習を続けるのはやっぱり難しいです。そういう意味で、試合がコンスタントにあるとずっと同じペースでやれるので野球のシーズン中のような感じです」

──試合数が多く、しかも決定が早いのが今の特徴かと。スクランブルで出場して試合数が多いというのではなくて。

「以前は試合だけ決まって、相手はなかなか決まらないというのは確かにありました。でも、そこも僕のなかでは大きく影響することはなかったです。結局、僕でいうとMMAを15年やってきて、生計をたてられるようになって13年目になります。

もう何でも耐えることができます。経験値もありますし。今のMMAは多くて年間3試合というスポーツになっていますが、僕は今でも5試合や6試合戦えます」

──若い頃に年間に5、6試合するという経験がない世代は年に6試合も戦うことすら想像できないかと。

「僕、一番戦った時は7試合やっていますからね。試合がない状況も、試合があり過ぎる状況も経験したので……まぁ、慣れたものです」

──ところでエブ・ティン戦のオファーがあったのは、いつ頃ですか。

「前の試合が終わってから、すぐに10月か11月にできるかという連絡がありました。実は7月の後は暫く空くかな、次はシンガポールかなとは考えましたが、10月のタイ、シンガポールと同じ11月のフィリピン、この3つのなかのどれかになるだろうとは思っていました」

──早々にバンコク大会出場が決まりました。8月の日本での会見の時にチャトリCEOが発表する形で。

「ハイ。対戦相手は誰でも構わないと、試合の打診があった時に返答していました。チャトリは最初はシンガポールという考えがあったけど、それが前倒しになった感じですね」

──青木選手は誰とでも戦うという姿勢ですが、対戦相手がイブ・タンに決まってから、試合映像をチェックし始めたりするという感じでしょうか。

「大まかな枠ぐらいですね。あまり気にしないままです。相手のために格闘技をやっているわけじゃないから。飯村さんとはイブ・タンは蹴って来るので、カットの確認とかしてもらっていますがオーソかサウスポーかとか、そのレベルです。

他の選手がやるような、どっち周りだとか、どうやってくるかなんかは考えない」

──そういうなかでエブ・ティンの特徴は?

「なんだろう……一応はオールラウンドの選手だと思います。ただ分からないです、どこまでなのか」

──ガチャガチャしている印象があります。

「本当に実力自体はあるのかないのか分からない」

──安藤晃司選手と互角の展開のなかで、ヒザ蹴りを決めて勝利に手繰り寄せました。

「今の安藤がどうなのか……それは正直なところ思っています。あの勝ちがどうなのかも分からない。だから、そういう部分で怖さがあります。どのくらいの実力の持ち主なのか、確定できないので」

──何か凄く印象に残る試合をしてのけるという選手でもないですし。

「だからこその怖さですよね」

──フォラヤンとは、互角に渡り合っての判定負け。アリエル・セクストン戦ではゴチャゴチャした展開でスプリット判定勝ちしています。

「フォラヤンとは互いに途中から手が出ない感じになっていましたよね。どちらも待ちのファイターなので。セクストン戦はセクストンが攻めて、そこに対応したのでああいう形になりました」

──セクストンは青木選手と同じグラップラーで、まずはテイクダウンという戦い方でした。ただセクストンはそこからもガチャガチャで、青木選手のガッチリいく寝技とは違います。だからこそ、その形からエスケープされた時が、青木選手にとって嫌なパターンかと。

「それはその通りで。ただ、そういう展開になる力があるのか。まぁ弱くはないと思います。だから……本当に分からない。僕としては良いコンディションでもっていき、全力でぶつけるだけです」

──体格的はずんぐりしています。

「もともとは絞ってフェザー級の選手ですからね。北岡さんみたいな感じじゃないですか(笑)」

──アハハハ。

「でも相手どうこうでなく、試合までケガをしないこと。試合をするって遊びみたいなモノなので。怖さと楽しさとワクワク感というか……ワクワクじゃないな、怖さを楽しむということで良いのかな」

──怖さがあっても、対戦相手をしっかりと研究するということにはならないのですね。

「大事なのは自分じゃないですか。相手を研究して、自分を変えるというのが一番ダメなので。もう勝負哲学の話ですよね。自分が一番強いところを崩さずに、相手の弱いところにぶつける。それが僕の勝負の哲学だから崩さないです。相手を研究して、対策を練るというのは自分を崩していることになるので」

<この項、続く

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