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【ONE68】MMAデビュー戦前日のゲイリー・トノン─01─「体にダメージを受けながら戦うということ」

Garry Tonon【写真】ついにゲイリー・トノンがMMAに進出を果たす (C)ONE

24日(土・現地時間)、タイはバンコクのインパクト・アリーナで行われるONE68「Iron Will」で、ついにゲイリー・トノンが初MMAに挑む。

ノーギ・グラップリング、特にノーポイント&サブオンリーの世界でサドル・ポジションからの足関節を駆使し、時代の寵児となったトノン。グラップリング界の革命児が、果たしてどのようなMMAマッチをリカルド・コーミナルを相手に見せることができるのか。

ベスト・グラップラーが決してベストMMAファイターでないことは歴史が実証している。それでもレスリング、IBJJF的なノーギ柔術の技術も駆使し、さらに新時代足関節を武器に、名匠ジョン・ダナハーの指導の下トノンはどれだけMMAに適応できているのか。

グラップラーとして、どこに注意し、どう攻めるのか──を試合前日のトノンに尋ねた。


──MMAファンばかりか、柔術界からも注目されているMMAデビューが明日に迫ってきました。今の心境を教えてください。

「凄くエキサイトしているのと同時に、やはり恐怖もある。全く新しい経験だし、ケージに足を踏み入れるのには色々な感情が入り乱れているよ」

──期待と同時に素晴らしいグラップラーのゲイリーが、かつてのマルセリーニョ・ガウッシアのようにMMAデビューに失敗する恐れもあり、見る側も怖いという気持ちがあります。

「これまで柔術家が犯してきてミステイクをしないこと。グラップラーがMMAに転じて、失敗してきたことをしない。それがまず一番だよね。柔術家にとって、MMAを戦う上で最も困難になるのが、体にダメージを受けながら戦うということだと思うんだ。

グラップリングを戦う限り、相手にダメージを与えるのはサブミッションだけだ。腕や足を攻撃し、もちろん絞めで試合が終わることもある。でも、顔を殴られて戦うモノじゃない。エルボーでカットすることもないよね。

そういうダメージって、メンタルにも影響を与えることになると思う。例えば、グラップリングで僕がアームバーを仕掛けて、相手が逃げた。大抵の場合はダメージはない。ラウンド終了時にボロボロになっていることもないだろう?」

──打ち身のダメージはないですよね。

「MMAはそれが頻繁に起こる。テイクダウンを狙って、スプロールされ、サブミッションを狙っても極めらなければラウンド終了時に相手にダメージはない。だからこそ、僕にとって最大のチャレンジになるんだ。グラップラーとして、どのようにダメージを与えることができるか、だね」

──どれぐらいの期間、MMAを戦う準備をしてきたのでしょうか。

「去年から少し打撃の練習はやってきた。ただ、それは週に一度ボクシングやムエタイを習うようなモノだった。あとはミット打ちぐらいで、スパーリングを必死にやっていたわけでもないんだ。

なので、本当の意味でMMAの練習を始めたのは3カ月前になるかな。打撃を織り交ぜたテイクダウン、そこからの展開に関してヘンゾ・グレイシー・アカデミーでジョン・ダナハーの指導を受けて来た。

トレー二ング・キャンプをダナハーの下で行い、スパーリングセッション、ドリルセッションではケージで戦うために必要な要素を教わり、彼は誰とどのようなスパーリングをするのが良いのかなどもコーディネイトしてくれた。

テクニカルな面をプッシュするだけでなく、ダメージを負わないための動きを身ににつけるようにしてくれて、技自体の精度も上がり、成長できたよ。

MMAのためのトレーングをヘンゾ・グレイシー・アカデミーの数々のファイターと行いつつ、1日に1度はグラップリング・トレーニングも続けて来たんだ」

──ONEではグラウンドでのヒザ蹴りが認められているので、ユニファイドルールよりもテイクダウンの仕掛けはより大きなリスクになります。

「そこは本当に恐れている。テイクダウンにいって失敗し、頭にヒザ蹴りを入れられるようなことはないようにしたい。レギュラールールじゃ、そんな攻撃は認められないからね。そんな風にならないようにテイクダウンに成功する必要があるし、その練習を積んできた。

そこでダメージを負うと、グラップラーは厳しい。パワフルなストライカーを相手に寝技に持ち込むことは簡単じゃない。でも、それを成し遂げないとグラップラーに勝ち目はないんだ」

──リカルド・コーミナルに勝つためには、どのような点が鍵となってくると思っていますか。

「勝負の鍵はいかにサブミッションを極めることができるかだよ。シンプルに。そのためにエキサイトし過ぎないコトが大切だと思っている。打撃を学んだからといって、そっちに走り過ぎると危険だ。

そして、コンサバティブに戦うことだね。守り重視の戦い、これはグラップリングの試合で僕は決してすることがない。だから、こういうのは苦手なんだけど、絶対的に重要になって来る。

まぁ、どうなるかは実際に試合にならないと分からないだろうね。スマートに戦い、危険な状態に持ち込まれないこと。そうすれば勝機は増す。反対にリスキーな攻撃を仕掛けると、彼のパンチに苦しめられることになる。そして、ダウンを奪われてしまうだろう」

──つまり、グラップリングの時よりも我慢のファイトになる可能性が高い?

「その通りだよ。MMAで戦うために必要なスキルは、僕にとっては真新しいものばかりだ。何が起こるか分からないのがファイトだからね」

<この項、続く

■ONE68対戦カード

<ONE世界バンタム級 (※65.8キロ)選手権試合/5分5R>
[王者]ビビアーノ・フェルナンデス(ブラジル)
[挑戦者]マーチン・ウエン(豪州)

<ストロー級(※56・7キロ)/5分3R>
デェダムロン・ソーアミュアイシルチョーク(タイ)
ジェレミー・ミアド(フィリピン)

<ライト級(※77.1キロ)/3分5R>
シャノン・ウィラチャイ(タイ)
ラフール・ラジュ(インド)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
サイー・フセイン・アルサラエフ(ロシア)
山田哲也(日本)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ワカー・ウマー(パキスタン)
チャオ・チーカン(中国)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ゲイリー・トノン(米国)
リカルド・コーミナル(フィリピン)

<ストロー級(※56・7キロ)/5分3R>
クリッサダ・コンスリチャイ(タイ)
ロビン・カタラン(フィリピン)

<ライトヘビー級(※120.2キロ)/5分3R>
アラン・ンガラニ(香港)
アリウンボルド・トロチェル(モンゴル)

<ミドル級(※93.0キロ)/5分3R>
ジェイク・バトラー(米国)
ジルベウト・ガルバォン(ブラジル)

<バンタム級(※65.81キロ)/5分3R>
ヒシャム・サムス(マレーシア)
ツー・ノット(インドネシア)

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