【ADCC2015】77キロ級出場のクラウジオ・カラザンスが無差別制覇!! 女子60キロ級は新女王ダーンが優勝
【写真】77キロ級出場選手による無差別級優勝は史上初となったクラウジオ・カラザンス (C)GLEIDSON VENGA
8月29日(土・現地時間)から30日(日・同)にかけて、ブラジル・サンパウロにてアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション選手権が行われた。2年に1度、世界最高峰の組業師たちを集めて行われるこの大会。今年もグラップラーの祭典と呼ぶに相応しい強豪たちが集まった。実質上ギ無しグラップリングの世界最強決定戦といえるこの大会、最終回は無差別級決勝と女子60キロ以下級の模様を紹介したい。
<無差別級決勝/20分1R 延長10分×2R>
クラウジオ・カラザンス
Def. by 0-0 マイナスアドバンテージ 2-3
ジョアオ・ガブリエル・ホシャ
88キロ以下級覇者シモエス、99キロ以下級覇者ヴィエイラがともに敗れ、まさかの組み合わせとなった決勝戦。体格に勝るホシャは、カラザンスのタックルをがぶると内股一閃。カラザンスが片足立ちで堪えながらもガードを取ると、これでマイナスが一つ付いた。最初の10分は加点こそされないものの、引き込みによるマイナスは試合開始から取るという決勝独特のルール故だ。しばらくクローズドガードで守ったカラザンスは、ホシャがステップオーバーパスを狙ってきた瞬間に立ち上がることに成功。その後はスタンド戦が続くことに。
ここで積極的に足を跳ばすカラザンスに対して、やや守り気味になるホシャ。するとレフェリーはホシャにマイナスアドバンテージを宣告。ポイントは同点となった。その後はスタンドでホシャも積極的に仕掛けるようになる。ホシャがテイクダウンを狙いに行くと、カラザンスは準決勝でも決め手となった10フィンガーギロチンに。ホシャはすぐに距離を取って脱出したが、カラザンスのこの技はテイクダウンン狙いに対して抑止効果を持つ。その後は両者目立った攻撃を見せることもできず、さらに両者にマイナスが加算されたところで試合は延長に突入した。
延長戦でも同様のスタンドの攻防が続き、試合は最後の延長に。疲労により明らかに動きが落ちているホシャに対して、カラザンスの方は力強く躍動感のある動きを見せている。そのうちホシャのほうにもうひとつマイナスが加算され、カラザンスがついにリード。これで仕掛けざるを得なくなったホシャは前に出るが、なかなかカラザンスを崩せない。
残り時間も少なくなってきたころ、ホシャはタックルから一瞬の隙を突いてカラザンスの背後を取り、場外際で体勢を崩すことに成功。カラザンスが膝を付いた状態で試合場中央に戻ってのリスタートとなった。最後のチャンスに賭けるホシャだが、カラザンスは前転を繰り返してエスケープを計ると、さらに体を翻してトップを奪取。ホシャはハーフから懸命に仕掛けを作ろうとするが、カラザンスは少し距離を作ってそれを回避しながらのパス狙い。本気でパスを狙うというより、マイナスを取られないための巧みな動きをカラザンスが見せるうちに試合終了。その瞬間、カラザンスは渾身のガッツポーズとともに雄叫びを上げた。
階級別は88キロ以下級に出て敗退し、柔術でもミドル級の体格のカラザンスがまさかの無差別級初制覇。スタイル的に天敵と思われるホドウフォ・ヴィエイラの準決勝敗退という幸運こそあったものの、カラザンスはこの大会で唯一、柔道&レスリングのテイクダウン、スクランブル力、そして10フィンガーギロチンという、他の選手にはないユニークな武器の組み合わせを見事に使いこなしてみせた。その点でこの優勝は決してフロックとはいえまい。
スタンドの攻防においてはテイクダウンの攻防が中心となりがちななか、柔道の経験を持つカラザンスは加えて足を跳ばし、また相手が組んできたところに、寝ずに仕掛ける10フィンガーギロチンを合わせて優勢点を稼ぎ、さらに組みつきにくくしてみせた。独特なルール故、強豪柔術家同士による退屈なレスリングマッチが延々と続く展開になりがちなADCC大会。延長に次ぐ延長でスタンド戦を勝ち残ったカラザンスの試合もそのようなものに映りかねないが、実は彼一人、「柔術家による二流レスリングマッチ」の枠を一歩超える戦いを見せてくれていたと言えるのではないだろうか。
とまれ、5月の世界柔術ミドル級初制覇に次いで、ADCC無差別級制覇も成し遂げたカラザンス。これまでタイトルにどうしても届かなかったこの男の努力が、一斉に開花した一年となった。2年後の次回大会では、所属道場アトスの総師アンドレ・ガルバォンとスーパーファイトを行うこととなるが、果たしてこの同門対決は実現するのか、その際に両者がどのような進化を遂げているのか、今から楽しみにしたい。
なお、この無差別級の3位決定戦はユーリ・シモエスが怪我のため出場せず、ホドウフォ・ヴィエイラが3位入賞を果たしている。
【女子60キロ以下級】
<女子60キロ以下級決勝/20分1R 延長10分×2R>
マッケンジー・ダーン
Def. by 2-2 マイナスアドバンテージ0-1
ミシェル・ニコリニ
今年の世界柔術級の再現となったこの試合。ニコリニは1回戦の湯浅麗歌子とのテクニカルな攻防を展開した上、上のポジションを取って2-0で勝利。対するダーンは階級上の世界王者ビア・メスキータとの激戦をレフェリー判定で制して勝ち上がってきた。
試合開始早々、スタンドでほとんど掌底合戦と見まがえるかのような首の引っ掛け合いを展開する両者。一発貰った(?)ダーンが逆に手を出しながら前に出ると、ニコリニはその勢いに押されたかのように引き込み。決勝戦のみ、引き込みによるマイナスポイントが試合開始時から付くルール故にニコリニにマイナスポイントがついた。
その後も激しい攻防が続いて10分が経過し、加点時間帯となるとニコリニがスイープを決めて逆転。しかしダーンもスクランブルからのテイクダウンを仕掛け、ニコリニにカウンターのスイープではね上げられながらも上をキープして再逆転に成功。するとその後はニコリニが50/50から上になってさらに逆転。しかし、ダーンは後転しての足狙いから、ニコリニを横に崩すスイープでさらに上に。ニコリニは必死で起き上がろうとするが、先に立っていたダーンはそれを押し倒し、これでポイントは4-4ながらもマイナスアドバン差で再再々逆転に成功!! その後ニコリニはオモプラッタから足関節につないで立とうとするなど猛攻を仕掛けるが、ダーンはことごとくスクランブルで上をキープ。結局、時間切れまで上のポジションを譲らなかったダーンが勝利、世界柔術に次いで対ニコリニ2連勝を飾った。
なお、女子60キロ以上級では本命のガビ・ガルシアが、準決勝にて自分よりはるかに小さいジェシカ・オリヴェイラにバックを奪われかけて敗れるという大波乱。決勝にて、そのオリヴェイラとのバッハ同門対決を大差で制したアナ・ロウラ・コルデイロが優勝を果たした。
■リザルト
【男子無差別級】
1位 クラウジオ・カラザンス(ブラジル)
2位 ジョアオ・ガブリエル・ホシャ(ブラジル)
3位 ホドウフォ・ヴィエイラ(ブラジル)
4位 ユーリ・シモエス(ブラジル)
【女子60キロ以下級】
1位 マッケンジー・ダーン(米国)
2位 ミシェル・ニコリニ(ブラジル)
3位 タミー・メスムシ(米国)
4位 ビア・メスキータ(米国)
【女子60キロ以上級】
1位 アナ・ロウラ・コルデイロ(ブラジル)
2位 ジェシカ・オリヴェイラ(ブラジル)
3位 ガビ・ガルシア(ブラジル)
4位 アマンダ・サンタナ(ブラジル)