【Interview】川尻達也 〈02〉「不安はあるけど、やっぱり好きなんで。やりたいから、手術も受けた」
【写真】手術は成功、術後の経過も良好。それでも、UFCという最高峰の舞台で戦うためには心身ともに準備期間が必要となってくる(C)MMAPLANET
7月28日に3度目の網膜剥離の出術を行い、現役生活を続けられる目途が立ち始めた川尻達也インタビュー後編。術後の経過を前回は語った川尻だが、練習再開の時など話を続けるうえで拭い切れない不安と、避けようの無い現実があることを吐露した。
そして、引き続き世界最高峰で戦う決意を穏やかに口にした。
<川尻達也インタビューPart.01はコチラから>
──手術の影響で視力の低下などは見られないですか?
「手術前と同じです。前の手術では落ちているので、発症前まで戻っているということはないですけど」
──気が急いてしまって申し訳ないのですが、練習はいつぐらいから再開できそうですか。
「8月13日に診察を受けたときに、あと3、4週間ぐらいでウェイトとかはできると言われているので、9月の頭から徐々にできることをやろうと思っています」
──格闘技を続けることができる。その事実に対して、どのような気持ちでいますか。
「う~ん、何ですかね……。嬉しかったり……まぁ、嬉しさよりも不安の方がまだ全然大きいです。続けられる可能性が出てきたぐらいで。復帰するだけじゃ、何もならない。ダメだと思うんです。要は以前の自分よりも強くなって、勝たないといけないので。そこまで戻れるのか、年齢やブランクも含めて考えると、あの状況まで戻ることができるのか分からないという部分も……。それでも格闘技を続けることができるという嬉しさはあります」
──目に対する恐怖は、これまでよりも軽減しそうですか。
「どうなんですかね……? まぁ、前回の治療とは全く違うので、今までのようなリスクはないと思いますが、それでも普通の人と比較するとケガをするリスクは高いと思うので、安心はできないです」
──では普段の生活のなかで、子供さんと遊んでいて指が目に入っても危ないという感じは続くのでしょうか。
「それはずっとじゃないですかね、ハイ」
──なるほど、簡単ではないですね。でも、辞めなくて良いというのは川尻選手のなかでは大きくはないですか。
「そうですね、うん。まぁ、良いことなんですよね(笑)」
──2週間、格闘技のことを忘れるという経験をすると、またしんどい世界に戻ることを気持ちが拒否するようなことは?
「大丈夫なのかなっていう心配はありますよ。もう一回、奮い立たせることができるのかっていう不安は。不安はあるけど、練習に復帰できる環境に戻れば、その不安もなくなるんだろうなという風には自分のなかでは思っています。やっぱり好きなんで。やりたいから、手術も受けた。それでも、目は手術できたけど、格闘技は何もできない現状では、世界最高峰のUFCの舞台に戻られるだけ自分を作ることができるのか――という不安はあります」
──勝手ながら、その不安は格闘技を諦めないといけないという状況から、脱することができたので持てる不安、ポジティブなモノだと捉えさせていただきます。そして練習を再開すれば、川尻達也らしくガムシャラに取り組んでくれるものだと確信しています。
「僕もそれを信じています。けど、それまで長いですね」
──今日、解説の仕事でUFCの試合を見るのは刺激が大きかったかもしれないですね(笑)。
「グイダの試合は気になっていたので、ベルムデスが勝った試合は見ていたんです。でも、ホント、それ以外は見ていなかった。以前は相手を制するか、どんな練習するのか、常に何かしら格闘技のことを考えていたのに……、全く考えていなかったので、やっぱり大丈夫なかって(笑)。
でも、そういう期間も必要だと思うようにもなりましたね。オン・オフ、頭を切り替えた方が集中力も増すと思うようにしています(笑)」
──では、最後に凄く心配していたファンに一言お願いします。
「たくさんの人に本当に心配してもらって。メッセージや手紙なんかももらって、気になっている人もいると思うんですけど、手術は無事に終わり、現役を続けても大丈夫だということを先生に言ってもらえました。もう一度、以前のように……いや、前以上に強くなった自分を見せられるように頑張っていきたいと思います。まずはしっかりと網膜剥離を治します。これからも応援よろしくお願いします」