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【GFG05】メインで小倉、コメインで佐々木が敗北。20代ファイターの台頭からの”これから”を考えてみた

【写真】五所川原での開催が特色であって、売りではないこれからとは――(C)MMAPLANET

11月30日(日)、森県五所川原市のふるさと交流圏民センター=オルテンシアでGlobal Fightingsports Game=GFGの第5回大会が開催された。
Text by Manabu Takashima

本州最北端のMMA=GFGを率いる五所川原市議の藤田成保氏が、「青森のエース」とイベント前に話していた小倉卓也はメインでキャリア4戦目の25歳――NEXUSを主戦場とする奥村健太郎と対戦した。

先にテイクダウンを奪った小倉はレッスルアップからリバーサルを狙った奥村のバックを制したが、両足をフックできず前方に落とされる。結果、トップを取った奥村が肩固めをセットしていくが入りきれず、小倉がスクランブルに持ち込んでスタンドに戻る。

奥村はダブルレッグでテイクダウンも、小倉がギロチンを警戒しつつ立ち上がってシングルレッグを仕掛ける。切った奥村のシングルレッグを切り返してトップを取りかけた小倉だったが、タートルポジションの奥村がまたも前方に落としにかかる。

このスクランブルで、奥村がキムラで小倉を前方に崩しつつ、背中をつけさせると頭を刈って腕十字へ。しっかりとグリップを切った奥村が小倉の右腕を伸ばしてタップを奪った。

NEXUSでタイトルコンテンダーだった小倉を破った奥村は、今大会を視察に訪れていたNEXUS山田代表にタイトル挑戦を直訴。直後に小倉率いるスカーフィストからNEXUS参戦中の塩谷優斗がリングインし、奥村に「タイトル挑戦権を賭けて、4月のNEXUSでやろう。〇〇〇大会で!!」と呼びかける。奥村もこれに応じたところで山田代表がリングインし「〇〇〇大会は未発表なのですが……(苦笑)。4月に挑戦者決定戦になるか分からないですが、2人の試合を組みます」と東京での両者の試合が決定した。

青森の新世代ファイターが、首都圏の大会を巻き込んでMMAファイターキャリアの構築しようというマイクでGFG05は幕を閉じた。そんなマイクアピールが行われる直前に小倉はリング上から、200人近く会場に集まった応援団に「引退するわ」と笑顔で頭を下げていた。

また小倉と同様に青森から首都圏での挑戦を続け、Grachanでバンタム級のベルトを巻いたことがある佐々木郁矢は、コメインで福島・ブレイブハート所属の上杉隼哉に三日月を効かされ、ロープの外に体を出ている状態で追撃の攻撃を受けてTKO負け。

「腹が効かされたぁ」と、小倉と同じように笑みを浮かべていた佐々木もリングを下りる際に「これが最後、もう引退する」という言葉をセコンドやサポーターに向けて発していた。

とはいえ敗北直後のファイターが引退という言葉が発せられることは、ままある。43歳の小倉と41歳の佐々木が、このまま現役生活を終えるかどうかの結論は今しばらくの時間が必要だろう。その一方でプロ修斗青森大会からGFGと、本州最北端をベースに戦ってきた両者がイベントの締めで敗れ、今大会は東北のMMAの節目を強く印象づけたことは確かだ。


同時に世代交代には若い世代の台頭は欠かせない。GFGは40代、50代のファイターが多い。今回もプロ14試合中、9選手が+40だった。対して30代が9選手。20代の選手は10名で数的には20代も少なくないが、多くがデビュー戦やデビュー直後のファイターだ。ラスト5試合で戦った20代の選手はメインで小倉を破った――埼玉のK-PLACEから遠征した奥村のみだった。

今大会は首都圏から2選手、北海道から3選手の遠征選手が見られたが、20代のファイターを軸に考えると東北内で同世代ファイターとの切磋琢磨、凌ぎ合いの経験値は絶対的に足らない状態といえる。東北におけるプロMMA興行がGFG一大会だから、致し方ない。経験値を増やすために、それが可能な選手は首都圏でNEXUSやパンクラスに挑む。もしくは交流の多い北海道で試合経験を積むのが現状だ。

このように試合機会が、ごく稀といった状況下でも20代の選手は育ってきている。プロ修斗ライセンスを取ったコッシーりょう、寺田琉空といった選手たちをはじめ、この日実施されたアマ・パンクラス7試合の出場選手、プロの試合に出た10人の20代の選手たちの試合機会を増やすために、何が必要かを日本のMMA界はヒザを詰めて意見交換し、考える必要がある。

東北出身ではなく、東北在住選手の試合経験が安定して積める状況があれば、同地域でのパイは広がる。逆に競技人口の増加がなければ、MMAの成長も見込めない。それは東北だけでなく、日本全体に当てはまる。地方在住ファイターが成長できるだけの試合数と段階に則したクオリティオポネントを確保できないのであれば、縦割り社会でなく横のつながりも重視する。それぐらいでないと、日本全体が地盤沈下を止められなくなる。

そのためにも、地方大会に出場している選手たちの環境を整えるとういう観点から、首都圏と地方を結ぶ縦割り関係が解消されることを望みたい。

GFGを例とすると、同大会に出ている選手の首都圏と並ぶ数少ない遠征先である北海道も、縦割りの影響をモロに受けている地域である。縦割り社会による、横の交流=選手の行き来を禁じると経験値が増すのもスローペースになってしまう。反対に縦割りの壁を取り壊すことができれば、GFGの大会開催が年に1大会であっても、東北の選手も首都圏で2度、北海道で1度と年間4試合を消化することも可能になる。

あるいはGFGで1試合、首都圏が2試合。GFG=1試合、首都圏=1試合、北海道=1試合でも3度は試合を経験できる。本来、藤田氏がプロ修斗公式戦でなく、GFGを開催するようになったのも選手のステップアップ先の固定化を避けるためだったはず。でありながら、GFGから離れると――首都圏では××だけ、札幌では××という風に固定されプロモーション間を行き来できない。この固定化が、せめてタイトル挑戦圏内のファイター限定のようになれば経験値は上がるに違いない。

もちろん首都圏、地方大都市圏、地方都市のいずれにも “しがらみ”は存在する。コミュニティの大小に関係なく、いや小さな社会だからこそ齟齬や反目は根深いケースもあるだろう。

それでもMMAを発展させ、地方在住のファイターの成長を願うのであれば「××には出るな」という締め付けは即撤廃としてほしい。今回GFGを訪れたことで、試合機会を求めて選手もジムも、持ち出しても遠征を行うという話しを耳にした。この持ち出しに関しては、現状では招聘側のプロモーションの経済状態を考えると致し方ない部分もある。だからこそ、持ち出しても試合に出ようという若いファイターを縦割りで縛ることから是正してほしい。

それには地方だけでなく、東京に拠点を置くプロモーションも現状に対し、メスを入れる度量が必要になってくる。地方の問題は首都圏の問題と根っこの部分でつながっており、他人事ではない。地方在住ファイターの強化は、日本のMMA界の強化に欠かせないからこそ、地方も首都圏も関係なく違った角度から、同じ目線で考える必要がある。

■GFG05試合結果

<バンタム級/5分2R>
奥村健太郎(日本)
Def.1R3分32秒by 腕十字
小倉卓也(日本)

<バンタム級/5分2R>
上杉隼哉(日本)
Def.1R2分29秒by TKO
佐々木郁矢(日本)

<フェザー級/5分2R>
石塚将也(日本)
Def.3-0
葛西達(日本)

<フライ級/5分2R>
魚住良太(日本)
Def.1R3分02秒by 三角絞め
細川勇哉(日本)

<フェザー級/5分2R>
和田来(日本)
Def.2R1分53秒by TKO
エスカル御殿(日本)

<フライ級/5分2R>
苫侑我(日本)
Def.3-0
黒石大資(日本)

<ライト級/5分2R>
安藤辰則(日本)
Def.3-0
佐東伸哉(日本)

<ライト級/5分2R>
中村友哉(日本)
Def.2-1
宮崎知之(日本)

<ストロー級/5分2R>
寺田琉空(日本)
Def.1R0分39秒by TKO
大西浩人(日本)

<バンタム級/5分2R>
前川慧(日本)
Def.1R4分19秒by TKO
寺田隆(日本)

<フェザー級/5分2R>
山田浩平(日本)
Def.3-0
松藤冬馬(日本)

<フェザー級/5分2R>
コッシーりょう(日本)
Def.1R1分46秒by 腕十字
武田光信(日本)

<バンタム級/5分2R>
斎藤雄一郎(日本)
Def.1R1分34秒by ダースチョーク
渡邉陽大(日本)

<フライ級/5分2R>
澤田良(日本)
Def.2R2分22秒by RNC
千葉正樹(日本)

■2025年アマチュアパンクラス東北選手権試合結果(Sクラス・トーナメント)

<バンタム級Aトーナメント決勝/3分3R>
八木橋光(日本)
Def.1R1分03秒by RNC
福士広大(日本)

<フライ級トーナメント決勝/3分3R>
佐々木徠(日本)
Def.2R1分18秒by TKO
井上友斗(日本)

<ライト級トーナメント決勝/3分3R>
塩谷亮平(日本)
Def.1R2分23秒by 肩固め
丸山一哲(日本)

<バンタム級Bトーナメント決勝/3分3R>
杉山虎鷹(日本)
Def.1R2分23秒by 肩固め
田丸貴丸(日本)

<ストロー級トーナメント決勝/3分3R>
吉田直哉(日本)
Def.1R1分30秒by TKO
上道功大(日本)

<バンタム級Aトーナメント1回戦/3分3R>
八木橋光(日本)
Def.1R2分35秒by TKO
田淵月(日本)

<フライ級トーナメント1回戦/3分3R>
佐々木徠(日本)
Def.2R1分44秒byボックスギロチン
野上晴琉(日本)

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