【RIZIN LANDMARK12】伊澤星花に挑戦、大島沙緒里「嫌だなって思わせたい。しつこく戦っていきます」
【写真】試合間隔が短くても、過去の経験が万全の状態を生み出す(C)SHOJIRO KAMEIKE
11月3日(月・祝)に神戸市中央区のジーライオンアリーナ神戸で開催されるRIZIN LANDMARK12にて、大島沙緒里が伊澤星花の持つRIZIN女子スーパーアトム級王座に挑戦する。
Text by Shojiro Kameike
まさに急転直下だった。9月に須田萌里との再戦で判定勝ちした大島が、試合直後に伊澤との対戦をアピール。当日のテレビ解説を務めていた伊澤も、大島に対してサムアップを返し、「いつでも準備はできている」と語っていた。結果、試合の4日後に伊澤×大島によるタイトルマッチが発表されている。
おそらく大島×須田がマッチアップされた時点で、伊澤への挑戦者決定戦の意味合いを持っていたのだろう。それを自覚していたからこそ、前日計量の段階から大島には、いつもと違う気迫が漂っていた。そして、彼女はしっかりとチャンスをモノにした。
負傷、敗北、海外挑戦、連敗——幾度となく壁に阻まれながら、大島は遂に求めていた試合に辿り着いた。とはいえ本人も考えていなかったという、わずか2カ月弱のインターバルで臨むタイトルマッチ。大島にここまでの道のりと、伊澤戦への想いを訊いた。
このままMMAを辞めることができるんじゃないかな。辞められそうだな
――伊澤選手との対戦が決定したキッカケのひとつと言える9月の須田戦ですが、前日計量時の大島選手が漂わせていた雰囲気が印象に残っています。
「えっ、何か変でしたか!?」
――決して変ということではなく、かといって殺気というわけでもなく……大島選手の意気込みが過去の試合と「何か違う」ように感じました。
「9月の試合で負けたら私は3連敗でしたからね。正直、須田戦の前は自分も試合間隔が空いたり、怪我したりして――正直なところ1カ月以上、練習から離れていた時期もあったんですよ」
――というと?
「インヴィクタって試合というか、大会自体が少ないじゃないですか。主催者からは『次また試合を組む』と言われながら、組まれないということが何度も続いていました。最初の頃は『その試合のために練習しよう!』と思って、ジムにも行っていたんですよ。でも自分の中でも『これは試合が組まれないな』と思い始め、と同時に怪我もあって。それで1カ月以上、格闘技の練習をしていなくても、家のことで毎日がすごく忙しかったんですね」
――双子の娘さんもまだ小さいですし。
「そこで一回考えてしまったんです。『このままMMAを辞めることができるんじゃないかな。辞められそうだな』って」
――えっ!?
「そう考えていた頃に、須田選手との試合の話を頂きました。自分としては『ここから気持ちを切り替えることはできるかなぁ』とは思いながら、山﨑(剛Me,We代表)さんには『次の試合で負けたら引退するか、少なくとも休むことにします』と伝えて。山﨑さんにも『分かった。まずはこの試合を頑張ろう』と言ってもらえて臨んだのが、須田戦だったんです」
――「このままMMAを辞めることができるんじゃないかな。辞められそうだな」というのは、「まだMMAを続けたい。でもこのまま続けていても良いのか」という葛藤だったのですか。
「そうですね。私一人だけの話なら、いつでも辞めるのは楽だし、簡単じゃないですか。でも、まだ自分がやりたい試合まで辿り着いていないから、辞めるに辞められない。ずっとその試合を待ちながら、私を応援してくれている人たちがいます。だからもう一回、自分の中でしっかりと気持ちを入れ替えて。
須田選手とは再戦です。初戦は私が勝っていますけど、自分でも今回は結果がどうなるか分からないと考えていました。相手は連勝していて、自分は連敗中ですから。だけど『やることをやれば結果はついてくる』という意識で臨んだ試合でした」
――まだ辿り着いていない試合、それが伊澤戦だったのですね。
「はい。伊澤選手とはずっと対戦したかったです。
もちろん須田選手に勝つことで、私の連敗が全てチャラになるとは考えていませんでした。伊澤選手と対戦したいファイターは多いでしょうし、その順番の先頭に私が並ぶことは難しい。実際に伊澤戦が決まったあとも、SNSでは『イ・イェジに負けているじゃん』とか書かれたりしていますし(苦笑)。自分でも挑戦者として相応しくないのかな、とは思っています。でもせっかく回ってきたチャンスなので……」
自分の悪かったところを見つめ直しました。おかげで、米国で戦う前の自分に戻れたと思います
――結果論ではありますが、イ・イェジ戦については「いつもの動きではない」「何だったんだろうか」という印象は拭えなかったです。もちろんイ・イェジが、大島選手のことを本当によく研究し、しっかりと対策を実行したことは評価したうえで。
「あの時は、私の中で切り替えができていなかったです。Me,Weに移籍して、いろいろと練習内容も変わってきました。でも先ほどお話したとおり、練習に行っていなかった時期もあったりして。別に相手のことを舐めているわけでもなく、自分の中でなかなか覚悟が決まらない。試合でやりたいことも明確に決めていないまま試合に臨んでしまって」
――インヴィクタの件とジム移籍のことも含め、一連の流れの中で気持ちを整理することができていなかった。イ・イェジ戦以後でいえば、須田選手はそのイ・イェジに勝ち、さらに浜崎朱加選手も下している。そんな須田選手と対戦することになり、自分の中で何か変えた部分はありますか。
「まずイ・イェジ戦で負けたことで、一度は気持ちも落ちました。ただ、試合に向けて自分の準備が足りていない、あるいは間に合っていないということは実際に感じていて。コンディションもそうですし、自分の悪かったところを見つめ直しました。おかげで、米国で戦う前の自分に戻れたと思います」
――米国で戦う前の自分……。
「須田選手のことを想定して練習スケジュールを組み、相手がやってくるパターンを幾つも挙げて対策を考える。そのなかで自分が理想とする形まで持って行く。……あの時、ただMMAだけに夢中になることができていました。もちろん練習するだけで満足しているわけではないけど、『これだけやって負けるなら、それまでだ』と思えるぐらいの準備はしたんですよね」
――試合から数日後、須田選手のお父さん(スダコンガ=須田智行氏)と話す機会があり、「こちらの動きを研究され、やりたいことは全て潰されてしまった」と言っていました。
「そうだったんですね。そういえば須田さんが試合後にSNSで『積み上げてきたものが全て崩れた』みたいなことを書いていましたけど、私からすれば『自分なんて、ずっとそうだから』って(笑)。今まで何度もあったことだし、その負けがあって今の私がいます。負けが自分を強くしてくれる。須田さんも絶対にもっと強くなれる、強くなってほしいと思っています」
――なるほど。須田戦の内容がどうなるかを考えた時に、以前の大島選手は前後左右に動きながらローを散らしてから組んでいました。しかし公表はしていませんがBlack Combatの対抗戦、2023年9月のパク・シユン戦の前にヒザを負傷していましたよね。
「あの時はヒザの内側(内側側副靭帯損傷)をやっていて」
――現在、ヒザは完治しているのですか。
「それは大丈夫です。でも内側は治るのに、すごく時間が掛かりましたね」
――パク・シユン戦では両ヒザにテーピングで巻いていて。翌年5月の村上彩戦でも左ヒザをテーピングで固定していました。
「あれは――同じ足の外側(外側側副靭帯損傷)をやっていたんですよ。ただ、外側だと多少の寝技は大丈夫で。でも痛み止めを飲む時間が遅かったのか、組み合った時に痛みを感じたんですね」
――試合開始までに痛み止めが効いていなかった?
「はい。そこで痛みを感じたので、すぐに立ち上がりました。これは寝技勝負できないと思って」
――そうだったのですね……。須田戦の場合は一気に踏み込んでいたし、寝技でもトップをキープし続けることができたのは、ヒザの状態も良くなったのだろうと思いました。
「ヒザを負傷する前までは、『とにかく練習すれば良い』『ただただ練習すれば良い』と思っていました。でもヒザの内側をやり、1年以内に外側もやって。その時に『練習しすぎは良くない』と思いました。もう私も若くないな、って(笑)」
――大島選手ほど長く柔道を続け、実績も残していると『それだけ練習しないと勝てない』という強迫観念のようなものもあったのではないですか。
「アハハハ、そうですね。しかも減量がない試合だと、余計に試合のことが頭をよぎってしまって。練習していないと心配になってしまうんです。だから使える時間を練習だけに持っていくのではなく有酸素運動だけにするとか、強度を落として汗をかく程度にするとか。いろいろ変えてはみました」
『自分は挑戦者だから負けてもいいつもりでぶつかる』とか思えていたら、気持ちも楽なんでしょうけど――
――そして須田戦から約1カ月のインターバルで、今回の伊澤戦を迎えます。この期間で伊澤選手に勝つために、どのような練習を行ってきましたか。
「正直、須田戦前のほうが詰めて練習していたと思います。今はどちらかというとセーブしながら――やっぱりインヴィクタの時と同じ状態になるのが怖くて。
インヴィクタも村上戦の1カ月後で、気持ちを切り替えることができていない。実際に試合でも競った時に力が入らなかったんですよ。だから今回はもちろん練習しつつ、休みも入れて。あの時に一回学んでいるので、今回も同じ状態に陥らないように」
――以前と同じ状態であれば、むしろ伊澤戦が決まったことで、いつも以上に気負い過ぎていたかもしれないですしね。記者会見では伊澤選手のコメントに対して冷静で。
「この間の会見は――ちょっと言葉の意味が分からなかったんですよね。会見が終わったあと、SNSを見たら炎上していて(苦笑)」
――あぁ、「下位互換」という言葉ですね。下位互換という言葉はもともと、一つの製品に関して新しいバージョンと古いバージョンの互換性を示すものです。
「そうなんですね! 伊澤選手がコメントしたあと私のほうにカメラが向けられたので、何か悪いことを言われているのかなと思って。会見後、下位互換という言葉を検索したら『タイプは似ているけど自分よりは下』という感じの意味で。それなら伊澤選手が言っていることも合っているのかな、って思っちゃいました(笑)」
――えっ、似ていますか。
「お互いに柔道ベースではありますからね。それと柔道で言えば……柔道って強さが絶対なんですよ。何か他の要素があっても、強さが一番で。もちろん強いからって何を言っていいわけではないけど、それでも強い選手が言うかぎり、自分の中では受け入れるしかないです。ずっと強さが絶対な世界にいたから」
――……。
「伊澤選手は実力で今の位置にいるわけだから、その点については納得しています。どちらかといえば、私が何も言い返せなくてスミマセン(苦笑)」
――アハハハ、それも大島選手らしいです。その伊澤選手を相手に、タイトルマッチでどんな試合を見せたいですか。
「……『嫌だな』って思わせたいですね。しつこく、しつこく戦っていきます。
やっぱり勝ちたいから試合は怖いもので。『自分は挑戦者だから負けてもいいつもりでぶつかる』とか思えていたら、気持ちも楽なんでしょうけどね。SNSの勝敗予想を見たら、やっぱり私は不利という意見が大半だけど、私は密かに勝ちたいと思っているので。試合まであとわずか、緊張感を持って臨みます」
■視聴方法(予定)
11月3日(月・祝)
午前11時30分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!
■RIZIN LANDMARK12対戦カード
<フェザー級/5分3R>
秋元強真(日本)
萩原京平(日本)
<RIZIN女子スーパーアトム級選手権試合/5分3R>
[王者] 伊澤星花(日本)
[挑戦者] 大島沙緒里(日本)
<フェザー級/5分3R>
ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)
松嶋こよみ(日本)
<フェザー級/5分3R>
摩嶋一整(日本)
木村柊也(日本)
<50キロ契約/5分3R>
ケイト・ロータス(日本)
イ・ボミ(韓国)
<ライト級/5分3R>
宇佐美正パトリック(日本)
桜庭大世(日本)
<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
後藤丈治(日本)
<ヘビー級/5分3R>
貴賢神(日本)
MAX吉田(日本)
<62キロ契約/5分3R>
金太郎(韓国)
リ・ユンフォン(中国)
<ライト級/5分3R>
雑賀“ヤン坊”達也(韓国)
ヌルハン・ズマガジー(カザフスタン)
<バンタム級/5分3R>
鹿志村仁之介(日本)
安井飛馬(日本)
<ライト級/5分3R>
キ・ウォンビン(韓国)
キャプテン☆アフリカ(日本)
<フライ級/5分3R>
トニー・ララミー(カナダ)
山内渉(日本)
<キックボクシング51キロ契約/3分3R>
KING陸斗(日本)
水野夢斗(日本)
<OP女子スーパーアトム級/5分2R>
NOEL(日本)
海咲イルカ(日本)
<OPキックボクシング57キロ契約/3分3R>
赤平大治(日本)
翔磨(日本)
<OPバンタム級/5分2R>
宮川日向(日本)
MG眞介(日本)
<OPキックボクシング63キロ契約/3分3R>
元氣(日本)
林眞平(日本)
<OPキックボクシング51キロ契約/3分3R>
みいちゃんレンジャージム(日本)
伊藤菜の花(日本)























