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【JCK FN107】Road to UFCへ。小田魁斗がJCKを選んだわけ「中国人選手を倒すとUFCの評価が高くなる」

【写真】色々とトライをしていることが伝わってきた (C)MMAPLANET

11日(土・現地時間)、中国は山西(シャンシ)省吕梁(ルーリャン)にあるJCKインターナショナルナル・ファイトセンターで開催されるJCK Fight Night107で小田魁斗がアイディン・トフタルベクと対戦する。
text by Manabu Takashima

Road to UFCからUFCと明確な目標を持つファイターは小田を含めて少なくない。ただし、Road to UFCの出場権を得るために必要な基準は明確に設けられていない。よって選手がアピール手段として狙う実績創りも様々だ。国内主要団体のベルト奪取、RIZINと単発契約、LFA、ZFN、Eternal MMAという各国&各大陸のフィーダーショー出場と、選択肢は世界中に広がっている。

そのなかで小田は中国のJCKで戦う。なぜJCKなのか。その意図と、そのための強化策を話してもらった。


元UFC世界ライトヘビー級チャンピオンのフォレスト・グリフィンが見に来るらしいんですよ

――昨年末にGrachanで暫定王者となり、今年5月に御代川選手に勝って王座を統一。そして今回中国で試合をすることになりました。それ以前からRoad to UFCに出たいという話をしていましたが、今年のROAD TO UFCに申し込んでいたのでしょうか。

「そうですね。ただGladiatorの方から選手(吉田開威)が選ばれて……という感じになって」

――その人選に「なぜだ?」という気持ちには?

「いや、それはなかったですね。今はまだタイミングじゃなかったんだなっていう感じで捉えていて。今年1年頑張って勝ったら見えてくるかなと」

――小田選手も27歳ですが、そこはまだ来年、再来年があるという風に思えたのですか。

「伊藤空也選手も29歳とかで選ばれていて『まだチャンスはあるよ』ということは、言われていたので。それに焦ってもなんか良いことないなと思うんで、タイミングじゃなかったんだなと思っています」

――そういう中で、来年のROAD TO UFCを狙うのが順当な流れだと思いますが、来年に向けて、ROAD TO UFCに選ばれるためにどのようなキャリアを積もうと周囲と話していましたか。

「まずはGrachanフライ級の王座統一戦で勝つ。そうじゃないと自分の気も済まないなっていうのはあって。そこで勝ってからは8月31日に防衛戦という話と、9月に豪州のEternal MMAという話がありました。Grachanは対戦相手がなかなかいなくて、Eternlもうやむやになって。そこからJCKの話が出ました。中国人選手を倒すとUFCからの評価が高くなるそうで。ただ僕自身は持ってきてもらった話を受けているだけですね」

――なるほど。小田選手が中国人に勝っておけば、次は中国人が小田選手にリベンジするためのマッチメイクの流れが出来るかもしれない。それがROAD TO UFCに通じると。そこまで考えてくれる人が周囲にいることは強いですね。ただ漠然と「ROAD TO UFCに出たい」というのではなく。

「今回、元UFC世界ライトヘビー級チャンピオンのフォレスト・グリフィンが見に来るらしいんですよ」

――おお。現UFC PIのアスリート育成部門の副社長ですね。

「そのグリフィンが日本人が1人で中国に行って、中国人選手と戦うというので期待してくれているとも聞いています」

――それは期待が高まります。例えば山内渉選手のようにROAD TO UFCに出るためにRIZINという場所を選んで外国人選手と戦う選択をする選手もいます。

「山内選手がそこまで考えてRIZINに出場するというのは知らなかったです。ROAD TO UFCで負けちゃったから、RIZINに行ったのかなっていう感じに思っていました。あんまり人のことを考えたことがなくて……自分のことで精一杯なんですけど。

やっぱこうROAD TO UFCを目指すのであれば、日本人ではなくて海外の選手とやる。海外の選手はやっぱりリズムとかが違うので。あとはメンタルの持ち方とか。それこそ中国人選手って、日本人相手に凄くメンタルが強くなるじゃないですか。そういうことも経験しないといけないと僕は感じています。

それもあって、1カ月ほど前に1週間弱ですけど、ソウルのKTTに出稽古に行ってきました。彼らのメンタルや体の強さを感じたくて。海外の選手と試合や練習をすることはROAD TO UFCに向けて必須かと思います」

――実際、KTT勢の当たりはいかがでしたか。

「フライ級の選手はそれほどいなかったのですが、そこまでフィジカル負けはしなかったです。ただ何が強いかっていうと、やっぱスタミナが凄かったです。ある程度の技術を持っている日本人もいると思うんですけど、あのスタミナで押し切られて負けちゃうのかなと」

――自分もKTTの取材をした時、プロ練習で十分にハードなスパーリングを繰り返したあとの補強が壮絶さに驚かされました。

「僕も補強やりました。真ん中に立たされて(笑)。きつかったですね。MMAスパーリングをやった後に、その後グラップリングをやったのかな。レスリングとグラップリングをやって、最後に補強で。もう延々にやっていて、数を数えろって言われました。今回は海外のレベルがどういうものか知って欲しくて、田村(ヒビキ。カルペディエム福岡代表)さんも一緒に行ってもらって。田村さんも補強をやりきっていました」

――それは素晴らしいですね。今の日本のMMAでは見られないスパルタ的な練習ですが、何か得られるモノはありましたか。

「確かに永遠にやるみたいなことは、今時の練習ではなかったです。今は体の使い方や技術とか、そういうことが分かる人は増えてきましたけど、昔の五味隆典選手とかがやっていたようなスパルタ的な根性系のトレーニングも必要だなと思いました」

――でもあの練習と補強をやりきれるなら、スタミナは十分ですね。

「どうなんすかね。なんか僕、さぼり癖じゃないですけど、ちょっとこう力を抜くところを考えながらやるというか。壁とかでも力を抜くところは抜いて…という風にやるので。ずっと全力でやっていたら多分、5分1ラウンドも持たないと思います。それもまあ技術のうちではあると思うんですけど、攻める時はもうガーって攻めて倒して…というのはやっていました」

――いい刺激になりましたか。

「そうですね。彼らに負けられないというのもあったし、どれだけ強い人に対しても、例えば僕は平良(達郎)君とかとも練習をするのですが、負けて構わないという感情にはならないんで。やられると絶対悔しいという感情になるから。それは自分の良いところだなというのは思います。どれだけ強い相手でも、くそってなれるのが」

――平良選手とも沖縄で練習したことがあるのですか。

「何回かありますね。1週間前も沖縄に行ったんですけど、ちょうど平良君はデンバーに行っていて。御代川戦の前も沖縄に生きました。試合前は2週間くらい松根さんにお世話になっていますね。

出稽古は僕の中では結構大切で。試合と同じような感覚も味わえるし、負けたくないというっていう競争心も出るんで。あとは集中して練習ができる環境もあります。特にめちゃくちゃ強い人が練習相手にいる必要もなくて、ある程度同等か同等以上の人がいれば、僕的には凄く良い練習になります」

UFC PIに凄く似ている環境を経験することで、そのイメージがつきやすい

――今回の試合は中国でもルーリャンという余り馴染みのない都市での開催ですが、UFC PIに負けないレベルの設備があるということは前から聞いています。そういった場所で戦うのも、ROAD TO UFCを見据えてのものになるのですか。

このステージはAPEXを上回るスケール。初出場のファイターは入場、コール、試合開始までリハがあるという(C)KEI MAEDA

「僕は結構、イメージしてから試合に臨むので。

UFC PIに凄く似ている環境を経験することで、そのイメージがつきやすいのかなと思います。ケージに立って相手と対峙して…というのもイメージしやすくなるので、ここで勝ってその経験を得られたらアドバンテージになるのかなと思います」

――同じ海外でもタイのルンピニースタジアム(ONE Friday Fights)で戦うのとは別ものだと捉えていますか。

「そうですね。ただONE FFと今回の一番の違いは体重ですね。ONEの方は水抜きなしの61.2キロで、今回は57.5キロ。そこが一番不安なところかなと思います。JCKの宿泊施設にはバスタブがないらしくて。サウナもあるはあるのですが、すごく小さいところを皆が使うと聞いています。それはちょっと怖いです」

――その計量を終えて戦うアイディン・トフタルベクは7勝7敗という戦績だけ見ると絶対に勝たなければいけない試合です。ただ、過去に彼のように徹底的にレスリングを仕掛ける選手はいなかったです。打ち合うと負けることもありますが、相手が中国らしく打撃が強かったわけで。

「厳しい試合になると思います。正直、力もどれだけあるかもわからない。体力も結構あるだろうし、打たれ強さもあると思うので。しんどい戦いになりそうやなと思っています」

とにかく打たれ強いですよね。で、テイクダウンを狙うタイミングも凄く良い印象です。寝技がどれだけできるのかは分からないですが、テイクダウンを取られても下から巻き返して、上を取り返す。いつも通りの自分の展開に持っていけるか。そこで勝てるか勝てないかが勝負の鍵かなと思います」

やっぱり勝ち方も大切やなというのは感じていますね。リスクが上がろうが、フィニッシュを狙うということは

――小田選手が考える自分の展開とはどういう試合になりますか。

「僕はいつも打撃で様子を見ながら、四つで組む。『倒せそうやな』と思ったら倒しに行く。倒せないならもう無理せずに、そっから首相撲とか打撃を与えて、次は下にダブルレッグやシングルレッグに入ったり…というのをいつもやっていて。これがダメならこれにしようというのは、一応いつも創ってありますね。

削りながらテイクダウンして、ドミネイトしていく。ONEの時と一緒で、パスしたり、肩固めを狙ったり、マウントに行ったり…というのが自分の展開ですね」

――フォレスト・グリフィンが会場に来てUFCに「カイト・オダは良いよ」と言ってもらうには、今のLFAやDWCSで見られるフィニッシュ絶対のようなファイトになるかもしれないです。

「そこはやっぱり勝ち方も大切やなというのは感じていますね。リスクが上がろうが、フィニッシュを狙うということは考えています。本当はテイクダウンに行った方が勝てるというのはありますけど、打撃でいくことも考えています。殴り合いじゃないけど、そういうところもちゃんとアピールしていかないと、プロとして取ってもらえないのかなと。強いだけではなくて、スター性も必要になってくるのかなって」

――グラウンドで立たれるリスクがあっても、強い打撃をしっかりと入れていくことも考えていますか。コツコツで押さえながら殴るだけではなく。

「そうじゃないと、アピールもできないですし。変な話、中国のアウェイ判定も怖いので、明らかに自分が有利だと見せるようにやっていかないとなというのはありますね」

――ROAD TO UFCのことを考えると、ROAD TO UFCはヨーロッパや香港からレフェリーやジャッジ陣が来るので、アウェイぶりでいったら今回の方が凄いかもしれないですね。

「いや、そうですね。多分応援すらしてもらえないと思います」(※JCKに参戦しているモンゴル勢のマネージャーに確認をとると、ホームタウンデシジョンはほぼなく。かなりフェアとのこと)

――それでは最後に日本から応援してくれるファンの皆さんにメッセージをいただけますか。

「海外への挑戦は簡単にできることでもないし、貴重な体験なんで、ここをしっかり勝って、もしかしたら12月にGrachanの防衛戦があるかもしんないですけど、そこも勝って、しっかりRoad to UFC、自分の行きたいところにつなげていきます。頑張ってきます」


■視聴方法(予定)
10月11日(土)
午後7時55分~ JCKオフィシャルYouTubeチャンネル

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