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【Grachan74】御代川敏志とフライ級統一戦、小田魁斗「相手が何をするか、ではなく自分が何をしたいか」

【写真】爽やかイケメン(C)SHOJIRO KAMEIKE

31日(土)、東京都の大田区産業プラザPIOで開催されるGrachan74で、フライ級暫定王者の小田魁斗が正規王者・御代川敏志と王座統一戦を行う。
Text by Shojiro Kameike

2022年にグラチャンでプロデビューした小田は、昨年はONE FFでの2試合を経て、マッチング期間終了後にフライ級暫定王座決定戦に出場した。道端正司をパウンドアウトし、ベルトを巻いた直後に正規王者の御代川が乱入――王座統一戦をアピールするという展開に。小田については今年のRoad to UFC出場を交渉しているという話もあったが、エントリーはなく今回ベルトの統一戦に臨む。そんな小田に自身と御代川のファイトスタイル、さらに「THE BLACKBELT JAPAN沖縄練習問題」についても訊いた。


平良達郎君と沖縄で一緒に練習させてもらうこともあって、彼のスタイルを吸収させてもらっています

――昨年12月になりますが、ベルト奪取おめでとうございます。ここまで5カ月が経ち、何か気持ちの変化はありましたか。

「ベルトを巻くことができたのは嬉しいですが、ちょっとスッキリしない部分もあって……」

――スッキリしない部分とは?

「僕が巻いたのは暫定のベルトで、正規王座ではないですよね。実はこの期間、いろんな試合のお話を頂いていました。でも正規王者にならずに他の試合を受けてもスッキリしない自分がいて。そこはしっかり白黒つけて次のステージに進みたいと考えています」

――他の試合というのは、グラチャン以外の試合ということですか。

「まずRoad to UFCには応募していました。結局出ることはできなかったですけど――やっぱり目標はUFCです。ただ、目標は高く持っていますけど、結局は目の前の試合に勝たないと次はないわけで。今は目の前の試合だけを見ています」

――改めて前回、ベルトを獲得した試合の感想をお願いします。

「いつも練習していることが出ました。でも自分のなかでは、もっと打撃をやりたいという気持ちはあるんですよ。成長していくにつれて、もっと打撃で押していきたい。殴り合えるような打撃を見せると、もっとお客さんも盛り上がるかなって考えています。

格闘技をやっていない人からすれば、どうしても組み技って分かりづらいところがあるじゃないですか。だから打撃で盛り上げるような試合に憧れている部分もあって。だけど試合になったら勝つために、保身的にはなっちゃいますよね(苦笑)」

――アハハハ。自分にないものに憧れる気持ちも、勝つために最善の策をつくすことも理解はできます。とはいえ前回の試合より、ONEで戦った2試合のほうが打撃の割合も高かったように思います。

「あぁ~、そうですね」

――対して前回の試合は、しっかりと倒して削って仕留める。ONEの時よりも丁寧に戦っているという印象を受けました。それまでの試合が雑だったという意味ではなく。

「メチャクチャ丁寧になりました(笑)。今考えると、初めてのタイトルマッチという空気も感じたんだと思います。さっき『練習していることが出た』と言いましたけど、練習の時はもっと打撃を出すことができていて。だけど打撃は相手も一発があるし、試合では保身的になってしまいましたね。自分の中でも『もっといろんなものを見せられたらいいのになぁ』という葛藤はあります」

――それは「組んでバックを奪う戦いをすれば絶対に勝てる」という自信の表れでもあったわけですね。

「はい、そうです」

――小田選手の場合、あの戦い方のベースは柔術になるのですか。あるいはレスリングなのでしょうか。

「それ、よく言われるんですよ。『小田君ってレスラーなの?』って。アハハハ。自分がカルペディエム福岡でMMAを始めたのが4年前ぐらいで。それまで格闘技のバックボーンといえるものはなく、このジムで柔術と並行してMMAの練習をしてきました。その中で自分に合った組みを模索してきて、今のようなスタイルになっています。今はレスリングか柔術かというより、自分の好きなMMAファイターの真似をしているような感じですね」

――好きなMMAファイターとは誰でしょうか。

「もともと堀口恭司選手が好きで。最近は平良達郎君と沖縄で一緒に練習させてもらうこともあって、彼のスタイルを吸収させてもらっています。その場で本人に訊くこともできますし。あと投げなどは鶴屋怜君の試合を視たり。バックキープはダニエル・コーミエやカビブ・ヌルマゴメドフを参考にしたりとか。やっぱりUFCで戦っている選手を参考にすることが多いですね」

――なるほど。今、名前を挙げた日本人選手3人のうち、2人がTHE BLACKBELT JAPANの選手です。

「そうなんですよ(笑)」

人間は思いがけないことが起きると、弱くなってしまう。だから、うまくいかなかった時のことも考えながら練習している

――次の対戦相手であり、正規王者の御代川敏志選手はそのTHE BLACKBELT JAPAN所属。以前に千葉へ出稽古に行った際に一度接点があったそうですね。

「はい。少しだけ言葉を交わした程度ではありますけど、その時に直感というか、『いつか対戦するだろうな』という感覚を持ちました。そうしたら御代川選手もチャンピオンになり、今回対戦することになって」

――現在でもTHE BLACKBELT JAPAN沖縄へ出稽古のために行っていると聞きました。それだけTHE BLACKBELT JAPANのファイターが好きなのですか。

「それもありますけど、僕が沖縄に行く理由の一つが遠征費の安さなんですよね。やっぱり東京のホテルと比べると、東京の1泊分で沖縄では3泊できたりとか。沖縄という環境も自分に合っていると思っていて、ありがたいことに沖縄で練習させてもらっています」

――そうした練習環境について、御代川選手はグラチャンの公式インタビューで「情報は全て筒抜けだからな。練習内容は把握しているから覚悟しておけよ」と言っています。

「アハハハ。僕が練習に行かせてもらっていることは、松根良太さんが鶴屋浩さんともお話してくださったみたいで。本当にありがたいです。と、たとえ練習内容を全て把握しているとしても、実際に試合をしてみると全く違うと思いますよ」

――小田選手としては御代川選手と対戦する可能性が高くなってきた頃から、沖縄へ練習に行くことに躊躇はしなかったですか。

「いや、確かに御代川選手が言っていることも分かるんですよ。自分も『確かにそうやなぁ』とは思います。でも以前から松根さんに『練習に来る?』と声を掛けていただいていて。僕にとってはずっとお世話になっているジムで、自分の強さの要因にもなっていますからね」

――さすがに御代川選手が沖縄で練習することがあったら、その時は小田選手も行かないでしょうし。

「それは確かに、絶対に行くことはないです」

――そんななかで、自身がベルトを巻いた後に御代川選手が乱入してきた時は驚いたのではないですか。

「ビックリしましたね(苦笑)。いきなり椅子が飛んでくるし、『やっぱり何をするか分からない人だなぁ』と思って。ファイトスタイルも、今まで対戦したことがないタイプです。正統派じゃないところが強みといいますか。

何て言うんでしょう……。試合で暴れる、という言い方が合っているかどうか分からないんですけど。自分がそのスタイルに巻き込まれるのではなく、暴れるなら暴れるで、自分の試合に巻き込みたいですね。自分主体で殴り合う、とか」

――2人のファイトスタイルは対照的です。小田選手が高出力を維持しながら戦うとすれば、御代川選手の場合は突然、予想できないタイミングで爆発する。

「その爆発するタイミングが読みづらいんですよ。ベルトを獲った試合も、相手の松場貴志選手がスタミナ切れになるのが速かったと感じました。御代川選手も体力があるけど、松場選手が御代川選手のペースに巻き込まれたからなのかな、とも考えます」

――小田選手との試合でも、少しでも隙を見せたらすぐ噛みついてくるでしょう。

「そう思います。だから相手主体ではなく、自分主体で戦う必要があると思っています。相手が何をするか、ではなく自分が何をしたいか。いつも僕はそう考えるようにしていますね。そこから『うまくいかなかったら、こうする』という考えを鎖のように繋いでいく。

人間って思いがけないことが起きると、弱くなってしまうものだと思うんです。だから、うまくいかなかった時のことも考えながら練習しています。試合で組みが全く通用しなければ、完全にスタンドだけで戦いますし。そのために打撃の強化もしていて。

結果、全部ダメなら仕方ないですから(笑)。そこまで腹を括って戦っています。その気持ちが自分の一番の強さだと思っています」

――グラチャンは8月31日に福岡大会を予定しています。3カ月後ですが、地元開催の大会にも出場したいですか。

「個人的には出たいと思っています。でも、それもタイミングで――何より今は、そこまで先のことは考えていなくて。御代川選手はMMAにおいて狂気的なものを持っているので、試合もどうなるか分かりません。

まず目の前の試合に勝つ。僕も御代川選手に対してリスペクトを持って戦うし、負ける気もしないです。次は盛り上がる試合をするので、楽しみにしてください!」

■視聴方法(予定)
5月31日(土)午後13時~
GRACHAN放送局、GRACHAN公式YouTubeメンバーシップ

■Grachan74 対戦カード

<GRACHANライト級選手権試合/5分3R>
[王者] 林RICE陽太(日本)
[挑戦者] 芳賀ビラル海(日本)

<GRACHANフライ級王座統一戦/5分3R>
[正規王者] 御代川敏志(日本)
[暫定王者] 小田魁斗(日本)

<バンタム級/5分2R+ExR>
田中智也(日本)
徳弘拓馬((日本)

<無差別級/5分2R+ExR>
大場慎之助(日本)
上野勇貴(日本)

<フライ級/5分2R+ExR>
三澤陽平(日本)
河合亮(日本)

<フライ級/5分2R+ExR>
金森琢也(日本)
増田比呂斗(日本)

<85キロ契約/5分2R+ExR>
佐々木克義(日本)
古谷宗太郎(日本)

<無差別級/5分2R+ExR>
田馬場貴裕(日本)
井上悠司(日本)

<バンタム級/5分2R+ExR>
有田一貴(日本)
フェルナンド(ブラジル)

<フェザー級/5分2R+ExR>
長光雄平(日本)
佐藤藏ノ介(日本)

<フライ級/5分2R+ExR>
二之宮徳昭(日本)
佐藤匡平(日本)

<ストロー級/5分2R+ExR>
三笠貴大(日本)
粂大樹(日本)

<ストロー級/5分2R+ExR>
丸山大輝(日本)
尾崎蓮(日本)

<バンタム級/5分2R+ExR>
田中仁(日本)
野澤海斗(日本)

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