【HEAT57】クレメンティ・エグとISKA世界王座決定戦。MISAKI「首相撲で来ても、打ち合いで倒します」
【写真】人は成長し続けることができる。まだまだ、これからのMISAKI(C)SHOJIRO KAMEIKE
20日(土)に愛知県刈谷市の刈谷市産業振興センターあいおいホールで開催されるHEAT57で、MISAKIがスイスのクレメンティ・エグとISKAオリエンタルルール世界女子アトム級王座を争う。
Text by Shojiro Kameike
これまでJ-GIRLSミニフライ級、シュートボクシング日本女子アトム級のベルトを巻いてきたMISAKIにとって、今回は初の世界を冠したベルトを巻くチャンスとなった。王座を争う相手はWMC欧州王者のクレメンティ・エグ。ムエタイルールで、長いリーチとコンパスを生かして戦ってきた相手との対戦を控え、MISAKIに試合への想いを訊いた。
――2016年のプロデビューから10年近いキャリアを経て、世界王座に挑むこととなりました。
「18歳で格闘技を始めた時、周りはみんな先輩でした。私としては『先輩の背中に着いていきます!』という状態だったのが、気づけば今はジムにも高校生が多くなっています。対戦相手も十代が増え、いまや私も『ババァ』とか言われるぐらいで(笑)。でも10年経ったからこそ、今は落ち着いた試合運びができるようになったと思いますね」
――MISAKI選手のファイトスタイルは、どのように変化してきたのでしょうか。
「デビューから最近まで、猪突猛進で戦っていたんですよ。それこそスタミナと手数、そして気持ちがあれば勝てると思っていました。でもキャリアを積み、結果が出て来ると――それだけで勝てる相手ではなくなってきます。そこでゲームメイクというか、しっかりと作戦を立てるようになって」
――作戦、というと……。
「たとえば私は、ワンツーが強い相手に対して、自分のワンツーがもっと強ければ勝てると考えていました。でもそんな次元を超えてきて。ジャンケンであれば相手がグーを出したら、私はもっと大きなグーで勝つ。そんなことを考えていたけど、やっぱりグーにはパーでは勝てないのが格闘技であって。そこで勝つために考えて練習するようになったんです」
――それだけ変わるきっかけは何だったのですか。
「ぱんちゃん璃奈選手に負けた時ですね(2020年8月、REBELSで判定負け)。正直、あの時は私のほうが私のほうがパワーもスタミナもあったと思います。でも3秒だけ首相撲が許されているルールで、私は必ず猪突猛進で入ってくる。その私を掴んでヒザ蹴り、そして離すということ3R繰り返されました。
メチャクチャつまらない試合だったと思いますよ。でも、ぱんちゃん選手はセコンドの指示を聞いて、パンチを振り回してくる私に対して徹底的に組んできた。勝つために徹底してやり切ることが大事なんだと気づかされました」
――結果、ぱんちゃん戦以降の6連勝に至るわけですね。
「そうですね。その次の試合(2021年2月、SBで祥子JSKに判定勝ち)で、未完成ではありましたけどスタイルチェンジしました。勝つために、ようやく格闘技というものをやるようになったというか(苦笑)」
――MMAでいえばキャリアの序盤は柔道やレスリングの貯金で勝てていても、ベテランと対戦した時にMMAとしての差を見せつけられる。それは身体能力でも同じことが言えるでしょう。MISAKI選手のようにパワーと体力があり、身体能力が高ければ、それだけで勝てる時期はある。しかし壁にぶつかった時にどうするかが、その後のキャリアを分けます。
「それに気づいたのもあるし、今はいろんな情報が飛び交っているじゃないですか。年齢を重ねていくにつれ、練習も量から質に変えていかないといけない。相手によってファイトスタイルを変えたり、前の試合とは違う練習をしたり――そうすると『格闘技って、いろんなことができて楽しいじゃん』と思うようになって。
20戦ほど戦った頃、ようやくその域に辿り着きました。ファイトスタイルを変えてすぐは、まるで格闘技を始めた頃のように楽しかったです。今までやったことのない攻撃を出したりとか」
――昨年12月の撫子戦と今年6月にONE FFでラン・ロンシューに勝利した試合を比較すると、ロンシュー戦では攻撃の威力も増しているように感じました。最初のローからバチーンという音が鳴り響いて。
「変わっていますかね? それはリングサイドのマイクの性能が良かったんじゃないですか(笑)。撫子選手は細くてスピードがあり、打ち合わせてもらえなかった感があります。
でもロンシュー戦は、私と相手の身長が同じぐらいで、距離感も似ていたんですよ。ロンシュー選手はパンチを打ちたかったはずです。でも相手が取っていた距離が、私の右ストレートが当たる距離で。そこが上手くハマッたのかなと思います。
あとタイで試合をしたのも、ONE FFの時が初めてで。しかもルンピニースタジアムで……4月に小桐冬華のセコンドで行った時に、『この会場のリングに立ちたい』と思いました。
私の試合でも会場の盛り上がりが凄かったんですよ。私の応援に来ているはずないのに、私のジャブがかするだけで会場が沸いたり。かと思ったら、向こうの攻撃が当たっても沸くし、それが楽しくて。試合しながら私の気持ちが上がっていた部分も良かったかもしれませんね」
――次はISKAオリエンタルルールで戦うこととなりました。
「ISKAオリエンタルルールでは、首相撲もヒザ蹴りを出している間は無制限で、膠着になったらブレイクですね。ずっとシュートボクシングをやってきたので、首相撲についても『首相撲? ヤバい』とかは思ったりしません。相手もずっとムエタイの試合に出ている選手ですけど、ちゃんと対策はしてきました。
私自身が首相撲で相手をどうにかしてやろうというよりは、普通に打ち合いで倒すという気持ちの中で、『別に首相撲にきても良いよ』という準備はしています」
――試合映像を視るかぎりでは、そこまで身長は高くないものの、リーチとコンパスを生かして戦うタイプかと思います。
「その手足の長さを生かして組んで来る可能性は大いにあると思っています。でも私は、やっぱりパンチでKOする試合を見せたいですね。今回はメインイベントで、プロの試合の前にキッズの試合に出る子たちも『メインに繋げます!』と言ってくれています。しっかり繋いでもらって、カッコイイところを見せたいです」
■視聴方法(予定)
9月20日(土)
午後4時30分~ ツイキャスプレミア
■対戦カード
<ISKAオリエンタルルール世界女子アトム級王座決定戦/3分5R>
MISAKI(日本)
クレメンティ・エグ(スイス)
<エキシビションマッチ>
皇治(日本)
所英男(日本)
<ミドル級/5分3R>
三上ヘンリー大智(日本)
イ・イサク(韓国)
<キック スーパーヘビー級/3分3R>
楠ジャイロ(ブラジル)
笹田勝俊(日本)
<フェザー級/5分3R>
福山佳祐(日本)
アリストテレス・オキヤマ(ブラジル)
<フライ級/5分3R>
高山晃輝(日本)
山田悠太(日本)
<キック 51.5キロ契約/3分3R>
正木翔夢(日本)
新美豪毅(日本)
<キック 女子48キロ契約/3分3R>
岩永唯伽(日本)
小桐冬華(日本)
<フライ級/5分3R>
永井宏人(日本)
堺龍平(日本)
<キック 65キロ契約/2分3R>
小黒剣政(日本)
青山龍成(日本)
<キック 57キロ契約/2分3R>
後藤力(日本)
山際仁(日本)