この星の格闘技を追いかける

【RIZIN51】桜庭大世戦の敗北から9カ月、芳賀ビラル戦へ。矢地祐介「桜庭戦の試合後のあれが“僕”ですね」

【写真】現実を受け入れるのか、目を反らすのか。矢地は前者でたくましく生きている(C)TAKUMI NAKAMURA

28日(日)に名古屋市北区のIGアリーナで開催されるRIZIN51にて、矢地祐介芳賀ビラル海と対戦する。
text by Takumi Nakamura

昨年大晦日に桜庭大世のMMAデビュー戦の相手を務め、蹴り足をキャッチした状態で桜庭の左ストレートを受けて衝撃のKO負けを喫した矢地。

結果的にあの敗戦から約9カ月試合から遠ざかることになったが「それはあの負けが引き起こしたこと。僕はずっとRIZINで試合をしてきましたけど、いつ呼ばれなくなってもおかしくない」と一つの勝敗の重みを感じていたという。

それと同時にいつ終わってもおかしくない格闘技人生を自由に楽しんで全うしたいという想いも芽生えた。今年5月に35歳を迎え、プロキャリアも40戦を超えた今だからこそ“お祭り男”復活を目指す。


試合後のインタビューで『こんな日もある』と言ったら、色んなところで『なんだ?あれは?』と言われました

――昨年大晦日の桜庭大世戦以来、約9カ月ぶりの試合が近づいてきました。試合間隔が空いたのは何か理由があったのですか。

「需要がなかったからだと思います(苦笑)」

――そんなことはないでしょう!実際にこうして試合も決まったわけですし。

「でも年末の負けは今後のストーリーを作る上で本当に大きかったと思いますよ。初参戦の相手にああいう負け方をして、勝った方(桜庭)も次の試合で普通に負けて…これじゃ何も展開は生まれないだろうなと思いました」

――同じ一つの敗戦でも、MMAデビュー戦の桜庭選手に負けた点でも衝撃的でした。

「しかもライト級はある程度対戦カードが一巡しているなかで、ああいう負けがついてしまうと組み合わせのしようがないですよね(苦笑)。あそこで勝っていたらやりようもあったと思うんですけど、客観的に見ても今の自分に面白いカードの組みようがないよなと思っていました」

――もちろん矢地選手が誰よりもショックだったと思うのですが、あの負けはどう自分の中で受け入れたのですか。

「試合後のインタビューで『こんな日もある』と言ったら、色んなところで『なんだ?あれは?』と言われましたけど(苦笑)、結果が出たことに関してはどうしようもないですからね。当然1mmも油断もしてなかったし、僕と試合するオファーを受けた時点であっちは勝つ自信もあったわけじゃないですか。それでいて何が何だか分からない相手だったからこそ、警戒して自分を作り上げました。それであの負けだったから……どうしようもなかったし、運が悪いしかないというか。とにかく落ち込んだし、しょうがないと思うしかなかったです」

――僕は矢地選手の「こんな日もある」発言は、それ以上もそれ以下もないというか、他に言葉が出てこないのだろうなと思っていました。

「自分の世界観ではあれが最良の選択だと思って、ああいう発言をして落とし込んだ部分があります。ただ青木(真也)さんからは『あそこはパフォーマンスでもいいから泣き崩れて悔しがった方が、見ている人たちも感情移入するだろ』と言われて、そういう意味では反省点もあったのかなと思います。良くも悪くもあっけらかんとしすぎていたんでしょうね(苦笑)」

――なるほど。個人的には素の感情じゃないと周りには伝わらないと思っていますし、そういう素の矢地選手を見たい人もいると思いますよ。

「自分もRIZINに出始めた頃はキャラを作った方がいいかなと思ったんですけど、それだといずれ絶対にしんどくなるし、そのままの自分でいこうと思ったんです。だから桜庭戦の試合後のあれが“僕”ですね」

――練習自体はどのくらいから再開されたのですか。

「フラッシュダウン気味とはいえダメージはあったし、自分はそこに敏感な方なので、しっかり休んでコンディションがよくなってきた頃に通常運転で練習を再開しました」

――Instagramでは柔術の投稿をよく目にしていましたが、柔術の練習が増えているのですか。

「自分がいつ引退するか決めているわけではないんですけど、僕もキャリア終盤になってきて、柔術、ちゃんとした寝技のテクニックを身につけたいと思うようになったんです。将来的にジムをやったり、指導者になったりした時に、ちゃんとロジカルに技術を説明できるようにしたいなと。格闘技を始めた時から柔術の練習はやっていたんですけど、改めてちゃんと柔術を練習したいと思いました」

――柔術の練習をすることで新たな発見もありましたか。

「めちゃめちゃありますね。すごく楽しいです。今まで自分はフィジカルや勢いでやれていたところがあったんですけど、細かいパスガード、サブミッションの仕掛けや逃げ方、リバーサル……なにがどうなって技がかかるというところを、公式を覚える感じでインプットするのが楽しいですね。柔術の技は無限にあるし、色んなことを教えてもらっています。柔術の技術がMMAに活きないことはないと思うし、寝技の理屈の部分はMMAにも活きると思います」

――柔術をやることでバラバラになっていたものがつながっていくイメージですか。

「そうですね。MMAと柔術は別物だと思いますが、確実に練習していてリンクするところはあるし、間接的に柔術の練習がMMAにも活きていると感じますね」

――さて今回はGRACHANライト級王者の芳賀ビラル海選手と対戦することになりました。ずばり対戦相手の候補として考えたことがなかった相手ですよね。

「RIZINサイドと次の試合のことを打ち合わせしていて、自分の中では考えていなかった相手ですね。対戦相手としてはどの場面でも戦える選手だと思いますが、試合映像の確認や相手のことはコーチ陣に任せていて、自分自身はそこまで見ていないです」

――最近は自分で対戦相手の映像はチェックしなくなったのですか。

「ここ数戦はそんな感じなんですよ。自分で相手の試合映像を見るのはあまり良くないというか、色んなことを考えすぎちゃうんですよね。なので僕自身は自分が強くなることを考えて練習に取り組んでいます」

こうやって試合することがずっと続くと思いがちですけど、決して当たり前じゃない

――前回の桜庭戦に続いてRIZIN初参戦の相手を迎え撃つことになりました。そこについてはいかがでしょうか。

「今は改めて一敗の重みを感じています。大晦日に負けて9カ月くらい試合ができなくて、それはあの負けが引き起こしたことだと思うんですよ。僕はずっとRIZINで試合をしてきましたけど、いつ呼ばれなくなってもおかしくないですからね」

――RIZIN初参戦の相手に2連敗は許されないですよね。

「もちろん勝ち負けが大事ですけど、デビューした頃のように楽しんで試合をしたいですね。もっと自分の発想を大事にして、好きに戦って伸び伸びやりたいなと。こうやって試合することがずっと続くと思いがちですけど、決して当たり前じゃないと思うんですよ」

――試合に勝ったとしても大きな怪我をしてしまう可能性もありますし、特に格闘技はそのリスクも高いものだと思います。

「だからこそ一試合一試合悔いがないようにやりたいし、一戦一戦をエンジョイしながら戦いたいです」

――もちろん結果に対するプレッシャーはあると思いますが、矢地選手らしく伸び伸びと戦う姿を楽しみにしています。

「RIZINに“お祭り男”というニックネームをつけてもらって、その言葉で自分の首を絞めて渋い試合をしたこともあったんですけど、もう一度“お祭り男”の名前を取り戻すべく、思い切りやりたいです」


■視聴方法(予定)
9月28日(日)
午前11時30分~ ABEMA、U-NEXT、RIZIN LIVE、RIZIN100CLUB、スカパー!

PR
PR

関連記事

Movie