この星の格闘技を追いかける

【DEEP Tokyo Impact2025#04】クレイジー狂と対戦、海飛「僕はバカで不器用なんでやるしかないです」

【写真】仕切り直しも、何度目の正直か。七転び八起きまでいかないキャリアを構築してほしい(C)TAKUMI NAKAMURA

9月7日(日)に東京都港区のニューピアホールで開催されるDEEP TOKYO IMPACT2025#04で、海飛が中国のクレイジー狂と対戦する。
text by Takumi Nakamura

5月のDEEPフェザー級GP準決勝で水野新太と大激闘の末に判定負けを喫した海飛。水野戦の敗北をきっかけにファイトスタイルを見つめ直し、自由で殺気立った自分を思い出したという。


水野君のパンチって効かないんですよ。逆にそれでもらっても大丈夫だと思っていると細かいパンチを被弾してしまう

――フェザー級GP準決勝での水野新太戦以来の試合が近づいてきました。ちょうどGP決勝=水野新太×高橋遼伍の翌日の取材(※取材は18日に行われた)になりましたが、水野選手との準決勝を振り返ってもらえますか。

「昨日の試合を踏まえても絶対に自分が勝たなきゃいけなかった試合だったと思います。決勝を見ていても実力的に200パーセントくらい自分が上だと思ったので……改めてめちゃくちゃ悔しいです」

――試合としては前半は水野選手、後半は海飛選手が盛り返す展開だったと思います。

「僕が先手を取りたいと思ってワンツーで行こうとしたら、上手く外されてテイクダウンを合わされたんですよ。それで自分のリズムに持っていけず、そこから崩されちゃいましたね。水野君自体そこがすごく上手いんですけど、1Rの最初に出鼻をくじかれました」

――海飛選手からすると最初の攻防から嫌なリズムで試合に入ってしまったのですか。

「しかも自分のメンタル的にも、試合の一週間前にパンクラスで天弥がKOされたところを見ちゃって、自分のなかで絶対やらなきゃって気持ちが強くなったんですよ。でも不安は不安であるじゃないですか。そこを吹っ切らなきゃいけないと思って気持ちが前に出すぎたところを上手くすかされましたね。なんか足をひっかけられて躓かされたような感じで……そこからペースを持っていかれました」

――海飛選手としては自分のペースに持ち直すまでに時間がかかってしまったのでしょうか。

「試合中に色々と考えすぎちゃいました。1Rにケージ際で座っていた場面でも、水野君はここから動けないんだろうな、展開を作っていけないだろうなと思ったんです。最初にコンタクトしてフィジカル的にも技術的にも負けてないと思ったし。そこで僕は僕で動けなかったんですよね…。今は動けなかった理由も自分で分かっているんですけど、あの時は動けなかったです(苦笑)。これはもう自分の問題です。2Rの後半ぐらいからやっとテイクダウンも切れるようになって、自分のペースになってきたんですけど遅かったです」

――イメージとしては2R後半からの動きを1Rからやりたかったということですか。

「そうですね。もし序盤を自分のペースで進められたら、途中で相手にペースを持っていかれても、そこから挽回することって出来ると思うんですよ。余裕を持って対処できるというか。でも最初にいきなりテイクダウンに入られて、テイクダウンに来ることは予想もしていたんですけど『思ったより早く来るんだ!』と思っちゃって、それで出鼻をくじかれちゃいました」

――まさにそれが水野選手の上手さ、強さというわけですね。

「昨日もそうでしたけど、水野君は一切相手に付き合わないじゃないですか。例えば水野君のパンチって効かないんですよ。逆にそれでもらっても大丈夫だと思っていると細かいパンチを被弾してしまう。水野君は背が高く、腕も長いからフックを打つ時に遠心力があるんです。それで水野君のパンチをブロックすると、ブロックごと押される感じでバランスを崩すんです。あとはリーチが長くて顔が遠い分、そこを強引に入っていこうとすると顎が上がり気味になってパンチをもらうと顔が跳ね上がっちゃう。そうやって見栄えが悪い場面が多いんです」

――特に真っすぐ系のパンチだと余計にそうなりますよね。

「まさにそれです。きっと遼伍さんも僕と同じで、ダメージはないんだけどやりづらかったと思います。ただ、そうなったのは自分が悪かったわけですし、水野君にはいつかやり返したいです」

――水野戦後すぐに練習は再開したのですか。

「ダメージもなかったのですぐに再開しました。メンタル的な部分も見直しながら練習内容もかなり変えましたね」

――具体的にどういった部分を変えたのでしょうか。

「自分は打撃出身なんで、ずっと組みに重点を置いて練習をやってきたんですけど、水野戦以降はもっとMMAのための組みというか、喧嘩しにいくイメージで組みをやるようになりました」

――なるほど。打撃出身の選手はテイクダウンや寝技のディフェンスを覚えることが必要ですが、ある意味、それは相手の攻撃を受ける前提のものになってしまいますよね。

「そうですね。あとは技術的な練習ばかりやっていると、技の引き出しは増えるかもしれないけど、良くも悪くも考えの幅が広がりすぎちゃうんですよね。だからもっと自分がやることを明確にする。で、そのゴールに向かうための幅が広がればいいだけの話なので、この3カ月はそこを意識して練習していますね。あと打撃に関していうとGLORYウェルター級王者のチコ・クワシと練習する機会があったんです」

――そうだったのですね。チコが自身のSNSで来日して剛毅會で練習している様子を投稿していましたが。

「ちょうど僕が働いているFIGHT CLUBにチコが来て、2Rだけマススパーリングをやってもらったんですけど、なんか凄く懐かしい感じがしたんですよね。僕の打撃って形が綺麗で、相手を型にはめて綺麗に組み立てる印象があると思うんですけど、もともとそうじゃなかったんです」

――本来は自由に好きに戦うスタイルだったのですか。

「はい。で、チコはものすごく自由にやっていて『そんなところからパンチ打つ?』みたいなところから打ってくるんで、ちょっと効かされちゃったんですよ。でもそれで自分本来のスタイルを思い出して、チコとスパーリングしたことがきっかけで大分(自分の動きを)取り戻しましたね」

――チコとスパーリングして「こうすればいいんだ!」ということに気づきましたか。

「僕はデビューして2戦目で変な漬けられ方をして判定負けして、3戦目で平松翔選手の右でKO負けしているんです。空手時代から自由な発想で勝ってきていて、細かいところをすっ飛ばしてきたところもあったので、MMAではそれまでのスタイルを一度見直してきちんと型を練習しようと思ってやってきました。そこがある程度はできてきたと思うので、今はまた自由なスタイルに戻すタイミングなのかなと思っています」

――しかもずっと自由にやってきたわけではなく、一度型をやりこんで自由なスタイルに戻ってきたことで戦いの幅は広がりますよね。

「はい。見える景色が全然違うし、やれることの幅も広がりました。練習でもほとんど打撃をもらわなくなりました。だから早く試合がしたいですね。実は6月末に中国で試合が決まりそうだったんですよ。でもそれが流れてしまって、やっと決まった試合なので楽しみです」

頭突きしてニンジャチョークで勝って、ケージを掴んで金的を蹴って負けて。参考にならない

――今大会では中国のクレイジー狂と対戦することになりました。かなりインパクトがあるリングネームですが、どのような印象を持っていますか。

「試合映像が2試合しかなくて、1試合は頭突きしてニンジャチョークで勝って、もう1試合は2R通して相手にペースを持っていかれてイライラしてケージを掴んで最後に金的を蹴って負けてたんですよ。だから参考にならないと言えばならないですね(苦笑)。まぁ中国人選手で入れ墨が入っている時点でかなりヤンチャなヤツだと思うし、僕としてはやりやすいタイプです」

――水野戦までにやってきた型の練習と今取り組んでいる自由な練習をぶつけることが出来る相手ですか。

「僕はそう思いますし、今回はいいものを見せられる感覚があります」

――フェザー級GPが終わって仕切り直しになると思いますが、ここからのキャリアはどのように積んでいきたいと思っていますか。

「自分としては年内もう1戦やって、しっかり弾みをつけて来年につなげたいです」

――改めて自分がタイトル戦線に絡んでいけるところを見せたいですか。

「そうですね。それこそ今回はしっかりKOしたいです。自分はアマチュア時代は全部KO勝ちだったんですけど、プロデビューしてから考えすぎるようになったんです。これからはもっと殺気を込めて戦いたいですね。ぶん殴って相手が倒れたところを顔面蹴ったら終わりでしょ、みたいな」

――先ほどもあったように水野選手へのリベンジも意識していますか。

「すぐやれるならやり返したいし、水野君がDEEPのベルトを獲るんだったらそこに挑戦したいです。ただ水野君が前回の試合後にRIZINの神戸大会に出たいとアピールしていたじゃないですか。もし水野君がDEEPのベルトよりもそっち(RIZIN)を優先するなら、僕が先に青井人が持つベルトに挑戦したいですね。青井人とだったら絶対自分の方が相性がいいと思っているので」

――水野戦を経て再出発する海飛選手の試合を楽しみにしています。

「僕はバカで不器用なんでやるしかないですね。クレイジー狂をぶっ飛ばします!」

PR
PR

関連記事

Movie