この星の格闘技を追いかける

【ONE FN26】ナカタニ戦へ。殺気纏う若松佑弥─01─「他人が僕の人生を評価するのも自由だけど…」

【写真】スパーリング中のピリピリは、集中力の高さに比例していた(C)MMAPLANET

7日(土)、タイはバンコクのルンピニースタジアムで開催されるONE Fight Night26「Lee vs Rasulov」に日本から若松佑弥が出場し、ギルバート・ナカタニと対戦する。
Text by Manabu Takashima

選手やジム関係者、プロモーションの人間なら誰もが認める実力者。しかし、一般層の間での知名度は低い。彼が戦うONEの戦いが、ライト層のファンに届いていないことも一つの要因だが、若松自身も知名度のアップに興味がない。

ただしシリアスにMMAと向き合うという点においてはUFCファイターやRIZINトップ選手と何ら引けを取らないばかりか、突き抜けているといっても過言でない。今回はLFAで2勝0敗と北米とのスケールとなる相手=ナカタニと戦うことになったが、そんな北米MMAヒエラルキーさえ眼中にないほど、ONEという舞台で若松は強さを追い求めている。


──練習を拝見させていただきましたが、殺気が周囲に伝播している。そんなスパーリングでした。

「自分的にはそんなに……まだ抑えている方で」

──長南さんからも注意が入るシーンもありました。

「そうですね。そうやって言われると、『あっ、まずいな』とコントロールしています。自分と対話をして。ただ闇雲にやるのではなくて。ただ、出さないといけない時もあります。そこをコントロールできるように常に意識していますね。

やっぱり自分が総合格闘技を始めたきっかけは、スポーツじゃなくて果たし合いだから。その部分で殺気は、絶対に出せないとダメだと思っています」

──これはやはりプロ練のスパーリングだからということはありますか。

「ハイ。一般会員さんとの練習でそうなることはないです。そこはコントロールできるようになりました」

──つまりは、以前は……。

「ハイ、普段からピリピリしまくっていました。自分を追い込むじゃないですけど、極限まで追い込まないといけないっていう変な固定概念があって。今も半分ぐらいは、その気持ちがあります。それとは別に、もっと楽にしないとっていう風に捉えることができるようになりました」

──ところで家族から離れて、お母さんのところで寝起きをしていると伺いました。

「ハイ。母親が家の近くに住んでいるので。やはり子供がいると、どうしても甘え、そして父親としての優しさが出てしまいます。でも、コレに賭けているので。家族との居心地の良い時間は犠牲にして、やってみたいというのが自分の想いです。中途半端にやりたくない」

──家族との時間を犠牲にしてまで、自らを追い込む?

「そうですね。何か言い訳を作って、一緒にいることだってできると思います。でも会いたい、遊びたいという気持ちを抑えて、漢として、親として8週間はしっかり自分にだけ向き合いたいと思っています。正解かどうかは分からないですけど、後悔したくないので。そこは自分の目指す父親、漢になるために子供と離れて、自分に向き合うことは必要だと思っています。本当に妻や子供には申し訳ないのですが、生死が掛かった場所で戦うので」

──夜はオフにして、家族で過ごすのも一つのあり方だと思います。それにして、8週間全く家族とは会わないのですか。

「保育園が母親の家に近いので、そこで一瞬会ったりするぐらいですね。その時はやっぱりリラックスしてしまうから、長い時間を一緒にいないようにしています。甘えが出てしまうというか……極限まで自分を追い込んでいきたいので。そうやってきたので、これまで以上に集中できているとは感じています」

──この表現方法は正直良くないですが、戦地に挑むという覚悟を持っているということですね。

「ハイ。簡単にそういう言葉は使えないですけど、そういうところに身を置く……自分のためにやっているだけです」

──そこまでの気持ちでいるにもかかわらず、ダニー・キンガド戦の勝利から11カ月も試合が空いてしまうことに関しては、どのように思っていますか。

「苦しい時期はありました。でも、自分は信じているので。人生って波があるし。晴れの日があれば、雨の日もある。でも、そこで信じることができるのかできないのか。そこで自分がブレて『じゃぁ、こっちに行きます』とかじゃなくて。信じて、信じて。そこで干されても良いっていう覚悟で自分は来たので。この期間も自分にとって戦いだったし、修行だと思ってきました。人に注目されていないですけど、そこは一線級と戦ってきたと思っているので、それもあって良い期間でした。

やっぱり上手くいくだけじゃないし、こういうこともあるというのは自分も分かっているので。良いことばかりじゃない。それでも自分をコントロールして、『これは良いことなんだ』と信じることが大切だと思っています」

──ここまで強さを追求して、MMAと向き合っている。でも、いまだに若松選手の存在を格闘技ファンですら分かっていないことが多い。この状態が、いつまで続くのか。周囲もそう思っている向きもあるかと思いますが、それでもONEに拘り続けるのは?

「契約した以上、その契約に従うのは当然です。それに自分は自分にしかなれない。他人が、僕の人生を評価するのも自由だけど、そんな周りの声に振り回されるのはなくて自分が信じた若松佑弥の人生、ストーリーは自分でしか創れない。もちろん今後、注目してもらうようになるは勝たないといけないです。メディアにも露出していかない。でも別に今まで妥協してきたわけじゃないし、とりあえず毎日全力でやってきました」

<この項、続く>

■ONE FN26視聴方法(予定)
12月7日(土・日本時間)
午前9時45分~U-NEXT

PR
PR

関連記事

Error, no Advert ID set! Check your syntax!

Movie