【PFL2024#10】ライト級決勝へ、昇華する柔術MMA=ブレント・プリマス「ガジは強いパウンドは打てない」
【写真】グラップリングでジェイク・シールズに腕十字を極めている。極め力の強さは絶対だ (C)MMAPLANET
29日(金・現地時間)、サウジアラビアはリヤドのKSU(キング・サウジ大学)アリーナで開催されるPFL2024#10「Championships」。6階級のPFL2024年シーズンの決勝戦に出場する12人のファイターのうち、4人がBellatorからシーズンに参戦した選手だ。
Text by Manabu Takashima
ライト級ファイナルに挑む元Bellator世界ライト級王者のブレント・プリマスもその一人。同じくBellatorライト級戦線で戦ってきたガジ・ラバダノフとBellatorファイター同士のファイナルを戦うプリマスにインタビューを試みた。
打撃は付き合わないと減点、寝技は離れると加点という状況にあるといっても不思議でないMMAにあって、ヒクソン・グレイシーをこよなく愛するプリマスは、極めとグラップリングの持ち込む試合運びが強化されPFLで挙げた3勝のうち2試合が一本勝ちでしっかりとボーナスPを獲得してきた。
中東サウジアラビアで迎える決勝戦に向けて、プリマスにPFLのフォーマット&遠征試合と対戦相手、そして強化された柔術MMAについて尋ねた。
――PFL2024年シーズン決勝が1週間後に迫ってきました(※取材は21日に行われた)。今の気持ちは教えてください。
「自信もあるし、最高の気分だよ。あと1週間少し、タイトルと100万ドルを手にするよ」
──今回の試合はサウジアラビアで実施されます。米国の太平洋岸であるオレゴン州在住のブレントは北米大陸、大西洋、そして地中海を越えて中東へとロングフライトと時差を乗り越える必要があります。
「そうなんだよ。2日後にリヤドに向かうけど、フライト時間は36時間だ。まぁ、楽しくはないよね(笑)。時差は11時間かな。最初は時差ボケもあるだろう。ただ、時間の調整はオレゴンではやっていない。半日の差があるから、皆のスケジュールと合わなくなる。明日が追い込みの仕上げでトレーニングはいつもと変わらずやってきた。でも時差の調整までは手が回らないというのが本音だよ」
──11時間の時差と36時間のフライトですか……。とにかく北米で試合をするのとは全く違いますね。
「ミドルイーストで戦うのも、訪れるのも初めてだ。でもファイターにとって、トラベルとファイトはセットだから。サウジアラビアで何が待っているのか楽しみにしている。米国で生活している僕らとは、全く違う習慣を持つ国だからね。宗教、食事、何もかも違う。全てが新しい経験になるし、遠征といってもヨーロッパで試合をするのとは別モノだと思っている。楽しみたいね。
それに100万ドルが掛かっているんだ。世界中のどこだろうが、戦うよ。100万ドルを手にできれば、家族の人生を変えることができる。子供たちの未来が変わるんだから、いつ、どこで、誰とだろうが戦う。レッツゴー!!」
──気合いが伝わってきます。ところでシーズンフォーマットで戦ってきた8カ月間は、これまでのキャリアとは違ったものでしょうか。
「試合が保障されているPFLのフォーマットは凄く良かったよ。今回のファイトで今年、4試合目。このペースで試合があることは本当に有難い。家族、PFLのチームの皆のために最後まで全力で戦う。そして2024年のワールドタイトルを獲得して、来年もこの素晴らしいプラットフォームで戦うことが楽しみにしている」
──今回も地元で調整をしてきたのですか。
「そうだね。ATT PDXポートランドのファビアーノ・ペガレヴィとトレーニング・パートナーに絶対の信頼を寄せている。それとポートランドから僕は車で2時間のユージーンに住んでいて、地元のパフォーマンス・マーシャルアーツで柔術中心の練習も続けているんだ。この2つのジムを毎日行き来することが、僕にとって最高のファイトのキャンプになっているよ」
──ATTポートランドに長年所属していますが、フロリダのATT本部でトレーニングをすることはないのでしょうか。
「僕が出稽古にいくとすればフロリダではなくて、南カリフォルニアのチーム・オーヤマになる。子供もいるし、家を空けることは簡単じゃなくなってきた。でも、僕はATT PDXで最高の練習ができている。僕は彼らを信じているし、彼らも僕を信じてくれている。
皆との練習の成果を発揮して、必ずATTにベルトを持って帰るよ。ファビアーノは単に指導者というだけでなく、父親のような存在だ。MMAを戦ううえでチームへの信頼ほど大切なモノはないと思っている」
──では対戦相手ガジ・ラバダノフの印象を話してもらっても良いですか。
「もちろん。タフな相手だよ。最高のジムで練習をしているし、素晴らしい相手だ。ただ僕は彼と同じジムの選手と2度既に戦っている。ウスマン・ヌルメゴメドフ、イスラム・マメドフの2人はガジをより大きく、強くしたようなファイターだった。言ってみるとガジの強化バージョンだよ。
最終的なガジの最終的な武器はテイクダウンだ。必ず狙ってくる。でも、それで構わない。グラウンドになれば僕のモノだから。決してガジを軽く見ることはないけど、僕の柔術は過去最高にMMAで機能している。本当に柔術を使いこなすことができるようになってきた。
同時にスタンドの練習も十分にやってきた。左フックから右という凄く危険なコンビネーションをガジは持っている。でもトレーニング・パートナーが徹底して対策練習の相手を務めてくれた。結果、僕のスタンドはタイミング、スピード共に磨きがかかっている。スタンドでKO、グラウンドでサブミット。どちらもできると思っている」
──ファンもプロモーションもスタンディングバトルを好み、寝技を練習していても試合では付き合わないように戦う選手が増えてきて、柔術家は厳しい状況にあります。そのなかでブレントはPFLで挙げた3勝のうち、2つの試合がRNCでの一本勝ちです。相手を組み技に付き合わせる展開ができているようにも感じます。
「アグレッシブな寝技を仕掛けることで、自分の形に持ちこむことができている。ガジとの試合でいえば、レスラーの寝技と柔術家の寝技は違う。ガジはコントロールをして、パンチを落としたいはずだ。でも、強いパンチは打てないだろう。彼がトップになっても、コントロールするのは僕だ。
ガジが強いパウンドを打ちたいとスペースを創れば、スイープやサブミットする隙になる。僕はトップでもボトムでも、ガジを仕留めることができる。彼よりずっとテクニカルな黒帯柔術家がトップから殴り、サブミットを仕掛けてくるという練習を繰り返してきた。ガジがどの局面で勝負して来るのか分からないけど、どこだろうが僕が彼を上回る。そして100万ドルを手にするんだ」
──ブレント、今日はありがとうございました。最後に日本のファンに一言お願いできないでしょうか。
「僕がここまで柔術にのめり込んだのは、ヒクソン・グレイシーが日本でVale Tudo Japan Openを戦ったドキュメンタリー(CHOKE)の影響を受けたからなんだ。20回以上、あのテープを視たよ。そして柔術を始めようと思った。以来、ずっとヒクソンとホイスを尊敬してきたんだ。飼っていた犬の名前もヒクソンだった(笑)」
──尊敬する人の名前を犬につけるのですね(笑)。
「アハハハ。ヒクソンは男の中の男で、絶対的に当時は最強だった。僕はヒクソンやホイスのようになりたかった。だから、日本で試合をすることも人生で大きな意味を持つようになっている。2025年には、その夢を実現させたい。そのためにも次に控えている試合で、全ての力を使ってフィニッシュする」
■視聴方法(予定)
11月29日(金)
午後11時15分~U-NEXT