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【Road to UFC2024 Ep06 & Road FC69】原口兄弟の世界への挑戦─01─「最後は絶対殴らないとダメだ!」

【写真】去年に続き、両Road挑戦の夏を過ごす央&伸の原口兄弟 (C)TAKUMI NAKAMURA

23日(金・現地時間)にネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXでRoad to UFC2024 Ep05 & Ep06=Road to UFC Season03 Semi Finalsが開催され、Ep06第3試合のフェザー級準決勝で原口伸がチュウ・カンチエと対戦。そして31日(土・現地時間)に韓国ウォンジュのウォンジュ総合体育館でRoad FC69が開催され、Global Tournamentの63キロトーナメント一回戦で原口央がエルデュカルディ・ドゥイシェフと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

原口兄弟は昨年と同様に時を同じくして兄・央がROAD FC、弟・伸がRoad to UFC(RTU)とそれぞれの舞台で✖世界にチャレンジしている。打撃への評価が高まる最近のMMAにおいて、レスリングベースの2人はどう変化し、今のMMAの流れにアジャストしようとしているのか。そして如何に海外で強豪外国人選手に勝つことに取り組んでいるのか。この夏に決戦を控えている2人に話を訊いた。


「伸には怒られました(苦笑)。なんでもっと行かないんだよって」(央)

――今回お2人が同時期に試合に出場するということもあり、対談形式で取材させてもらうことになりました。まずはお互いの直近の試合から振り返っていただきたいと思います。まずは央選手、5月のDEEPでは石司晃一選手にスプリット判定で敗れるという結果でした。

 コントロールに執着しすぎて、自分のいいとことを全く出せてなかったですね。勝ちにこだわりすぎたというか、もっといけるところでしっかりいけたんじゃないかなと反省しています。

――ジャッジの評価も分かれた試合で、セコンドの宮田和幸代表からは「もっと行け!」という指示が出ていたそうですね。

 僕は寝かせて(一本)取りたいというのがあったのですが、組んだところで細かい打撃を入れたりしないと、今のMMAは打撃の方が評価されてポイントを取ることが多いので、そういう部分の差で負けたのかなと思いました。実際にセコンドの宮田先生や伸からもずっと『いけ!いけ!』と言われていたんですよね。

 僕もめちゃくちゃそういう指示を出していて、カツを入れていたんですよ。僕はあっち(石司)にポイントが入っているかもしれないと思ったので。それで3Rに行く前のインターバルでも『最後は絶対殴らないとダメだ!』と言ったのですが、そこで本人が少し守りに入ってしまって、あと一歩が出せなかったのかなと思いました。

――なぜ央選手は自分から行ききれなかったのでしょうか。

 もっと組み際の打撃を入れたり、普通にスタンドでも自信を持ってやればよかったのかなと。今回は相手の石司選手がストライカーということもあって、直近の試合でも思いっきりのいい打撃を出していたし、2Rに少し打撃の展開にもなったんですけど、そこで変に石司選手のことを大きく見てしまったのかもしれないです。

――試合後に2人で何かお話されましたか。

 伸には怒られました(苦笑)。なんでもっと行かないんだよって。

「本当にもう1つ勇気が出せるか出せないかの話」(伸)

 あれはもう本当にもう1つ勇気が出せるか出せないかの話だと思うんですよ。結構僕らも試合を重ねてきて、そういう殻を破らないといけないなと思っていて。だから兄貴に話すことはは、イコール自分にも言い聞かせている部分があって。試合になったら腹を括らないといけないなと思いました。

――最近のMMAはコントロールよりもダメージが評価される傾向もあり、レスリングベースのお2人としては戦い方を変える部分もありますよね。

 それは宮田代表からもすごく言われています。これからMMAで勝つには組みと打撃をいかに混ぜるかが重要だぞと。

 自分も殴ることができるポジションに入ったら必ず殴る。そういう意識を持つようにしています。

(C)Zuffa/UFC

――そして伸選手は2年連続のRTU出場。

今年はフェザー級でのチャレンジとなりました。5月の一回戦はホン・ジュンヨンに判定勝ちでしたが、あの試合を振り返っていただけますか。

 昨年はライト級でRTUにチャレンジして、決勝でロン・チュウに負けた時の反省点を活かした戦い方はできたと思うのですが、逆にそればっかりになってしまったかなと思います。フィニッシュを狙うことがあまり出来ていなかったので、少しでも自分の殻を破って戦わないといけないなと思いました。

 僕は1回戦の相手がかなり強いと聞いていて、蓋を開けてみれば30-25をつけたジャッジもいたので、差のある試合だったかなと思います。

――こうしてお2人の振り返りを聞いていると、前回の試合を踏まえて殻を破ることが課題になっているようですね。

 自分は自分を客観的に見てそう思いますし、兄貴の試合を見ていてもそう感じました。

 石司戦はああいう試合になっちゃいましたけど、逆にキム・スーチョル戦(2022年10月、2RTKO負けも原口の健闘が光った)は殻を破るような試合が出来ていたと思うんですよね。自分で言うのもあれですけど、スーチョル戦ではあれだけいい試合が出来ていたのに、石司戦では萎縮してしまったのかなと思います。

――央選手はスーチョル戦でどんなものを得ましたか。

 あの時は失うものが何もなかったし、むちゃくちゃ強い相手だったからこそ吹っ切れて、思いっきりぶつかっていけた部分があったと思います。

――もちろん2連敗という結果には納得していないと思いますが、この2試合の経験値は大きかったと思います。

 ス―チョル戦はTKO負けだったけどいい内容の試合で、逆に石司戦は僅差の判定負けだったけど悔いしか残らないような試合でした。いい試合をしても負けたら意味がないと思うし、このままじゃいけないなということは痛感しましたね。

――先ほどはコントロール+殴る意識についてもお聞きしましたが、今お2人が意識して取り組んでる練習はありますか。

 やっぱり今はそういう考えのもとでやっていますね。いかに殴ってダメージを与えることを意識するか。

 一番はフィニッシュを意識するようにしてますね。仮にそれがフィニッシュにつながらなくても、そのアグレッシブさでポイントがつく場合もあるので。やっぱりジャッジする人たちも人間なので、 フィニッシュを狙う姿勢を見せる選手にはポイントをつけるものだと思うんですよ。

結果としてフィニッシュ出来ればそれにこしたことはないので、とにかく今はフィニッシュすることを意識しています。一試合の流れのなかでどれだけ一本を狙いに行けるか、ですね。

 自分も常にフィニッシュを狙っているのですが(コントロールしながらの)打撃がメインになりますよね。どうしてもテイクダウンを取って完全に相手の動きを固めてポイントを取るのは難しいし、それこそ超RIZIN3の扇久保博正選手と神龍誠選手の試合も、テイクダウンやポジションを取るのは神龍選手が上手かったけど、コツコツ打撃を当てていたのは扇久保選手の方で。

実際にジャッジも扇久保選手のことを評価していたので、本当に細かい部分ですけど、ポジションを取ったらすぐに殴って、みたいなことは心がけていますね」

――今はストライカーが評価されやすい傾向がありますが、コントロールをメインにしていた選手たちが打撃の意識を持つことで、新たな殴り方や殴るポジションも見つかると思うのですが、そこはどうお考えですか。

 殴る意識を持つようになってから、ちょっとずつ動きも変わってきている感じがしています。人のスパーリングを見ていて「そこで殴れるんじゃない?」みたいな閃きもあるし。テイクダウンしたら必要以上にくっつくんじゃなくて、自分だけ距離を取っておいて上からパンチを落とすとか。そういう練習をやっているので、人の練習や試合もより注意深く見るようになったし、そこは新しい発見かなと思います。

 それこそ石司戦がコントロールはしているけど殴りが少ない試合だったので、あの試合を見返して「ここで殴っておけばよかったのに」や「なんでそこで行かないんだよ!」と思いましたね。相手の光を消していたけど、それと自分の光も消してしまっていたので。あとは自分と似たスタイルの選手の試合映像でスクランブルの展開になったところを見て、参考になる動きは取り入れるようにしています。

<この項、続く

■視聴方法(予定)
8月24日(土)
Ep05午前10時~UFC Fight Pass
Ep06午後12時~UFC Fight Pass
Ep05&06午前9時45分~U-NEXT

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