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【Road FC72】初参戦で元王者ヘジンと対戦、原口伸「自分の行動で自分が選んだ道を全て正解にする」

【写真】キム・ス―チョルと1勝1敗のヘジンに対して「生物的な強さを押しつけて勝つ。凶暴性を持ってやりたい」と語る(C)TAKUMI NAKAMURA

16日(日・現地時間)に韓国はソウルのチャンチュン体育館で開催されるRoad FC72にて、原口伸が元Road FCフェザー級王者パク・ヘジンと68キロ契約で対戦する。
text by Takumi Nakamura

2度のRoad to UFC(RTU)出場を経て、昨年12月のGrachanで高橋孝徳をパウンドアウトして再起を果たした原口。2025年の初陣は韓国のRoad FC、再び国外で戦う道を選択した。

しかも対戦相手は元フェザー級王者で、キム・スーチョルとは1勝1敗の戦績を誇るヘジン。原口自身も「今まで戦ってきた選手の中でも5本の指に入る経験値を持った選手」と話す強敵に挑むことになる。

RTUでの戦いで分かったレスリング力の活かし方、そして格闘技そのものへの向き合い方。Road FCから再スタートを切る原口に話を訊いた。


――国内復帰戦となった昨年12月のGrachanでは高橋孝徳選手にパウンドアウトで勝利して再起を果たしました。まずはあの一戦から振り返っていただけますか。

「自分的にはタックルを使わないで行こうと思っていて、そこの課題を持って取り組んだ試合ですね」

――それはRTUの試合を踏まえて、テイクダウンに頼らない戦い方が自分には必要だと感じたのですか。

「自分は良くも悪くもタックルが武器で、そこが長所だったはずなのに、短所に変わりつつあったというか。タックルに逃げる癖がついてたのかなと思ったんです。ただひたすらタックルに入るのではなく、打撃の攻防から自然と距離がぶつかって、組みの展開に持っていく。そういうことを考えるようになって、打撃と組みの際を大切に作っていこうと思いました」

――それはRTUが終わったあとから取り組んでいたことですか。

「そうですね。部分的に打撃の練習を続けつつ、試合まで最後の1~2週間で上手く(打撃と組みを)繋ぎ合わせる作業が必要だと思って準備していました」

――原口選手がご自身のXでジョシュア・ヴァン×鶴屋怜のあとに「自分とロン・チュウのような試合だった」とコメントしていたじゃないですか。それがちょうど今の話にもつながりますよね。

「はい。僕は早い段階、2年前のRTUの決勝(2024年2月)でロン・チュウに負けた時にそれに気づいていて。去年のRTUでも修正しきれていなかったのですが、どんなに(テイクダウンな)強い選手でも、そこだけの一点突破は難しいんだなと思いました」

――対戦相手のレベルが上がれば上がるほど、仮にテイクダウンできても、一発で寝かされて終わるということはない。そうなると何回テイクダウンのアプローチが出来るかが必要となり、その際に体力的に消耗しない入り方やレスリング力だけに頼らないテイクダウンのやり方が必要になると思います。

「打撃でプレッシャーをかけられた状態でタックルに入ると、その影響が入ったあとの組みの攻防やグラウンドの攻防にも出ちゃうんです。相手からすれば打撃でプレッシャーをかけているから、仮にタックルに入られたとしても、そこから先を気をつければいいだけの作業になる。鶴屋選手の試合で言うと、間違いなくシンプルなグラップリング勝負だったら鶴屋選手の方がヴァンより強いと思いますが、そこ以外の部分で圧力をかけられているから、テイクダウンにも時間がかかるし、やっとテイクダウンできても、ヴァンには余裕が生まれている分、対応されてしまうんだな、と」

――まさに原口選手がロン・チュウに一本負けしたパターンがそうでしたよね。

「戦っている舞台は鶴屋選手の方が上というのは理解していますが、鶴屋選手の気持ちはすごく分かるというか。ああいう試合展開は組んでいると焦ってくるんですよ。思った通りにコントロールができないなって。その焦りから組み一辺倒になって、そうなればなるほど相手が楽になる。それが自分がさっき言った『タックルが強みだけど、そこに逃げてはいけない』ということなんです」

――原口選手がMMAファイターとして今よりもワンランク上に行くためにも、タックルに逃げてはいけない、と。

「ただ、そこはすごい難しいところで、MMAファイターとしてどんどん成熟するために色んな打撃や技術を覚えていくことは必要ですが、自分の強み=レスリングの一番いいところは絶対に消しちゃいけないんです。だからタックルに入るのも、逃げの選択肢として使うのではなく、ちゃんと打撃で(試合を)作ってから入るとか、そういう使い方をしなければいけないなと思いました」

――こうして原口選手と話をしていて思ったのですが、まさに今のレスラー系のUFCチャンピオンたちがそういう戦い方をしていますよね。

「あぁ……確かにマラブ(・デヴァリシビリ)選手やベラル(・モハメッド)選手は、そんな感じですよね」

――ストライカーになるわけではないけど、ちゃんとスタンドの打撃で相手と立ち会って、自分から手を出す。そのなかでタイミングを取ってテイクダウンに入る。原口選手から見て、ああいうタックルの入り方は意外に疲れないものなのでしょうか。

「タックルに入る回数は多くても、本人がここでいけると思ったタイミングで入るタックルで、それを繰り返してるだけだから、もしかしたら外から見ているほど疲れはないのかもしれないですね」

――そういったことに気づけたという意味でもRTUでの経験は意味があるものだったのではないですか。、

「RTUで負けてすぐの頃はUFCの試合をちゃんと見られないというか、もしあそこで勝っていれば、ここに自分が立っていたのになと思ってしまって……その気持ちは今でもあるんですけど、それ以上にRTUの戦いは授業料というか、結局最後に最終到達点(UFC)に行くために必要な授業料だったのかなと最近は思っています」

――さて2025年の初戦が韓国・Road FCで決まりました。これはどういった経緯で参戦が決まったのですか。

「Road FCには兄(原口央)がずっと出ていたり、同じジムの選手が出ていたり、僕もセコンドとしてついていったことがあるんです。身近でRoad FCを見ていて、すごく盛り上がっている団体だなと思っていました。あと僕自身、韓国人選手で戦うことが多くて、現地の人たちからも写真とかをすごくお願いされるんです。そういう部分でもRoad FCにはポジティブな印象を持っていました。実際に兄のマネージャーや関係者と話す機会もあって、その際に『タイミングが合えばオファーしますよ』みたいに言われて、それで今回Road FCに参戦することが出来ました」

――韓国のMMAファンからすると「俺たちのチャンピオンと戦った日本人だ!」という認識なんでしょうね。

「RTUで韓国人のチャンピオンを2人倒しているので、韓国人キラーみたいな感じでも知られていると言われました」

――Road FCはセコンドとして見ていても盛り上がりを感じましたか。

「演出もしっかりしているし、イメージ的にはRIZINの地方大会みたいな感じですね。僕がセコンドで行ったのは原州(ウォンジュ)で、中心地から少し離れている場所だったんですけど、今年はまたソウルでも大会をやるらしく、イベントの規模も大きくなるのかなと思います」

――しかも用意された相手が、元Road FCフェザー級王者で、キム・スーチョルとは1勝1敗のパク・ヘジンです。原口選手にとってはかなり燃える相手ですよね。

「最初は元チャンピオンということしか知らなくて、オファーをもらってすぐに『やります!』と返事したんです。それであとあと調べてみたら、スーチョルと1勝1敗じゃん、みたいな(笑)。寝技が強い選手というのは分かっていたんですけど、スーチョルに勝った試合はちゃんと打撃を効かせてから一本取っていたんで、普通に完成度が高いし、喧嘩ができる・MMAが強い寝技師という印象です。なんなら自分が今まで戦ってきた選手の中でも5本の指に入る経験値を持った選手だと思っています。一切相手のことは侮っていません」

――言える範囲でどういういった試合をイメージしてますか。

「ぶっちゃけ、お互い相性はよくないと思うんですよ。でもそれを踏まえて、作戦というよりは、今回は生物的な強さを押しつけて勝ちたいなって思います。凶暴性を持ってやりたいですね」

――本能的に戦いたいということですか。

「最初に話したタックルに逃げたくないというのもある一方、カッとなって打ち合うこともなく、ちゃんと細かいことを意識して戦おうと思います」

――ヘジンの寝技を警戒しすぎて受けに回ることがよくないパターンもあると思います。

「そこも実際に相手と触ってみて、ちゃんとディフェンスすべきなのか、パウンドを打つべきなのか、自分からもどんどん寝技やスクランブルを仕掛けた方がいいのか…即興的に対応してベストな選択をしたいと思います」

――原口選手は2025年をどんな1年にしていきたいと思っていますか。

「Road FCという素晴らしい団体で参戦させていただくことになって、今の僕の仕事先はRoad FCです。もしそこでタイトルマッチを組んでもらえるなら、もちろんベルトを獲りに行きます。RTUの負けが教えてくれたことなんですけど、試合がどういう形に転んだとしても負けるときは負けるし、それをああだこうだ言ってもしょうがない。最初から正解を狙って進んでいくと、何がしたいかよく分からなくなってしまうので、自分が選んだ道を信じて、自分の行動でそれを全て正解にするつもりです」

――今の原口選手にとっての仕事先=Road FCであり、Road FCを選んだことを正解にしていくということですね。それでは最後に原口選手のことを応援しているファンのみなさんにメッセージをいただけますか。

「最近はあまり周囲の期待を背負わずに、のびのびとやろうと思っています。今思うとRTUでは無意識のうちに色んなことを背負い込みすぎていたんです。自分が気付いてないところで自分へのハードルをどんどん上げていて、試合が近づい来ると視野が(人差し指と親指で小さな円を作って)このくらいになっていました(苦笑)。だから周りのことは気にせず、もう一度自分がやりたかった格闘技をやる。周りの期待を背負わず、自分のやりたいことをやりたいようにやる。その結果、僕のことを応援してくれる人がいれば、応援してほしいという考えになりましたね。とりあえず今度の試合は自分の背中や戦う姿を見てほしいです」

――RTUはUFC出場のための数少ないチャンスではあると思いますが、RTUで敗退したからといってUFCへの道がすべて閉ざされたわけではない。それこそ最終的にUFCにたどり着けば、原口選手の選択が正解だったことを証明すると思います。

「思い返してみれば、レスリング時代も周りの期待は何も背負わず、好き勝手にやらせてもらっている時の方がいい結果を出せることが多かったんです。もともと自分はそういう性格だったはずなのに、RTUではそれと真逆の方向に行ってしまった気がします」

――これからは自分のやりたい格闘技をやっていくと。

「言い方は悪いかもしれませんが、僕は誰の期待も背負わず、自分のために戦おうと思います」

■Road FC72視聴方法(予定)
3月16日(日)
午後14時~ カカオTV、SOOP(旧アフリカTV)

■メイン対戦カード
<Road FCヘビー級選手権試合/5分3R>
[王者] キム・テイン(韓国)
[挑戦者] 関野大成(日本)

<Road FCミドル級王座統一戦/5分3R>
[正規王者] ファン・インス(韓国)
[暫定王者] イム・ドンフアン(韓国)

<ライト級/5分3R>
パク・シウォン(韓国)
ナンディンエルデン・キム・インソォン(韓国)

<Road FCフライ級王座決定戦/5分3R>
イ・ジョンヒョン(韓国)
コ・ドンヨク(韓国)

<66キロ契約/5分3R>
キム・ヒョンウ(韓国)
黒井海成(日本)

<68キロ契約/5分3R>
パク・ヘジン(韓国)
原口央(日本)

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