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【Shooto2024#04】藤野恵実と修斗女子世界ストロー級王座決定戦、杉本恵「藤野選手の圧力は感じなくて」

【写真】初戦の経験が、どう生きるか。楽しみな、25分間(C)SHOJIRO KAMAIKE

19日(日)、東京都港区のニューピアホールで昼夜興行として開催されるShooto2024#04では、第1部(昼興行)のメインで杉本恵が藤野恵実と修斗世界女子ストロー級王座を賭けて戦う。
Text by Shojiro Kameike

両者は昨年のインフィニティリーグで対戦し、結果は2Rドローに。しかしリーグ戦で優勝した藤野と準優勝の杉本が、ベルトを賭けたリマッチに臨むこととなった。杉本にとっては2度目のインフィニティリーグ挑戦で、初のベルト挑戦に辿り着いた。今回の試合に向けてタイはプーケットのタイガームエタイで練習していたという杉本に自身の成長と改善点、そしてベルトへの想いを訊いた。


――タイガームエタイで練習しているとお聞きしましたが、今もバンコクにいらっしゃるのですか。

「昨日帰国しました! 5月3日から10日間ほど、RENAと一緒にタイガームエタイで行かせてもらっていました」

――本野美樹選手もそうですし、RENA選手をキッカケにAACCからもタイガームエタイへ出稽古に行く選手が増えているのですね。

「そうですね。またRENAがタイガームエタイに行くと聞いて、私も試合前の追い込み練習で行きたいと思いました」

ソン・ヤードン、RENA、本田良介と(C)MEGUMI SUGIMOTO

――タイガームエタイではどのような練習をしてきたのですか。

「ボクシング、キックボクシング、寝技とMMAの全てですね。タイガームエタイにはいろんなクラスがあって、全てのクラスに参加できるので。おかげで1日3部練をやってきました。今までも阿部さんやAACCのメンバーと一緒に海外へ行ったことはありましたけど、これだけ長い期間、しかもガッツリと練習したことはなかったです」

――RIZIN神戸大会の前にタイで練習しているRENA選手にリモートでインタビューしたところ、ものすごく明るかったです。日本にいるとそうではない、ということではないと思いますが、タイの雰囲気がより人を明るくさせるのでしょうか。

「気候もあるし、タイガームエタイは練習環境も整っているので、すごく良い感じで練習することができました。私の場合は日本にいると、どうしても子供もいるし家庭のことも考えないといけなくて。今回はタイで集中して練習することができたので良かったです」

――杉本選手がタイで練習している間は、ご主人である阿部裕幸AACC代表がお子さんと一緒に……。

「ウチの場合は子供が二人ともAACCで練習していますからね。お父さんと一緒に練習へ行っていました」

――杉本選手は2013年に一度プロデビューし、お子さん二人の出産を経て2019年に復帰しました。小さいお子さんが二人いながら現役生活を送ることに難しさはないですか。

「周りの選手と比べても、どうしても練習時間は削られてしまいますよね。『いつまで現役を続けられるのかな……』とは考えたりします。でもそこは自分次第で、時間を見つけて強くなるしかないんだろうと思います」

――6年のブランクの間も、ずっと復帰したいという想いを抱えていたのですか。

「もともと小学校から大学までレスリングをやっていて、大学の後は就職してレスリングは辞めていました。その頃に阿部さんと出会い、最初はキッズレスリングの練習を手伝っていて――AACCでMMAの練習を見た時に、私もMMAをやりたいと思って。でもプロデビューして1年ぐらいで出産と子育てに入ったから、自分の中でやり切れていないという気持ちがあったんです」

――2019年に復帰するまでの6年間で、MMAも大きく変化していたと思います。分かりやすいところでは、国内でもリングよりケージが使用される興行が増えていました。その6年間のギャップは感じませんでしたか。

「確かにいろいろ変化していましたけど、その場に復帰することに対して怖さとかはなかったです。それよりも自分がまた皆の中に戻りたいという気持ちのほうが強くて」

――その気持ちに体は追いつきましたか。

「大丈夫でした。練習に復帰した時、思っていたよりも動けましたね」

――復帰後の2020年、黒部三奈選手とSARAMI選手に2連敗を喫して以降は無敗です。この2試合を境に杉本選手の中で何か変化があったのでしょうか。女子選手の中でも杉本選手は11勝3敗2分と勝率が高い。しかしトップどころには勝てないのか……という印象がありました。しかし次に対戦する藤野恵実選手との初戦(昨年11月)は2Rドローで、成長も見えた試合だったと思います。

「とにかく『負けたくない』という気持ちですね。私は負けず嫌いなので(笑)。AACCのメンバーがベルトを巻くなかで、早く私も追いつきたいと思って練習してきました」

――負けず嫌い、ですか。そう聞くと分かります。杉本選手は負けず嫌いの性格が強すぎませんか。

「アハハハ! そうですね」

――もともとレスリングのベースがあるのに、なぜそのベースを生かして戦わないのだろうかと思っていました。たとえば1Rは打撃戦で、2Rになるとテイクダウンからコントロールするという展開が多く……。

「それ、みんなに言われます(苦笑)。私は打撃がヘタクソなので、1Rはどれだけできるか試したくなってしまうんですよ。でもパンチが強くないこともあって、2Rはテイクダウンするという。本当は1Rからレスリングで勝負したほうが良いことは分かっているんです。でも、どうしても殴り合ってしまって」

――杉本選手の場合、気持ちが強すぎて前に行きすぎているように感じます。

「それはありますね(笑)。私は不器用で、一つのことしかできないんですよ。打撃は打撃、レスリングはレスリングと、どっちかになってしまいます。それも以前よりはバランスも良くなっているのかなぁ、とは思っているんですけど」

――藤野選手との初戦では、その成果が出たと思いますか。

「あの試合は思っていたよりも藤野選手の圧力は感じなくて、『これはいけるんじゃないか』と。相手の力強さも警戒はしていたものの、その点も対応できて。意外と冷静に戦えていたと思います」

――序盤にフラッシュダウンがありながら、テイクダウンを奪ってドローに持ち込めたのも冷静さがあったからこそですね。

「あぁ、あれはフラッシュダウンじゃないんですよ。体当たりというか、押されて転んじゃったんですよね(苦笑)」

――体当たりが強く転んでしまった……それはそれで、相撲MMAの真骨頂です。

「でもパンチを出していたので、あれはフラッシュダウンに見えても仕方ないです。あの時だけは、すごい圧力を感じました」

――冷静に戦うことができていた、というのは続く宝珠山桃花戦で証明されたのでしょうか。相手を打ち合いに引きずりこむことがある宝珠山選手に対して、杉本選手は打ち合いを挑まなかったです。

「相手が打撃の選手だったので、テイクダウンから優勢なポジションを押さえて勝つことは決めていて。いつも『相手が打ってきたら、こちらも……』という感じで試合をしてきましたけど、宝珠山戦はその気持ちを我慢しました(笑)」

――アハハハ。前回のインフィニティリーグと今回とでは気持ちも違いましたか。

「前回は復帰という意味で、『できる範囲で頑張れたら』と思っていました。でも2回目となると『絶対に勝ちたい』という気持ちは強かったです。その中で、藤野選手との試合はドローでしたけど手応えはあって。自分の気持ちと試合内容が、ようやく形になってきて――2回目のインフィニティリーグ挑戦で、ようやくベルトが懸かった試合にたどり着くことができました。次は絶対にベルトを獲りたいですね」

――初戦は2R戦で、次は5R戦です。その違いは意識しますか。

「2Rと5Rでは全然違いますよね。私自身やってみないと、どうなるかは分からないです。でも自分がやるべきことを全て出すというのは変わらないですね。5Rフルで戦うことになるかどうかは分からないけど、ラウンド一つずつ自分のレスリングを生かして全力で勝ちに行きます」

■視聴方法(予定)
5月19日(土)
午後12時30分~ABEMA格闘チャンネル

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