【Road to UFC2024Ep04】敗戦&減量失敗からの巻き返し、松井斗輝「あの経験がなければ……」
【写真】ネガティブな発言から始まりながら、取材中は笑顔を浮かべることも多かった松井。しっかりと気持ちを切り替えてオクタゴンに挑んでほしい(C)SHOJIRO KAMEIKE
18日(土・現地時間)&19日(日・同)に中国は上海のUFC PIで開催されるRoad to UFC2024。2日間で4エピソードが実施されるアジア発、世界最高峰への道──その2日目、エピソード04で松井斗輝がフィリピンのルエル・パナレスと対戦する。
Text by Shojiro Kameike
フライ級に日本から唯一の出場となった松井にとって、2024年のスタートは残念なものとなった。昨年12月、ムハンマド・サロハイディノフに敗れてから、わずか1カ月半で挑もうとした秋葉大樹戦で松井は計量をクリアできなかった。減量中に体調を崩し、病院に搬送されて試合中止となった松井は何を想うのか。取材時の松井は口数も少ない。さらに今回のインタビューでは、まずネガティブとも受け取れる気持ちを吐露している。しかし敗戦と減量失敗を糧に松井が世界の頂点を目指してRTUに参加する、その気持ちを知ってほしい。
――まずはRTU出場が決定した時の気持ちを教えてください。
「秋葉選手との試合で計量失敗して、まず『自分が出て良いのか』という気持ちがありました。それと『しっかりベルトを獲ってから……』という考えもあったので、ベルトを巻いていない自分が出るのは、RTUの順番待ちをしている人たちに対して申し訳ないという気持ちにもなりました」
――いきなりネガティブとも受け取れる言葉が出て驚きました。スケジュールを考えると、昨年末のサドハイディノフ戦の頃からRTU出場は検討していたわけですよね。
「秋葉戦で勝てばRTUも確定するんじゃないか、という話をしていました」
――それだけ重要な秋葉戦の計量で6.8キロオーバーということは、「落とせなかった」のではなく、何かしらの要因で「減量できていなかった」ということですか。
「あの時はずっと体調が悪くて、水抜きで体重を落とした後に病院へ緊急搬送されました。その病院で試合が中止になったと聞いて……。点滴を打ってもらい、水分や食事で体力を回復させてもらったあと、秋葉選手に謝りたいと思って計量会場に行ったんです。その時に自分の体重を測ったら『6.8キロオーバーまで戻っていた』という状態でした」
――なるほど。松井選手としては秋葉戦でしっかり勝ち、その勢いでRTUに臨むという気持ちを持っていたのですね。
「はい。サロハイディノフ戦の負けを取り返したいと思って、1カ月と3週間後の試合でもオファーを受けました。でも、そのためにコンディションをつくれなかったことは事実です」
――松井選手はフライ級でもフレームが大きいほうだと思います。コンディション調整と計量失敗を経て、RTUでもフライ級で戦うことに不安はありませんでしたか。
「……正直、不安はありました。でもサロハイディノフ戦の時、時間をかけて減量したら、すごくコンディションは良かったんです。試合は負けてしまいましたけど、それだけ時間をかけたら体重も落とせて、コンディションも良い状態で試合ができるとは思っていました。それとバンタム級ではRTUに僕が出られる枠はない。だから――自分が起こしてしまったことから学んで、しっかりフライ級で戦おうと決めました」
――そのとおりですね。松井選手は、いつ頃からUFCを意識して、オクタゴンを目指そうと考えていたのでしょうか。
「プロデビューした時からです。ずっと『日本の代表として世界で戦いたい』と思っていて、世界一の大会であるUFCを目指すと考えていました」
――同時にチームメイトの鶴屋怜選手がRTUを勝ち抜き、UFCと契約したことも影響していますか。
「特に怜は同じ階級なので、メチャクチャ刺激を受けています。あの時はとにかくチームメイトの応援でしたけど、改めて同じ階級で自分もUFCを目指していることを考えると……。あれだけ強い怜でも、決して楽なトーナメントじゃなかったですよね。去年のトーナメントを見ていて『自分も絶対に勝てないわけじゃない。でも、やらないといけないことは多い』と気づくことはできました」
――ではサロハイディノフ戦の敗北から改めてRTU出場を考える際に、改めて取り組まなければいけない点はありましたか。
「やっぱり組みと寝技ですね。その部分はまだ3年半しかやっていなくて――寝技は経験によるものだと言われているので、今は組みと寝技をひたすら練習しています」
――組みと寝技という面でも、あれだけしつこく組んでくるサロハイディノフと対戦した経験も生かされるのではないでしょうか。
「そうなんです。本当に組みがしつこくて……(苦笑)。あれだけ組んでくる選手は、日本でもいないですし。国内でサロハイディノフ選手と対戦できたことは、経験として本当に大きいと思います」
――秋葉戦の前に体調を崩し、RTU確定までにコンディションは戻っていたのですか。
「RTU確定の連絡が来たのは、ちょうど練習を休んでいた時期でした。秋葉戦の計量失敗から1カ月ぐらい休もうと思っていて。でも確定の連絡が来て、すぐに練習を始めました。相手も決まっていて、『もうやるしかない』と気持ちはすぐに切り替わったんです。ただ体は、やっぱり1週間は思うようには戻らなかったですね。
でもサロハイディノフ戦のあとも少し休んでから練習を再開した時、やっぱり1週間ぐらいは体が動かなくて。それが練習を再開してから2週間ぐらいしたら動きも戻ってきたので、安心はしていたんです。同じように今回も2週間後ぐらいから戻ってきました」
――敗戦にしろ計量失敗にしろ、起きてしまったことは仕方ありません。ただ、サロハイディノフ戦から秋葉戦まで1カ月半の間に起きたことは、松井選手にとって本当に大きな糧となったのですね。
「あの経験がなければ、今回も焦りが出ていたかもしれないです。でも今は良い意味での危機感を持つことができています」
――それは良かったです。では対戦するルエル・パナレスの印象から教えてください。
「探してみるとパナレスの試合映像も、すぐに出てきて助かりました。ストライカーで――フィリピンのストライカーは結構振ってくるイメージがあったんですけど、パナレスは綺麗に戦うイメージですね」
――同じフィリピンのMMAファイターでもラカイの選手は大きく振ってくることもありますが、パナレスは違いますね。
「ラカイの選手と比べると、綺麗すぎる戦いなのかなっていう印象はあります。あと公式プロフィールでは身長差が3センチほどしかないけど、試合映像を視ると明らかに小さいですよね。160センチ台の前半なのかな、って思います」
――身長が低い相手はやりやすいですか。
「やりやすいです。それだけリーチも短いと思うので」
――パナレスはサウスポーに構えていますが、松井選手のスタイルを考えるとサウスポーは苦にしていないという印象があります。左ジャブ、右ストレート、さらに左ボディを主体にしていると……。
「そうですね。アマチュアボクシングの時はトーナメントだから、試合直前まで相手がどちらの構えなのか分からないことが多かったんです。でもサウスポーは苦手ではなかったし、もともとサウスポーの選手が多かったので、スパーリングもたくさんやっていました。だからパナレスは、やりやすい相手だと思います。
気をつけるとすれば左ハイキックですね。意外と足が高く上がってきますし、喧嘩四つで僕がインサイドを取った時に左ハイを合わされるのは注意したいです。あとはパナレスは普通のキレイな打撃なので、自分も特別はことはせず、いつもどおり戦います。できればKOしたほうがインパクトは大きいと思いますけど、トーナメントを勝ち抜けばUFCと契約ですから、まずは目の前の試合で勝っていくことを考えます」
■視聴方法(予定)
5月19日(日)
午後9時~UFC Fight Pass
午後6時45分~U-NEXT(Ep03から続き)