【Pancrase348】バンタム級で再出発。松井斗輝「ゼロからのスタート、今は何も言える立場ではない」
【写真】2度の計量失敗を経ての一戦、文字通りバンタム級での再起を図る松井(C)TAKUMI NAKAMURA
10日(日)、東京都港区のニューピアホールで開催されるダブルヘッダー昼の部= Pancrase348で、松井斗輝が矢澤諒と対戦する。
Text by Takumi Nakamura
2月のパンクラス、5月のRoad to UFCと2試合連続でフライ級のリミットを体重超過→試合中止となった松井。一時は「自分は格闘技をやるべきじゃない」と現役から退くことも頭をよぎったが、周囲からの言葉でバンタム級転向と現役続行を決意した。バンタム級での再出発を目前に控えた松井に話を訊いた。
──試合直前のインタビューありがとうございます(取材日は11月7日)。今の体調はいかがですか。
「階級を上げてから減量が楽になったので、すごく体調がいいです」
──松井選手は2月のパンクラス、5月のRoad to UFCと2試合連続でフライ級契約の体重を作ることが出来ませんでした。前回の試合が終わった時点でフライ級で戦っていくことは難しかったですか。
「はい。もうフライ級は限界だと思った……というか、格闘技自体を辞めようと思いました。やっぱり(計量をクリアできずに)周りの皆様の期待を裏切ってしまい、自分は格闘技をやるべきじゃないと思っていたので」
──2月の試合の時点でもかなり減量がきつかったと思うのですが、それでもフライ級でRTUにエントリーしたのは、RTUのチャンスにかけたいという想いがあったからですか。
「それはありますね。もしRTUがなかったら、あの時点で階級を上げていたと思います」
――一度は引退も考えた中で、そこからもう一度試合をしようと決断した理由は何でしょうか。
「周りの人たちが落ち込んでいる自分を励ましてくれて『階級を上げて、もう一回やれよ』と言ってくれたのですが、正直、自分のなかでは葛藤がありました。でも同門の選手たち、例えば鶴屋怜は年下なんですけど、UFCで戦っていて、しかもそこで勝っている。やっぱりああいう姿を見ると刺激になるし、練習仲間の試合を見るたびに、もう一度戦いたいという想いを捨てきれなくて。それでバンタム級で戦うことを決めました」
――松井選手にとっては嫌な記憶だと思いますが、SNSでは批判的な言葉が多かったと思います。でも周りの人たちを松井選手の復活を後押ししてくれたのですか。
「そうですね。ああいうことをやってしまって、SNSで色々と言われることは当たり前だと思います。でも身近な人たちは自分のことを心配してくれて、励ましてくれました」
──引退から気持ちを切り替えて、階級を上げて試合の準備をしていく中で、どんな変化がありましたか。
「やっぱり減量がきつくない分、練習に集中できて、精神的にもすごく楽で、ここまで来れました。フライ級時代は対戦相手のことはどうでもよくて、体重のことしか気にしていなかったんで。だから体の負担も大きかったですし、精神的にもキツかったです」
――今回はどのくらいから体重を落としたのですか。
「通常体重が70キロ弱くらいなので、8キロほど落とすことになります。今日の時点で残り2キロを切っているので、体重調整を続けて、最後は水抜きするかしないかでリミットをクリアできると思います」
──減量のことを気にしなくてもいい練習は両質ともに変わってきますか。
「はい。以前は練習で疲れていても、そこからまた走ったりして、かなり(心身ともに)削れていたんですね。練習に来た時点でヘロヘロだったこともあるし。でも今回は相手のことだけを考えて、対策もしっかりできています」
──直前まで対人練習・対策練習もできましたか。
「はい。一昨日までしっかり練習ができたし、それも体重を落とすためじゃなくて、対策のための練習ができました。今回から階級を上げて、減量が楽になった分、しっかり試合のことを考られるし、2回計量を失敗しても変わらず応援してくれる方もいて、そういう人たちに恩返しできるように頑張ろうと思っています」
──今回の試合に向けてはどんなことを意識して練習してきましたか。
「相手は打撃系で、試合も打撃の展開が長くなると思うので、打撃の練習を多くやってきました」
──矢澤選手を攻略するイメージはできていますか。
「一発のパンチ力はあると思うんですけど、他は全部自分が勝っていると思うので、やりやすいとは思います。もちろん試合展開によっては寝技をやるかもしれないし、結構自分の中では寝技の成長も感じているので、寝技の展開になっても大丈夫だと思います」
――今回はまさに再出発の一戦ですが、ここからは何を目標に戦っていきたいと思いますか。
「今は次の試合のことしか考えていないです。今の自分は何も言える立場ではないので。次の試合に勝てば(パンクラスの)ランキングに入ると思うので、そこから勝ち続けてパンクラスのベルトを獲りたいです」
──イメージ的にはバンタム級で再デビューという感覚ですか。
「はい。本当にゼロからのスタート、一からのやり直しだと思っています」
――まさにリスタートとなる一戦、松井選手はどんな試合をしたいと思っていますか。
「みなさんのおかげでこうしてまた戦うという決断が出来たので、5分3R、全力で戦うことで少しでもみなさんに恩返しができると思っています。そういった試合を見せたいです」