【Bellator CS2024#02】待望の海外進出=パリでベルナウイ戦、矢地祐介「近い距離の方が安全じゃん」
【写真】終始楽しそうだった矢地。ベルナウイを相手に、見て、殴ることができるか(C)MMAPLANET
17日(金・現地時間)、フランスはパリのアコー・アリーナで開催されるBellator Champions Series 2024#02に矢地祐介が出場し、マンスール・ベルナウイと対戦する。
Text by Manabu Takashima
RIZINで日本中に認知されるファイターとなった矢地だが、PXCからUFCを目指した若き日々があった。前UFC世界フェザー級王者アレックス・ヴォルカノフスキーに敗れ、その道を断たれた矢地だが、9年を経てなそ北米の強豪との対戦という想いを持ち続けてきた。
Road to UFCの選考に漏れ、3連敗や2度の連敗もRIZINで経験している矢地は、現在3練習中でベルナウイの地元パリでBellator CSに出場が叶った。33歳、今もMMAが楽しくてしょうがなく、成長過程にある矢地の海外進出、国際戦への拘りと勝利を手にするための悪癖の克服について尋ねた。
──試合まで10日を切りました(※取材は8日に行われた)。まず、このタイミングでPFL傘下のBellator Champions Seriesで戦うことを決めた背景には、どのような想いがあったのでしょうか。
「北米に挑戦にしたいというのはRIZINの方にも、2年ぐらい前から言っていて。RIZINはBellatorと仲が良いからBellatorの選手とRIZINで戦いたい。機会があれば、米国で戦いたいとずっと伝えていました。でも、俺の結果が振るわない時期もあり、なかなかそういうチャンスがなかったんですけど、ここ最近の結果とか色々とタイミングが重なった形でオファーを頂いた時は、もう二つ返事でした」
──今のMMA界の構造にあってRIZINとBellatorと掛け持ち云々という言葉を聞くと、大抵の選手に対しては『そんな立場じゃないだろ』というのが自分の本音でした。Bellatorのビジネスに役立たないとチャンスはないわけで。なら向うでの戦いに専念して名前をあげる気概がないと、勝ち残ることができるかと。
「う~ん(苦笑)」
──ただ矢地選手に関しては、Road to UFCを狙って実現しなかった過去があります。純粋に強さを求めているなかで、パリでマンスール・ベルナウイと戦う。アッパレだと感じます。
「北米メジャーに出たいとずっと思っていました。僕の階級では強いヤツがゴロゴロいるので。最近、自分自身で実力もついてきたと思っているし。本当に良いタイミングだったと思います」
──実力がついてきた。これはもう、矢地選手の試合前のインタビューで恒例となっている言葉のようにも感じられますが(苦笑)。
「アハハハハ。ちょっとぉ……でもケージやリングでは『アレ?』ってなるって、言いたいんですよね(笑)」
──その通りです(笑)。
「絶対にそう言われると思いましたよ。まぁ、そうなんですけどね(笑)」
──2月のLANDMARK佐賀大会では、解説の金原正徳選手がダメだしのオンパレードでした。矢地選手のこと、丸裸にしていましたね。
「ハハハハ。前回の試合で学んだことって大きいです。打撃の面では。皆が知っているように体を傾けて、顔を背けて打つ癖だとか──そこがやっぱり出てしまって。でも、1Rの途中から修正できました。現場のリアルななかで、感覚を得ることができた。それは凄く良かったと思います」
──相手の攻撃が見えるようになった。そこから如何に攻撃に出るのか。相手が見えるようになると、まず身を守る。だから攻撃に出られない。そういうこともMMAではあるかと思います。
「そこはねぇ……。見えて反応ができることで手が出ない。なんて、俺はビビりなんだろうって思った時期もありました。あの白川ダーク陸斗戦でも、そこがあったような無かったような。曖昧な感覚でしたね。前回の試合は自分の反応の良さがあって、そのなかで悪い癖をだしちゃいけないという部分で、『やればできんじゃん』という自信にはなりました。
試合でもちょっと勇気を出して……じゃないけど、頑張ってじっと見つめれば、『パンチって見えるじゃん』みたいな。そこの壁を、ポンと飛び越えることができました。試合というプレッシャーのなかで、特に相手は捨て身でやってくる。パンチに自信がある選手だし、なかなかの圧力でした。でも、そういう選手の攻撃を見ることができた。『できるじゃん』ってなれたのは、デカいです」
──その自信は持続できているのでしょうか。
「それが、この1、2カ月で自分の目の良さがディフェンスとか、打撃の攻防において凄く生きるじゃんって思えるようになったんですよ。それこそ2月の試合の経験が生きて、練習でも落ち着いて対処できるようになったし、何よりも近い距離って安心して良いじゃんって。自分のなかでの常識がひっくり返って『近い距離の方が安全じゃん』ってなりました」
──おぉ。
「それぐらいまで、来ることができているんで。もちろん、あの距離に入ったらパンチを貰うし、危ないです。気を張らないといけない。今までは、その前段階で嫌がって下がり、心地良い距離を保とうとした結果、詰められてバランスを崩す。そして、相手の一番良い距離でパンチを被弾しちゃう。その思い切り受けていたパンチも、ちょっと前に出ると……貰うのは良くないのですが、こんな感じなんだと自分のなかの常識がポーンとひっくり返って。
下がらないで、前に出た方が良い。俺は最近、組みに自信を持っているので、なおさら前に出た方が良いという風に今はなれています」
──それにしても、嬉しそうに話しますね(笑)。
「いや、楽しいです。今は本当にMMAをやっていて楽しい。ゲームをやっている感覚なんです。どんどんアイテムをゲットできている。そんな感覚がずっと続いているから」
──ベルナウイと戦う上で、その感覚がどう生きるのか。どのような印象を持っていますか。
「ある程度トータルファイターで、手足が長い。昔の方がイケイケだったと思います。Road FCで戦っていた時とか。最近は打撃の方は、そんなに勢いがないですよね。でも下からのスイープには自信を持っている。あのジョンウェイン・スイープってやつですね。それでも全体的に粗めかなぁ、組み技も」
──おお。別名ギグラー・スイープの名手も、組み技が粗いと。
「八隅(孝平)さんとも研究しているのですが、そのスイープにしても手札は多くない。そこを封じ込むことができる相手、ブレント・プリマスとかには勝てなかったじゃないですか」
──ハイ。さきほど組みに自信がついたと言われていましたが、テイクダウンを取ると相手の土俵になるかと。
「まぁ、大半の選手が彼のスタイルが分かっていても、あのスイープの餌食になっていますよね。だから触ってみないと分からない。そこに関しては、現場合わせです。手足が長いから、想定以上に包み込まれているのだろうと思います。でも、そこのところは正直分からないです。
だから住村(竜一朗)さん、イゴール(タナベ)とかサイズがベルナウイに近い選手と練習をして。背が高い選手と戦うと、アジャストが必要になります。テイクダウンを狙っても腰の位置が違う。四つの展開でも、肩の位置が違う。その辺りの感覚の違いの擦り合わせはやってきました。
もちろんスイープをされないことは大切ですけど、された時の準備もしているので」
──そういう相手に、どのように戦うつもりでいますか。
「何があろうと、最近の僕の戦いをぶつけるだけです。打撃の攻防をして、テイクダウンして絞める。そういうプランは一応あります」
──では、ベルナウイ戦後の青写真は?
「ここを越えたら、継続参戦をしたいです。やっぱり憧れが強いんで。それにまだ本国、米国の試合じゃない。米国の地で戦いたい。なので、この試合に勝って継続参戦をしたいです。とにかくベルナウイに勝たないと始まらないので」
──勝敗でいえば勝利が絶対。と同時に成長した姿を見せて欲しいです。
「そういう意味では前回ズッコケた分、今回は出したいです。誰よりも僕自身が練習してきたことを出して、成長を試合で見せたい。ホントに。最初の10秒、見逃さないでください。『あっ!!』ってなると思うんで(笑)。そこで『変わったぞ』となるのか、『また始まったぞ』となるのか」
──アハハハ、自分で言っちゃいますか(笑)。
「確実に1ミリずつ成長していますから」
──1ミリで間に合いますか。目標に?
「ホントだ、1センチぐらいは(笑)。でも1ミリの成長を見届けて欲しいです。深夜になっちゃうと思いますけど、ライブで視て欲しい。今回のテーマは根性と魂。そういう部分を見てもらえたら嬉しいです。
あと金原さんに解説をしてもらって、今度はお褒めの言葉を貰えるように戦います」
■視聴方法(予定)
5月18日(土)
午前0時30分~U-NEXT