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お蔵入り厳禁【RIZIN LANDMARK09】武田光司、萩原戦を振り返る「ケンカ四つでもあえて内側に回った」

【写真】階級変更により、武田の戦い方はより繊細に、そして幅が広がった(C)RIZIN FF

3月23日(土)に神戸市中央区の神戸ワールド記念ホールで開催されたRIZIN LANDMARK09。武田光司は萩原京平から判定勝利を収めた。
Text by Takumi Nakamura

武田にとってはライト級からフェザー級に階級を下げての初陣。1Rに強烈なローブローで試合続行も危ぶまれるアクシデントに見舞われたが、再開後はその影響を感じさせない戦いぶりで萩原から勝利を収めた。

万全ではない状態ではあったものの、新たに習得したステップ&ムーブメント、そして本来持っているレスリング&コントロール力など、武田がこの試合で何を見せたのか。武田本人がそれを語ってくれた。


――フェザー級に階級に落として最初の試合、ローブローによるアクシデントもありましたが、萩原選手から判定勝利を収めました。

「ローブローをもらっちゃったので何とも言えないところもありますが、反省点も多い試合でしたね。ただ今回の試合からタケ大宮司さんにムーブメントや足のステップの指導を受けていて、これまでは打撃の距離で直線的に正面にいることが多かったのですが、そうならないように練習していたんです。そこは試合で出せたかなと思いますね」

――試合展開を順に振り返ると、1Rは非常に武田選手の足が動く=ステップできているように思いました。あれは練習していたことだったのですか。

「はい。MMAにはレスリングの要素もあるけど、レスリングとは別競技なので(MMAでは)どうしても打撃を被弾することがある。じゃあ被弾しないためにどうしたらいいかと言うと、ステップや距離感を磨かないといけない。だから今回はステップして、ステップして…相手の打撃を被弾しないようにして、自分の体系も活かしてタックルにいく練習をしていました」

――レスリングベースの選手が階級を落とすという部分で、もっとプレッシャーをかけてガツガツ組んでいく試合もイメージしていました。

「もちろんそういう練習もやっていたのですが、ただ突っ込むだけじゃダメだなと。BRAVEの練習に加えて、ステップの練習をしたり、BRAVE以外で色んな選手と練習させてもらって、勝つために必要なことを教わっているので、ファイトスタイルも変えているんですよ。もちろん試合になったら突っ込む部分もありますけど、これから試合を続けていくうちに、どんどん変わっていくと思います」

――そして1R中盤にケージ際でローブローを受けてしまいました。かなり深くヒザ蹴りが入って、試合続行は難しいと思って見ていました。あの時はどんな状況だったのですか。

「僕もヒザ蹴りをもらった瞬間は『無理だな…』と思いました。あの場面を見て『ローブローをもらったら四つん這いになってうずくまる』とか言ってるヤツもいましたけど、僕が左ヒザを上げたタイミングで下から左ヒザを突き上げられて、あの瞬間は目の前が真っ暗になってドロップアウトしちゃったんです。あれで完全に集中力が切れて、吐き気も凄くて。とりあえず審判団に『1回椅子に座ってください。そうじゃないと試合が止まってしまいます』と言われて、なんとか椅子に座ったら歓声が起きちゃって。そんな状況になったらやらないといけないじゃないですか(苦笑)。それでなんとか続行しました」

――ちなみに試合後はどういう状態だったのですか。

「試合が終わってすぐゲロ吐いたし、病院に直行しました。エコーで検査して異常はなかったんですけど、数日間、血尿が続いてやばかったです」

――再開後は武田選手がレスリング力を発揮して萩原選手をコントロールし続ける展開でしたが、一度組めば相手をコントロールする自信はあったのですか。

「まだまだ発展途上ですけど、あの試合で言ったら正直(コントロールは)余裕だったと思います。本当はバックコントロールから後ろに投げて踏みつけたり、一本取ることが目標だったんですけど……いかんせんチ●コが痛すぎて(苦笑)。それでコントロールするしかなくなって、ああいう展開になっちゃいました」

――コントロールすることでいっぱいいっぱいだったのですね。

「そうですね。あの状況で自分にできることの限界があれで、あれしか選択肢がなかったので、相手をコントロールして制圧して終わりにするしようと思いました」

――タイトなコントロールが出来ない状況だったとはいえ、脱力してコントロールし続けるのはすごいなと思いました。

「あのコントロールは一切力は使ってないんですよ。バックコントロールは相手にハグして抱きしめている状態なので、見ている側からするとずっと力を入れているように見えると思うんです。でも僕の場合はあえて空間を作っておいて、相手が動いたところで(空間を)締める。相手の動きによってはタイトに締めておくこともありますが、萩原君に関してはそれがなかったので力を使わなくてもコントロールできました」

――あえて空間を作って、コントロールしている感じですか。

「そうですね。相手を動かしながらコントロールするので、力は使わないです」

――その技術はレスリングから来たものなのですか。それともMMAをやっていく中で身に付けたものなのですか。

「レスリングではないですね。MMAをやりながら身に付けたスキルです」

――また試合中は柔術的な両足フックではない、レスリング的なバックコントロールでしたが、あれも意図してそうしていたのですか。

「いや、本当はバックを取ったら四の字クラッチしようと思いましたが………やっぱりチ●コが痛すぎました(苦笑)。だから今回に関して一番の課題はスタンド=打撃の対処で、自分は3連敗中なんですけど(ガジ)ラバダノフ、(ルイス)グスタボ、(トフィック)ムサエフ、全部ストライキングで負けているんです。相手に距離を制されて打撃をもらっている。今回も踏み込むまでの怖さはありましたけど、相手の打撃が当たるところには居なくて、パンチをもらったのも1発だけ。それ以外は全部見えていたので問題なかったです」

――まさにムーブメントやステップの練習がハマったようですね。

「はい。萩原君はリーチが長くて、サウスポーの僕とはケンカ四つになる。セオリーでいったら僕は外側に回ると思うのですが、僕はあえて自分の内側に回ったんです。見ている人たちからすると『武田、そっちに回ると萩原の右をもらうよ』と思ったかもしれませんが、あそこにいても打撃をもらわない距離があって、そこからドライブする練習をしていました。しかもそれが理にかなっていて、ちゃんと自分でも噛み砕いて理解していたので『これなら大丈夫だ』という確信もありましたね」

――では萩原選手の打撃のプレッシャーで下がらされていたわけではなく、武田選手自身があの距離感をとってテイクダウンに入るという作戦だったのですね。そう言われると試合の見方も変わります。

「実はそうなんです。相手の打撃を貰わない位置にいることを意識して練習していて、それをBRAVEジムの練習だけでなく、新しい拠点で新しいことをやり続けて、それが試合で出ましたね」

――対戦相手からすると打撃はステップでかわされて、一度組まれるとコントロールされる。フェザー級の武田選手はかなりの難敵ですね。

「今回は打撃は出さずに、相手の打撃を貰わないで組み付くことがテーマだったので、コーチたちと取り組んできたことが勝ちにつながったと思います」

――次の試合に向けては、どんなことを意識して練習していますか。

「それこそこの取材前もKRAZY BEEでムーブメントの練習をやっていました。今は対戦相手どうこう関係なく、オフェンスにおける足の使い方や骨盤の使い方を習っています」

――そこも踏まえて、次の試合ではさらにパワーアップした武田選手が見られそうですね。

「今回は打撃をもらわないことがテーマでしたけど、やっぱりインファイトもやりたくなるんですよ。実は萩原君のストレートを貰った時、一瞬このままインファイトしようかなと思って。でも今回はコーチたちとやったことをしっかりやろうと思って我慢したので、いつかは暴れるスタイルも出ちゃうと思います。やっぱり僕は久米(鷹介)選手とやった時の距離感がすごく好きなんで」

――ステップを使う戦い方を覚えたことで戦いの幅も広がりましたか。

「はい。伸びしろもまだまだあると思うし、フェザー級に落として減量も上手くいったので『武田はバテる』とか色んな声もありましたけど、バテることもなかったです」

――フェザー級はRIZINでも激戦区の階級ですし、その戦いに武田選手が入ってくるということで、楽しみにしているファンの人も多いと思います。その人たちにメッセージをいただけますか。

「今回の試合で次どうすればいいのかもよく分かりましたし、他のフェザー級の選手たちからすると、僕は間違いなく嫌なファイターになると思うので、これからフェザー級を面白くします」

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