【Road to UFC2024Ep03】ワンマッチでキ・ウォンビン戦、雑賀ヤン坊達也「当て感が確信になりました」
【写真】4月の立川大会で、パンクラスファンに必勝宣言のヤン坊(C)MMAPLANET
18日(土・現地時間)&19日(日・同)に中国は上海のUFC PIで開催されるRoad to UFC2024。2日間で4エピソードが実施されるアジア発、世界最高峰への道──その2日目、エピソード03のワンマッチで雑賀ヤン坊達也が、キ・ウォンビンと戦う。
Text by Manabu Takashima
3月にアキラを衝撃的なハイキックKOで破り、ライト級KOPとなったヤン坊の下に多くのオファーが舞い込んだ。そこで選んだのが、Road to UFC――世界最高峰へのルートだった。
サラリーマンをしながら、強さを求めてきたヤン坊が掴んだ「ラストチャンス」はオーバー30の日本人選手にとって「世界への道を切り開く――戦いだ。
――3月にライト級KOPとなり、Road to UFCのワンマッチ出場。ヤン坊選手も海外を口にしてはいましたが、どこかUFCはないという空気だったかと思います。そのなかでひそかにRoad to UFCを狙っていたのでしょうか。
「実はチャンピオンになってから、色々な話が入ってきました。RIZIN、Bellator、そして8月にコンテンダーシリーズという話もありました。どれにしようかという話になった時に、マネージメントには8月まで待つなら6月ぐらいに試合がしたいという風に伝えていて。そうしたら『Road to UFCのワンマッチで戦うか』という話を貰ったんです」
――つまりRIZINやPFL傘下のBellatorでなく、コンテンダーシリーズを希望したということになります。
「一気に色々な話が舞い込んできて、頭がパニックになったような感じでした(笑)。そんななかで、やっぱり……世界最高峰に一度でも良いから触れてみたい。そういう気持ちがありました。それでも8月だったので、今回Road to UFCの話が来た時は『人生最後のチャンスかな』と思いました」
――とはいえRoad to UFCは予選です。PFL傘下のBellatorであれば本戦出場だったかと。
「そうだと思います。そこは凄く悩みました。でも、今、自分でも乗っているなっていうのがあって、とりあえず挑戦してみるのもありかと。やっぱり、世界最高峰に挑めるチャンスは年齢的にもないかと思っていたので……。そのなかで舞い降りてきたチャンスなので、これは何かあるのかと」
――とはいえ優勝して契約が確定するトーナメント戦ではないです。
「ハイ。でもワンマッチから契約にたどり着いた選手もいますし」
――一昨年はウェルター級ワンマッチ出場のチャン・ミンヤン、昨年はトーナメントが実施されているフライ級ワンマッチで2連勝したニャムジャルガル・トゥメンデムベレルがUFCと契約を果たしました。
「そうですね。今、考えているのは今回の試合に勝って話が進まなかったら8月のコンテンダーシリーズに出して欲しいと伝えるつもりです。もしくはRoad to UFCの準決勝大会のワンマッチだとか。せっかくUFCへのルートを登ることができているので、ここで機会を得て前に進もうと思っています。とにかく5月に勝つことが先決ですけど」
――表情も相当に引き締まっていますね。
「なんか、気合が入ります。そこまで実感が持てていないので浮つくこともなく練習できていますし、4月のボス(長岡弘樹DOBUITA代表)の試合が本当に凄まじくて。あの背中を見せてもらったので、応えないといけないと肝に銘じています」
――ただし、あの激闘後だけに長岡選手もなかなか練習に戻ってこられないのではないですか。
「ちょうど、この前の日曜日から組み技の練習は再開されています(※取材は7日に行われた)。今回はボスも試合の準備があったので、いつも通り練習させてもらっているソニックスクワッドで安田(ケン)さんに色々とお願いしたりしてきました」
――そのなか「サラリーマンでもやれる」という言葉が増えたヤン坊選手ですが、Road to UFCに向けても朝と昼は働きながら調整をしていると。
「そうですね、そこは変わらないですね。8時から定時は5時ですが、ほぼ毎日のように残業で7時まで仕事をしています。家に戻ってきて、10分ぐらいで支度をしてジムに行く感じですね」
――パンクラスの煽り映像で、足場で作業をしている様子が映っていたのですが、とび職をされているのですか。
「ハイ。もう10代からやっていて、去年から役職につきデスクワークが主になっています。現場は職人さんに任せているのですが、今でも手が足りていないときは自分で足場の組み立て、解体に回っています」
――いやぁ自分は大学の頃たった4年ほどですが、現場を経験していて。足場を組んでいたのですが、あの仕事をしていてよくMMAの練習を続けることができましたね。
「練習はしんどかったですね(笑)。でも、今は手配とかの方に回って頭を使い、精神的に大変になりました(苦笑)。以前は体がきつかったのが、今は頭がぼぉっとしている感じです」
――そこを乗り越えてもらって、こういうとアレですが……今のヤン坊選手ならキ・ウォンビンにはしっかりと勝ってほしい。それが本音です。
「自分も全く同じ気持ちです。勝たないとダメな相手です。経験豊かなファイターですが、打たれ弱い部分もありますし。倒して、倒されてという試合をして。少し怖いのは、フィジカルですね。組みのスタミナもありますし、ここは組んでみないと分からない。そこは怖いですね。
でも江藤(公洋)選手のように器用なケージレスリングをやるわけではないですし、去年の12月に粕谷(優介)選手と3Rを戦ったことも自信になっています。やっとMMAを見せることができたので、『できるんだぜ』って(笑)。あの試合ができるから、倒しにもいけます」
――では、どのような試合を上海のPIで見せたいと思っていますか。
「いつも通りですね。いつも通りの試合をすれば、負ける相手ではないです。一瞬でも、隙を見せたらいきます。そこを打ち抜きにいきます。なんか前回のアキラ選手に勝った試合で、自分の眼の良さを確信できるようになったんです」
――おぉ。
「当て感という部分が、確信になりました。ここで、このタイミングで打てば当たるという感覚になる。そうすると相手が倒れる……みたいな」
――それが欧米列強を相手にした時に、どうなるのか。本当に楽しみです。
「そのためにも、ここで負けるわけにはいかないです。KO勝ちが僕の代名詞になっているので、しっかりと倒しにいきます」
――UFCで勝ち進み、ファイター一本になるということを考えることはありますか。
「いえ、UFCで結果を残して家のローンを返せるようになれば良いなというのは考えますけど(笑)」
――アハハハハ。
「僕としては仕事を辞めることは考えていないです。仕事をしていて、どこまで行けるのか。それを皆に見てほしいと思っていますし。会社の人たちも、凄く応援してくれます。試合は有給の範囲でこなしていきますが、今日なんかでも急なメディカルが入ると、会社の方も会議よりもそっちを優先させてくれるなど、大目に見てもらっています(笑)」
――以前のヤン坊選手は、試合前は恐怖に押しつぶされそうな感じでしたが、今は凄くリラックスしているように見えます。
「そこもチョット吹っ切れてきました。自信が、そこを上回っています。ただリラックスして戦うとかは言えないですし、気だけは絶対に抜かないです」
――押忍。では、改めてRoad to UFCに向けて意気込みのほどをお願いします。
「ここでしっかりと勝って、戦うサラリーマンがどこまで行けるのか。そこを楽しみに見てほしいです。しっかりとKO勝ちをして、UFCとの契約を勝ち取りたいです。そうならなくても次の機会を手にして、この年齢でもUFCへの道はあるんだぞ――と切り開くつもりで戦ってきます。キ・ウォンビンも自分もラストチャンス。やってやりますよ」