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【DEEP118】イ・ソンハに挑戦、江藤公洋「面白い試合云々っていうなら、ちゃんと頑張って逃げてね」

【写真】穏やかな自信(C)MMAPLANET

本日9日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP118 Impactで江藤公洋が、DEEPライト級王者イ・ソンハに挑戦する。
Text by Manabu Takashima

レスリングからMMAに転向した当時から、そのポテンシャルの高さは認められてきた。しかし、その強さを発揮しきれない。試合になると、気持ちで前に出られないということも指摘された。そして勝てば、コントロールで地味というレスリング&コントロールファイターに付きまとう問題も、江藤は持ち続けてきた。

その江藤が2020年9月に青木真也に完敗を喫して以来、ここまで5連勝でタイトル挑戦権を獲得した。ハマれば超絶に強かった江藤が、自分の嫌な展開でも試合を創れるようになった。その背景に指導、中村K太郎のマンツー・スパーが存在した。


──HEARTSでレスリングクラスを持っていると聞いて見学させていただいたのですが、MMAグローブを着用してMMA用のレスリングを指導されていました。

「そうですね、大沢さんからMMAのレスリングとグラップリングを重点的にプロ選手に指導してほしいと2カ月ぐらい前に尋ねられて、やらせてもらうようになりました。HEARTSの底上げという目的もあって、始めた感じです。ピュア・レスリング、ピュア・グラップリングではなく、MMAにアジャストした形でやらせてもらっています。

ピュア・レスも大切なのですが、やはり組んだ距離でMMAの間合いと違ってきます。間合いの設定が違うと、切り崩し方も違ってくるので。そういうところでMMAレスリングの指導を心掛けています」

──MMAレスリング=壁レスとなりがちですが、今日はそうでない場所での指導でした。

「壁も大切です。でも中央で相手を制することも大切で。壁だけでなく、両方でやっていますね。中の動きと壁の動き、壁という要素が加わってもベースは共通しています。中央でやることを、壁を使ってやりましょうという意識を持っています」

──しっかりと伝える言葉も持たれていました。

「パーソナルの指導なども続けてきて、その時に自分だけの視点ではなく、色々な視点があることを頭に技術を修得するようになりました。一つのアプローチだけでなく、多方向の視点を持つことが大切だと思うと、指導する時に色々なアプローチから説明できます。そこがファイターとしての自分の成長に繋がっていると思います」

──指導することで、自ら成長できたと。

「色々な視点で見ることで、崩し方や動きに対してアプローチの種類が増えました。特に相手の特性も理解できて、思考が分かるようになったことが大きいです」

──なるほどぉ。指導で得たことを自らの練習で試す?

「ハイ。それで自分が使う場合は、無理だと判断して切り捨てることもあります。でも、指導するうえで切り捨てる知識はない。それを知ることでも、自分の成長になります」

──現在、5連勝です。その指導をすることが、好調の要因にもなっていますか。

「青木さんと試合をするまで(2020年9月)、ただ練習をしていると強くなるという風で考えていなかったです。あの敗北から色々と変えないといけないと思うようになりました。メンタル面でも変に気合を入れるとか、良いところを見せようとして逆に迷ってしまって普段通りの力を出せない。そんな自分を認めたくなかったのが、あの試合で何もできないことで──そんな自分が恥ずかしくて、格闘技を辞めた方が楽だという気持ちにもなりました」

──ハイ。

「でも楽な方を選ぶと、それは簡単ですよね(笑)。あそこで自分の色々なモノを壊して自分を創りなおした方が人間として成長できると思って、ここまで取り組んできました。5連勝の裏で試行錯誤して、なかなか上手くいないこともありました。そのなかで一つ一つを噛み砕いて、検証することでここまで来ることができました。今もまだ過程ですけど、今の自分をぶつけることが凄く楽しみです。日常を切り取った部分で、今回の試合では皆に見て欲しいという気持ちがあります」

──RIZIN LANDMARKの雑賀ヤン坊達也戦と、DEEPの北岡悟戦。前者の方が良い試合だと思われるかと思いますが、個人的には後者の方が恐怖とも向き合っていた感があります。

「そうですね……落とせないという気持ちもありました。それが自分の弱さだと思います。決め切れないところは課題で、でも試せたことはプラス。まだ僕は完成していないので。怖さも自分のなかで受け入れていますし、やってきたことをやる。回りの目を気にすること……そこも大切なのですが、そこも含めて自分のやってきたことが出せるか。練習の方が強い自分がいる。そこに近づくために、もがいている自分が今もいます。それが徐々に良くなっているので。人にチヤホヤされたくて格闘技をやってきたわけじゃなくて、強さを追求するためにやっている。そこはブレないようになりました。良い試合だった──で良いのか。積み上げて来たものを出す方が、大切だと自分は思っています」

──その積み上げるなかで中村K太郎選手とのマンツーマンのトレーニングの意味合いが大きいと聞いています。

「ハイ。自分が成長できる一番のパートナーです。K太郎さんとの練習は思い描いたことできない。テイクダウン、スクランブル、打撃とコントールできないから、際の攻防の練習ができる。

打撃、組み技、寝技とどの局面でも練習ができて、K太郎さんという自分が日本で一番強い選手とやれている。そこが自分の自信になっています。試合より厳しいことをやっている。相手より強い選手とやっていることは絶対ですし。

試合なので、一発貰うこともある。でも、そこ以外だったら絶対に競り負けないという気持ちになれました。どんな展開でも引かない。気持ちの強さは、K太郎さんとの練習で身に着けられたものです。練習で試合よりしんどいことをやって、試合でしんどいことを相手にさせます」

──そのなかでDEEPライト級王座に挑戦。チャンピオンは韓国のイ・ソンハで国際戦となりました。

「流れが変わってきましたね。対日本人でなく、今だと対アジアに。それって大切なことだと思います。だから自分はONEにチャレンジしたし、対日本人でなく対世界を見据えて色々な技術を修得してきたので」

──ではイ・ソンハの印象を教えてください。

「手足が長く、打撃も組み技もできる。だから、面白い。このところ、勝ってホッとすることばかりで。なんか熱くなることがなかった。その点、今回はどうなるのか楽しみです。どれぐらいかは、組んでみないと分からない。勝ち筋はある程度思い描けていますが、それが実際に戦ってどうなるのか。その面白さはありますね。打撃、テイクダウン、寝技、全部で勝負したいです」

──イ・ソンハは「自分が面白い試合をするので、そこは気にしないでください」ということ言っていました。

「まぁコントロールされない自信がるからって、その後の攻防を自分ができないと思っているなら間違っています。仮にテイクダウンからコントロールができなかったら、その先を見せることができるので、それは必然と面白くなるでしょうね。

ただ僕がコントロールできてしまうと、殴り合いも何もない面白くない試合になるということですよね。じゃあ、頑張ってねっていう話です。面白い試合にしたいなら、コントロールされないように頑張って。そうなっても、その先を見せるから」

──ブラボーです。

「だって動けない奴が悪いわけで。動けてスクランブルの攻防まで持ち込めば良いじゃないですか。なんでコントロールできているこっちが、わざわざ動かないといけないのか。動けない、お前が悪いんだよってことですよ。コントロールされて、時間がきてブレイクって──それは審判に助けてもらっているだけ。まぁ、面白い試合云々っていうならちゃんと頑張って、逃げてねって」

──長い年月を掛けて、一皮剝けた。言葉にすると簡単になってしまいますが、凄く重みのあることだと感じました。

「変われたかな……ただやっていれば結果が出る。そんな風に思っていましたけど、それじゃあ体が強くなるだけ。そして色気をもって戦って、自分を出せない。そういう弱い自分を飲み込んで、克服するにはどうするかを考える。そこで練習環境、練習内容を組み立てることができてきました。強くなるための過程にあるなかで、今回の試合でどこまでできるのか。やっぱり、そこは楽しみです。今回のタイトル戦は、対アジアに到達しているのか。その査定試合になります」

■視聴方法(予定)
3月9日(土)
午後5時45分~YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ、U-NEXT、サムライTV

■ DEEP118計量結果

<DEEPメガトン級王座統一戦/5分3R>
[正規王者]ロッキー・マルチネス:108.5キロ
[暫定王者]酒井リョウ:106.9キロ

<DEEPフェザー級選手権試合/5分3R>
[王者]神田コウヤ:65.7キロ
[挑戦者]青井人:64.7キロ

<DEEPライト級選手権試合/5分3R>
[王者]イ・ソンハ:70.3キロ
[挑戦者]江藤公洋:70.35キロ→70.15キロ

<バンタム級/5分3R>
福田龍彌:61.5キロ
雅駿介:61.7キロ

<フェザー級/5分2R>
五明宏人:66.2キロ
木下カラテ:66.1キロ

<ライト級/5分2R>
川名 TENCHO 雄生:70.55キロ
倉本大悟:70.8キロ

<バンタム級/5分2R>
平松翔:61.65キロ
魚井フルスイング:61.2キロ

<バンタム級/5分2R>
力也:61.6キロ
小崎連:61.55キロ

<アマチュア・フェザー級/3分2R>
信原空:66.05キロ
菅涼星:66.15キロ

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