【Fight&Life & Jr.BORDER】あぁ、素晴らしきかな。夏休みの1日 Jr BORDER Act.23
【写真】子供達の頑張りを支える、父兄の情熱。日本格闘技界のロールモデルといえる大会だった (C)MMAPLANET
23日(水)に発売されたFight&Life#98で、8月11日に神戸市立王子スポーツセンターで開催されたキッズ&ジュニア修斗ワンマッチ公式戦神戸大会=Jr. BORDER Act.23の大会レポートが掲載されている。
11月3日(金・祝)には同会場にて、Jr.BORDER ACT.24 championship 2023:第7回全日本キッズ/ジュニア修斗選手権大会も開催される。キッズの格闘技会場の悪しき、あるあるがない大会は如何に運営されるようになったのか。
キッズの大会、習い事は格闘技でなくとも父兄のサポート、それもハードワークと表現しても過言でない支えがないと実現しない。そのようなキッズ大会を10年も行って来たJr. BORDERを主宰する北川純ゴンズジム代表の想いを知って欲しく、ここに全面掲載をさせてもらうこととなった。
宇藤彰貴&亮我の取材で、ゴンズジムを訪れた際に北川純代表が、「僕は修斗の武道的なところが好きなんです」と口にした。正直、ピンとこなかった。MMAで勝つためや、ビジネスとしてのMMA興行に武道性は必要ない。思った言葉を返すと、北川代表は苦笑いを浮かべていた。
その北川代表がJr. BORDERという小学生までのキッズ修斗、中学生のジュニア修斗をグラップリングと合体し、定期的に大会の開催に尽力していることは知っていた。
それ故に、個人的にキッズ大会が苦手なことを伝えた。翌日にJr. BORDERの取材を控えていたからこそ、事実を伝えておきたかった。
苦手な理由は以前、キッズの格闘技大会を取材した際に、指導者がコーナーにいるにも関わらず、声援や応援ではなく、怒鳴りつけている父兄が大勢いた会場の空気に嫌悪感を覚えたからだ。
審判の裁定に親の方がムキになって文句を言う。対戦相手が倒れた直後に「蹴とばせ」と揃って声を挙げた父兄を見て、キッズ格闘技とは距離を取ろうと決めた。食べて骨と内臓を作らないといけない子供たちに減量を強いる大会や競技もあり、いよいよキッズ格闘技には背を向けた。
そのような理由を北川代表に伝えると、彼は『明日のキッズの試合、ぜひ楽しみにしてください』とドヤ顔といっても過言でない表情を浮かべた。
そんな北川代表がキッズ大会を始めたのは、2013年のこと。いわゆる修斗問題を経て、アマは続いてもキッズとジュニアは取り行われなくなった。ゴンズジムのキッズ達は、それまで全国で試合に出場していた。キッズ、父兄の繋がりもあった。「大会がなくなって悲しんでいる」、「目標がなくなった」という全国からの声をゴンズジムの父兄が拾い上げ、北川代表にキッズ大会の開催を請うた。
「1人ではなきない。皆さんの協力があれば」と返答し、Jr. BORDERが活動を始めた。今もその時の父兄の皆さんが、このキッズ大会を支えている。
中学生が対象のジュニア。学年が重複する形でキッズは1~6まで、未就学児から小学6年生までカテゴライズされているJr. BORDER。
今大会がジュニアと5・6年生のキッズ6のみの開催となったのは、会場の大きさもあるが、何よりも競技運営のマンパワーとの兼ね合いが一番の理由だ。マット1面で試合を進行しなければ、現状のスタッフ数では安全も大会を実行できない。ルール、ストップの速さ、細かい階級分けも、全ては安全に競技を全うするために存在している。
加えて挨拶の声が小さいと、北川代表は子供たちにもう一度、やりなおさせる。会場内には応援、声援が起こっても怒号や審判へのクレームは一切ない。子供達はチームメイトの応援だけでなく、全ての試合をしっかりと見ている。
勝って笑って、負けて泣く。そんな子供達を支える大人たち。素晴らしい夏休みの1日を、子供も大人も過ごしていた。目指すは最強でなく、最良。だからこそ、最強を目指せる第一歩となる。
そんな最高の空気にJr. BORDERは包まれており、基盤となるのが礼に始まり、礼に終わる精神だ。そう、それこそが北川純の想う武道的な修斗ということなのだろう。
Jr.BORDER発起人・北川純
『大人が無理矢理やらせてもしょうがない』
「この大会を支えてくれているのは、Jr.BORDER発起人となった人たちで、もう子供達は成長して競技は続けていない。ゴンズジムにも所属していない。それなのに9年、10年と協力し続けてくれています。次の世代の子どもたちに『大会がなくなっても、悲しい想いをさせたくない』という想いで。本当に頭が下がります。他のジムでいえば、僕の出身である直心会系の人が多く。キッズ・レスリングの審判部長の方も、協力をしてくれるようになりました。
子供達にも『対戦相手がいるのは当たり前でなく。お父さん、お母さん、お祖父ちゃん、祖母ちゃんが送り迎えしてくれることに対し、感謝の気持ちを忘れないこと』というのは一番強調しています。『自分の試合が終わって遊びまくるな。会場にいる皆が、仲間なんや』と。そこが子供の大会では一番大切だと思っています。
そして楽しむこと。強さも目指さないといけない。でも大人が無理矢理やらせてもしょうがない。子供自身が、勝ちたくて自分で考えて強くなっています。大人が何かいうと、委縮してしまうので。もっと勝ちたい、負けたくないと思って練習するから、子供たちのレベルは上がっています。そのなかでずっと続けていると、大人の発想を越える凄い逸材が生まれると思っています」