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【UFC ESPN46】アルタミラノ戦前のティム・エリオット「平良達郎は戦ってみたい若手の1人だ」

【写真】126ポンドで計量をパスしたティム・エリオット (C)Zuffa/UFC

3日(土・現地時間)にネヴァダ州ラスベスのUFC Apexで開催されるUFC on ESPN46はメインでフライ級のカイ・カラフランス✖アミール・アルバジが組まれ、さらにもう1試合メインカードでティム・エリオット✖ヴィクター・アルタミラノ戦もマッチアップされている。

エリオットは1986年12月生まれの36歳、UFC戦績は7勝10敗で負け越している。フライ級では6勝10敗──2012年5月に初めてUFCで戦うも2勝4敗でカットされた。その4敗の相手でタイトル戦を経験しなかったのは1人だけ。UFCも本気で肩入れするまで時間を要した階級で、エリオットは常にトップと戦い続けてきた。

その彼が2度目のUFC挑戦の機会を得たのは2016年のTUFシーズン24だ。同シーズンは世界中のフィーダーショーやローカルプロモーションの王者が一同に介するという画期的な試みが現実となり、UFCをリリースされた後に獲得したTitan FCのベルトを持ってエリオットはTUFに挑んだ。

従来のTUFのようにシーズン・フィナーレがUFC本戦で組まれるのではなく、決勝までTUF内のエピソードに組み込まれ、優勝者が時のフライ級王者デメトリウス・ジョンソンに挑戦するという特別な企画だった。そしてエリオットは決勝で、修斗フライ級王者として参戦していた扇久保博正を破り優勝を決め、タイトル挑戦権を手にした。

DJへの挑戦に敗れたエリオットはUFCがフライ級の活動停止を決め、リリースかバンタム級転向という二択を突きつけられた時、後者を選んだ。結果、UFCはフライ級の再構築ばかりか、より力を入れるという転換期を迎える。ここからエリオットはデイヴィドソン・フィゲイレド、アスカル・アスカロフ、ブランドン・ロイヴァルを相手に3連敗を喫するも、UFCは彼を切ることはなかった。足掛け10年、オクタゴンの中で見せたパフォーマンス、相手を選り好みしない姿勢こそ、ティム・エリオットを世界最高峰に欠かせないキャストならしめる所以だ。

そんなエリオットをファイトウィークにインタビュー、愛すべきキャラの持ち主であることが改めて確認できた。


──ティム、日本のファンに向けてのインタビューを受けてくれてありがとうございます。とはいえ……ティム・エリオットといえばTUF24フィナーレで扇久保博正選手と戦い、彼の優勝を阻んだ存在です。それ故にファンも、ティムのUFCでの活躍をフォローしてきました。

「UFCがヒロマサとサインしなかったことが、僕には信じられなかった。だって彼に負けたアレッシャンドリ・パントージャとは契約して、準決勝までに負けている選手も一部はUFCファイターになった。パントージャなんて、今やタイトルコンテンダーだよ。ヒロマサはハウスで2番目の結果を残した。ほとんどトップだったんだ。日本のファンも彼の後ろには控えている。それなのにUFCは彼とサインしなかった。ショックだったよ」

──扇久保選手はUFCで戦うという気持ちを胸にRIZINで成功を収め、日本での知名度はUFCファイターより高くなりました。素晴しいことですが、個人的にティムと同じように『なぜ?』、『なんでや』という想いが強く残っています。

「ヒロマサだって、UFCで戦うという目標があってTUFに挑んでいたんだ。重ねていうけど、本当に信じられないよ。UFCがサインしなかったことは。そういえば、ヒロマサはベイビーが生まれたんだよね。心から祝福したい。TUFハウスで彼は、僕にとって最も親しい人間だった。今もインスタでコンタクトをとっているし、ヒロマサのことを愛しているよ」

──日本のMMA界にいる人間として、ティムが扇久保選手のことをそのように言ってくれることが嬉しいです。それにしても北米ではなかなかフライ級が認知されない時期が長く続きましたが、ようやくUFCも本腰を入れてきたように感じます。

「もう少しでUFCもフライ級を廃止しそうになっていたしね。多くの選手、優秀な選手までカットした。でもヘンリー・セフード、そしてブランドン・モレノの活躍があって最もエキサイティングな階級のなりつつある。当然、僕はそう思っているけど、ファンもそういう認識になりつつあると思う。今週末のメインイベントだってカイ・カラフランスとアミール・アルバジのフライ級だ。これって素晴らしいことで、フライ級の注目度が上がっている証だよ」

──そしてティムはUFCフライ級で15戦以上も戦い、並みいる強豪と戦ってきました。結果、勝利だけでなく黒星も積み重ねているフライ級の生き字引のような存在です。

「きっと僕は他の選手と違う選択をして、キャリアを積んできたはずだ。皆は白星を積み重ねたい。僕はタフな選手と戦いたいと思っていたから、UFCとしてもティム・エリオットは使い勝手の良いファイターだったと思う。僕自身、対戦相手を選ぶことはなかったから、ファイトIQを高くすることができた。

今も肉体的には以前と変わらず。決して、強度を増しているわけではない。だけど、強い相手と思い切りやることで、ファイトとして成長している。それに……多くの黒星を喫しているけど、ボーナスも多く手にすることができたよ。誰と当てられても減量して、計量にパスしてオクタゴンで戦うよ」

──ティムのMMAは文字通りスクランブルの連続で、動き続けています。ただし、その動き続けるのは結果論で、ティムはスクランブルの要所でフィニッシュを狙っている。そこがただアクションの多いファイターとの違いだと思います。

「これも多くの他の選手と違っている僕の有り方で……。僕は自分がマーシャルアーチストだなんて、これっぽっちも思ってない。僕はファイターなんだ。ファイトが好きで、戦うことを楽しんでいる。オクタゴンに入り、良い時間を過ごしたい。そう思って戦ってきた。それとマネーだよ。2012年からUFCで戦うようになり、最初は全く金にならなかった。

今、稼げるようになったのは試合で勝ってきたからじゃない。エキサイティングな戦いをして、ファンから試合が見たいと思われるように戦ってきた。それで十分だ。そうやってファイトマネーを手にして、家族を養うことができれば。好きなことを毎日やって、生きていけている。最高だよ」

──素晴らしいです。ところで、今回の試合前にネクスト・ジェネレーション……クリス・ブレナンのジムに移籍したそうですね。なぜ、カンザスシティからテキサス州フリスコにあるジムへ? 500マイルも離れています。

「クリス・ブレナンはMMA界のレジェンドだ。彼は誰も金儲けできなかった時代に、世界中で戦ってきた。そうそう、なぜクリス・ブレナンのジムで練習するようになったかだね。クリスは息子のルーカスと一緒にグローリーMMAフィットネスを訪ねてきたことがあって、一緒に練習していたんだ。で、ご存知のようにジェイムス・クラウスがジムを閉めることになった。その時、『俺はどうすりゃあ良いんだ』ってジェイムスに尋ねたんだよ。

そうしたら彼は『クリス・ブレナンと練習すれば良い』と言ってね。すぐにパッキングして、テキサスに向かった。ルーカス・ブレナンは最高の──そして、仮想ヴィクター・アルタミラノとしても完璧な練習相手だよ」

──テキサスに移り住んだのですか。

「いや、クリスはムービールーム、サウナ、エクササイズ・ルームがある豪邸に住んでいて、僕に寝室、食事を用意するだけでなく、ジムへの送り迎えまで車でしてくれるんだ。『これが真の意味でプロフェッショナル・アスリートなんだ』って、分かったよ。

今はクリスの家に住まわせてもらっていて、心身共に絶好調だ。これまでのキャリアで、ここまで体をケアしたことはなかった。だからこそ、その成果を土曜日の夜に皆に披露したいと思っている」

──ご家族の方は?

「娘がいて、カンザスシティでプライベートスクールに通っている。8歳だけど、彼女をプライベートスクールに通わせ続けたい。ただし娘が今、通っているようなファンシーなプライベートスクールがテキサスで見つけることができていなくて。それでも、この夏にはしっかりと将来を考えて家を買わないといけないとは思っているんだ。今はクリスの家の居心地が良すぎて、家を見つけることができていないんだよ(笑)とはいっても、どれだけファイティングを愛していても、娘が一番だからね」

──こういうと偉そうですが、当然です(笑)。でも今は離れ離れになっていて娘さんは「パパは私とファイト、どちらが大切なの?」とは尋ねてこないですか。

「彼女はファンシーなプライベートスクールに通っていることが、どれだけ良い環境なのかを理解している。それに生まれた直後から、ジムに馴染んでいた。以前、ラスベガスで練習していた時、1歳だった彼女は僕と一緒にジムにいたんだ。だから、ファイターやファイトが身の回りにあることが当然になっていて。彼女にとってファイトは全くデンジャラスなモノではない。ハグをして友達と楽しむような感覚でいるんだよ」

──では娘さんも何か格闘技の練習を?

「以前は柔術を習わせていたんだけど、小学校でジムにいるようにただ楽しみたくて、友達をテイクダウンしてしまったことがあって……。その一件があったから、柔術を辞めさせて今は体操をやっているよ(笑)」

──ただ楽しみたかったと(笑)。娘さんの理解もあって、テキサスで準備をしてきた今回の試合ですが、先ほど名前が出たヴィクター・アルタミラノという新鋭と戦います。アルタミラノの印象を教えてください。

「確か12勝2敗というレコードを残しているよね。僕と似た感じの動きをするかな。僕がUFCで戦いだした時に似ているよ。彼の動きには目的がない。何も考えずに、ただ動きたいように動いているだけだ。分かるんだよ、僕も最初はそうだったから。でも今の僕はやるべきことを理解して、動いている。まぁスタイル的には良いマッチアップじゃないかな。でも彼は僕を相手にして何一つ、やりことができないだろう」

──土曜日の夜、アルタミラノを相手にどのようなファイトを見せたいですか。

「リアル・ファンキー・ストライキングだ。ボクシングではない打撃で戦いたい。今回はあまり寝技に持ち込むことは考えていないよ。これまで見せたことはなかったけど、打撃戦でKOしたいと思う。立ち技で戦って、KO勝ちする」

──組むための打撃でなく、KOするための打撃で戦うということですか。

「テイクダウンをして戦うこともできる。でも今は打撃が絶好調なんだ」

──それはティムの新しい局面が見られるということですね。ところで今、UFCフライ級には3勝0敗の平良達郎選手が戦っています。平良選手のことを認識していますか。

「タツロー・タイラは戦ってみたい若い選手の1人だよ。とにかく試合がエキサイティングだから。今、僕はランキング11位で対戦相手を選ぶことはないから。上位ランカーでなくてもオファーがあれば戦う」

──実は平良選手はある意味、扇久保選手の後輩なんです。

「おお、2人は一緒に練習しているの?」

──ハイ、時折りですが。扇久保選手の成長に欠かせなかったファイターが、生まれ故郷に戻りジムを開いて、そこで平良選手を育てました。姉妹ジムなので、平良選手が扇久保選手の所属しているジムを訪れて練習することはあります。

「そうか。いや、楽しみだよ。打撃もできて、柔術も強い。僕が戦う相手って、いつも22歳とか23歳、まぁ25歳ぐらいまでが多い(笑)。彼らからすれば僕は年寄りだろうけど、まぁずっとUFCで戦っていれば、周りは若いファイターばかりになるのも当然だ。

今回のアルタミラのもそうだだしね。とにかく最高のキャンプができたから、今は土曜日の試合に集中して思い切り暴れようと思っている」

■視聴方法(予定)
6月4日(日・日本時間)
午前7時00分~UFC FIGHT PASS
午前6時30分~U-NEXT

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