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【Bellator295】渡辺華奈と対戦、イリマレイ・マクファーレン「サブミッション防御能力が高いのが厄介」

【写真】サンディエゴの自宅も完全にハワイ調なイリマレイ(C)MMAPLANET
                                                                                                                         
22日(土・現地時間)、ハワイ州ホノルルのニール・S・ブレイズデル・アリーナで開催されるBellator295「Stots vs Mix」で、イリマレイ・マクファーレンが渡辺華奈と対戦する。

元Bellator世界女子フライ級王者のイリマレイは、その卓越したグラウンドテクニックで一本勝ちを量産し、サークルケージの頂点を究めた。しかし、いつの間にスタンド中心で戦うようになり、王座を失い連敗も経験した。

パワーグラップリングの渡辺に対し、イリマレイもエディ・ブラボー流グラップリングは不可欠。そんな戦いを前にしてイリマレイ・マクファーレンは、自身の柔術のルーツ、過去数戦のスタンド中心の戦いの理由、そして渡辺戦に関して心の内を話してくれた。


――イリマレイ、インタビューの機会を頂きありがとうございます。10日後に渡辺華奈選手と戦いますが(※インタビューは14日に行われた)、今の調子を教えてください。

「OKよ。今はウェイトカットに集中していて。私はいつも減量が気にかかってしょうがなくて、凄いストレスで。でも、全てが上手くいっているわ」

──この試合の準備はサンディエゴの10thPlanet、チーム・ハリケーンオーサムで行ったのでしょうか。

「そうよ。しっかりとグラップリングの準備をしてきたわ」

──ホームタウンのホノルルで試合をする時も、ハワイで準備をすることはないのですね。

「ノー。私のMMAキャリアはサンディエゴでスタートを切って、ずっとこの街に住んでいるから。ハワイはおろか、他の場所でキャンプを行ったことはなくて。もし、ホノルルにチームを持っているならそうするでしょうけど、私の全てのキャリアにおいてコーチもチームも全てがサンディエゴにいるから」

──ハワイは1990年代の後半からSuper Brawlが定期的にMMAを開催し、当時からブラジリアン柔術及びMMAのジムの数は少なくなった。でもイリマレイはハワイで、それらの格闘技の経験がなかったのですね。

「ないわ。高校の時にレスリングをしていただけで。里帰りした時は少し体を動かす程度でトレーニングをすることもあるけど、しっかりと練習をすることはハワイではなくて」

──では柔術にしても、イリマレイはIBJJFのコンペティションスタイルやグレイシーの護身柔術の経験はなく、リッチー・ブギーマン・マルチネスの10thPlanet柔術、エディ・ブラボーのスタイルだけを学んできたのですか。

「そうね。だからギの柔術は、下手で(笑)。私が初めてマーシャルアーツに触れたのは、カレッジに通っている時で、MMAビギナークラスだった。ただ、体重を減らしたくてジムに行ったの。私はハイスクールの教師になりたくて勉強をしていて、競技に出たいとかプロになるっていうつもりは全くなかったわ。

初めてクラスに出て、コーチのマノロ(ヘルナンデス)が『いいよ。また練習に来て、続けるべきだ』って言ってくれて。その言葉に乗せられてしまったわけよ。それから柔術やボクシングのクラスに出るようになり、すぐに試合で戦うようになった。ただワークアウトのつもりでジムに行ったのが、アクシデント的にこのジャーニーを始めるきっかけになった形ね(笑)」

──イリマレイのMMAを始めてみた時、こんなにエディ・ブラボーの技術をMMAで使う選手は見たことがないと思いました。正直、エディは自身のメソッドをMMAで有効な柔術だと言っていましたが、彼が推してきた男子の選手はその効果を余り見せられていなかった。彼らより、イリマレイはずっと10thPlanetのテクニックを有効活用していました。自身でエディの10thPlanetの技術は、IBJJFスタイルの柔術よりMMAで効果的だと思いますか。

実はコンバット柔術の世界チャンピオンでもある(C)EBI

「私たちのスタイルはサブミッション・スタイル、いつでもフィニッシュを狙うことができる。

でも、こうやって質問されて初めて、私が10thPlanetだけ練習してきた事実に気付かされたわ。10thPlanetで練習で一緒に練習している選手も、IBJJFスタイルの下地がある選手ばかりだし。

私はキャリアを通してラバーガードを使い、珍しいファンキーな動きで可能な限りの成功を手にしてきた。でもね、そういう柔術のスタイルについてはホイス・グレイシーと話したことで、私のなかではクリアになっているの」

──ホイスとはどのような話を?

「私ね、ホイスに10thPlanetのことをどう思うのかを質問してみたの。そうしたらホイスは『家を建てるようなものだよ。基礎工事があって、柱を立てる。そうやってできた家の壁をどんな色に塗るのかってことなんだ。どこに個性がでるか。それは柔術も同じだよ。10thPlanetも、他の柔術も同じ下地がある。そこから個々のスタイルとして発展したに過ぎない』と答えてくれたの」

──おお、素晴らしいですね。そもそもエディ自身が、ジャンジャック・マチャドの黒帯でグレイシー柔術の本道で黒帯を巻いているわけですからね。

「私はそんなエディ・ブラボーがクリエイトしたコンセプトが大好きで、MMAを戦う上で保障になってくれる。特にガードポジションを取ったときにはね。トップの相手をコントロールする術があるから。私はラバーガードからのサブミッションでベルトを手にした。だから私にとって10thPlanetの技術は絶対だけど、人それぞれが何を選択するのか。それは自分に合った柔術を使えば良いと思う」

──とはいえ、最近のイリマレイは積極的にガードワークを試合で使っていませんね。立ち技が増えたように思います。

「そうね。ヒザの問題ね。高校時代に2度手術していて。これまで3度もヒザの手術を受けてきたから、過去4試合はグラウンドに行ったり、レスリングをすることを避けてきたの。でも、そのおかげでスタンドのレベルアップに集中できたし、それはそれで良かったと考えているわ。

選手なら皆、ケガを経験する。それからは、それに合わせて戦っていくモノだから。でもね、今回の試合に向けてヒザは凄く調子が良かったから、最初に言ったようにグラップリングの練習に多くの時間を割くことができたわ。カナはこの階級でベストグラップラーの1人だから、今回は組み技が重要になってくることは間違いない」

──そこが非常に興味深いです。渡辺選手の寝技は柔道の抑え込み、そしてトップゲームが素晴らしい。パワフルな寝技に対し、イリマレイのフレキシブルなガードワークが如何に絡み合うのか。

「それに私はレスリングゲームもできるから。これまで彼女が戦ってきた相手は、あまりレスリングができる選手じゃなかった。だから彼女はグラウンドに持ち込んで、自分の試合ができた。もちろん、彼女のトップゲームの圧は強くてコントロール能力に秀でているわ。それにサブミッション防御能力も高い。私がサブミッションを狙う選手だから。彼女のそんなところは凄く厄介で。

と同時に彼女に対して、フィニッシュされるという恐れを感じることはなくて。一本を取られる心配はしていない。だから、この試合は3Rフルに戦うことになると思う。スクランブルが多くて、カナの柔道に対して私のレスリングの防御力が問われる。もし私が彼女をコントロールできなかったら、判定は彼女のモノになるでしょうね」

──厳しい試合になると想定しているのですね。

「もちろん、カナ・ワタナベを軽く見ることは絶対にないわよ。ただし、私がトップになればフィニッシュできる。そう思っているわ」

──日本の選手は大抵の場合、フィジカル面でディスアドバンテージがありますが、彼女はそうではありません。

「間違いなく、彼女はフライ級で最も体が強い選手の1人よ。背が高くて、頑丈。筋肉隆々だし。それは百も承知で、彼女と戦う準備してきた。クリンチも本当に強いし……彼女のパワーがフルに発揮されるクリンチゲームは避けて通れないけど、なるべくなら回避しないと。だから打撃も大切になってくるし、まぁ……彼女には日本人の力強さがあって、私はハワイの強さで対抗するわ」

──なるほどぉ(笑)。ハワイの強さ、力強く柔軟性のあるフィジカルはイリマレイのスタイルにぴったりと合致していますね。ところでこの試合に勝てば、再び世界王座が見えてくると思います。その辺りはどのように考えていますか。

エミリー・ダコートをフィニッシュした腕十字はデッド・オーチャードから移行し、三角に捉えてから極めたものだった(C)BELLATOR

「だからこそ、私のグラップリングをしっかりと見せたい。

私のキャリアはグラップリングで積み上げてきたモノだから。過去数戦は判定まで行ってしまっているけど、やっぱりそういう試合でなくてフィニッシュがしたい。勝利、タイトル戦線も大切だけど、キャリアの序盤の頃のようにフィニッシュして勝つという感覚を取り戻したくて。

どんな形だろうと、勝利を手にすることが先決なんだけどね。でも私の柔術ルーツに立ち返って彼女を極めたい。そうなれば最高ね」

──地元で戦うことはプレッシャーもあると聞きます。その辺りはどうですか。

「以前は、本当にそうだった。ハワイでは絶対に負けたくないって思っていたわ。だけど去年のハワイ大会で私はジャスティン・キッシュに負けて……。故郷の皆は、まるで関係なく私に温かかった。今はもう、ホームタウンで絶対に勝たないといけないというプレッシャーから解放されたわ。だから、次の試合も楽しめるはずよ」

──まさにオハナですね。

「その通り。オハナが一番大切。私に何が起ころうが、皆は私を愛してくれる」

──イリマレイ、素晴らしいインタビューをありがとうございました。最後に日本のファンに一言お願いします。

「私は日本が大好きで、日本の人のことも大好き。またRIZINとBellatorのコラボショーがあれば、今度は絶対にさいたまスーパーアリーナで戦いたい。日本のファンは、日本人と戦う外国人選手のこともリスペクトして、応援してくれる。

本当に、本当に、本当にさいたまスーパーアリーナで日本の皆の前で試合をしたい。それが私のゴール。その前に今回、私はカナのことを心から尊敬して戦う。そういう気持ちが欠けて戦っても、意味はないから。

そうだ、一つ質問して良い?」

──もちろんです。

「私はカナのことを本当に尊敬しているから、計量のあとでハグをしてレイを彼女の首に掛けたいの。でも日本の人って握手の文化で、無暗にハグをしないって聞いて。私が彼女にハグをすることは、失礼にあたるのかしら?」

──全く、そんなことないです。逆にそこが気になったイリマレイのことを日本のファンも大好きになるはずです。

「そう。それは良かったわ。ファイトはファイト。MMAは喧嘩じゃない。私は心の底から彼女をリスペクトしているから、そんなカナに勝つためにベストを尽くわ」

■視聴方法(予定)
4月23日(日)
午前8時30分~ U-NEXT

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