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【Pancrase333】仕切り直しのエジナと再戦、藤野恵実─01─「浜崎戦前に、お医者さんから『最後』だと」

【写真】ある意味、想いと努力だけでここまで戦い続けてきたといえるかと(C)SHOJIRO KAMEIKE

30日(日)、立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase333で、藤野恵実がエジナ・トラキナスと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

両者は2019年9月に対戦し、1R終了後にエジナが右手首の負傷を訴え、ドクターチェックの末に藤野のTKO勝ちとなった。今回の再戦は当初、3月26日のニューピアホール大会で行われる予定であったが、エジナの負傷によって今大会にスライドされていた。仕切り直しとなったエジナとの再戦を前にZOOMインタビューを依頼したところ、画面に現れたのは、左目上に大きなテープを貼った藤野の姿だった。いま明らかになる、驚異的な肉体と回復力とは――。


――左目上に大きなテープが貼られていますが、負傷したのですか!?

「日曜日(取材は4月11日に行われた)に切ったんですよ。でも直後に100℃のサウナへ行って、今日もボクシングスパーしても出血しなかったから、たぶん大丈夫です。テープは少し溶けているみたいですけど」

――テープが溶けるサウナに入っても傷には影響しないのですね。さすがヒジをもらって顔面をカットしても、直後に出血が止まるファイターです。

「アハハハ。お医者さんに行ったら『傷になるから縫わないほうが良い』って言われました。それで私も『試合があるし練習したいんです』と伝えると、『それはやってもらって大丈夫です』と言われて」

――それは傷が浅いのか、藤野選手の回復力が凄いのか。いずれにしても60歳まで現役を続ける方の肉体は違いますね。

「続けませんよ! メイのインタビューを読みながら、『何をバカなこと言ってんの!?』と思って(笑)。とにかく体は丈夫ですね。だから今も続けていられるんだとは思いますけど」

――体の管理で普段から気をつけていることはあるのですか。

「えっ、特に……」

――デッドリフトで150キロを挙げるほどの筋トレぐらいでしょうか。

「最近は155キロを挙げて、記録を更新しました(笑)。運動神経はないのに、なぜか重いものを持ち上げる能力だけ特化していますね。まぁ、カットした次の日に155キロを挙げるぐらい力を込めても、傷口から出血することはなかったです。さすがに今日のボクシングスパーをガチでやろうとしたら、津田(勝憲トレーナー)に怒られましたけど」

――それだけの傷にも関わらず、ガチのボクシングスパーをやろうとしたのですか。

「だって今日はガチスパーの日なんですもん。でもそのスケジュールを伝えたら、津田に『ふざけんな!』って怒られました」

――津田さんの感覚が普通だと思いますが……。

「指のあたりをカットして出血しても、スパーはするじゃないですか」

――カットの程度によると思いますが、藤野選手の場合は指がなくなっていても気づかずにスパーしているかもしれません。

「いやいや、それはないです(笑)」

――気づくかどうかはともかく、昨年10月の渡辺彩華戦は拳を負傷しながら3R戦い続けたのですよね。

「1Rに拳を折っちゃいました(と右拳の手術跡を見せる)。退院した日に練習したら、また骨がズレちゃって再手術したんですよ。本来はもっと早く試合をしたくて、12月に出られるかどうかっていう話はいただいたんです。お医者さんからは大丈夫だと言われていたけど、私の練習のほうが間に合わないなと思って」

――それだけの手術をしていながら、お医者さんも2カ月後に試合をしても大丈夫だと言える回復力ですか(笑)。

「さっき言われた『傷による』っていうのは分かるんです。もうベテランだし、これぐらいの負傷なら、どれくらい練習できるかも把握できていますからね。今回のカットも、それほどの傷ではなくて良かったです。これまで過去に2回『もう格闘技を続けるのは無理だな』と思った時に比べれば」

――これまで2度も、そのような状態になっていたのですか。

「最初はデビュー2戦目のあとにバイク事故に遭った時ですね。足はもう――絶対に格闘技を続けるのは無理で、病院でも『なんとか日常生活は送ることができる』というような言い方をされました。でも、そのあとフルマラソンを3時間台で走りましたけど」

――アハハハ。もう常人には理解できません。

「それで2回目に『もう格闘技は無理だ』と言われたのは、浜崎朱加戦の時ですね。ヒザが骨壊死(※血液が供給されずに骨の組織が壊死してしまっている状態)みたいなことになって。お医者さんからも『浜崎戦までに7割ぐらい回復できれば……。ただし、これがもう最後です』と言われていました。でも試合後に、思いのほか治っちゃって」

――思いのほか(笑)。

「お医者さんからも『もう私には理由が分からない』と言われました。アハハハ」

――お話を聞いていると、そのヒザも10年後ぐらいには治っている気がしてきました。

「その頃には革命的な治療法が誕生していますかね?」

――いえ、自然治癒で。

「どんなバケモノですか! デッドリフトや筋トレについても、そんな頻繁にやっていないんですよ。煽り映像でそのシーンが使われるから、筋トレばかりやっているようなイメージを持たれていますけど」

――ただ、デビュー2戦目が2004年で浜崎戦が2021年ですから、その間に何もなかったことも驚きです。

「格闘技をやっていれば怪我をしないことはないけど、続けられるかどうかっていう怪我はその2回ぐらいですね。ただ、事故で負傷した足をかばいながら練習したり試合をしているのも良くないんですよ。もうヒザが変形していて正座もできないし、ヒザを壊しているために出来ない技もあって。まぁ、もともと出来ない技が多いから関係ないですかね(苦笑)」

<この項、続く

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