【Pancrase333】NØRIを相手にフライ級QOP王座防衛戦、端貴代─01─「一人前になれないまま続けている」
【写真】一人前の定義は分からないが、だから諦めるのではなく、続けている。そこが良い(C)SHOJIRO KAMEIKE
30日(日)、立川市の立川ステージガーデンで開催されるPancrase333で、フライ級QOPの端貴代がNØRIを挑戦者に迎えて初防衛戦を行う。
Text by Shojiro Kameike
2021年10月に端はNØRIを判定で下し、暫定フライ級QOPの座に就いた。つまり端にとっては、今回がダイレクトリマッチによる防衛戦となる。その後、正規王者であったシッジ・ホッシャが王座を返上したことで、端が正規王者に昇格したという流れだ。プロデビューは2004年――ここまでスマックガール、DEEPジュエルス、そしてパンクラスのベルトを獲得している。まさに日本女子MMAのリビング・レジェンドである端が語る、自身の過去・現在・未来とは。
――1年半前の話になってしまいますが、まず端選手がもう一度ベルトを獲得するということに驚きました。今もなお戦い続け、ベルトを目指し続けてきたということに。特に端選手の場合はスマックガール、DEEP JEWELS、そしてパンクラスという3団体のベルトを巻いたことは、まさに日本女子MMAの歴史そのものであるように思います。
「自分も年齢を重ねてきているので、『あとどれくらいできるのか』という気持ちは常にあります。そのなかでベルトを獲ることができたのは、メッチャ嬉しかったです。ベルトを巻いたことで、もう少しMMAを続けられるんだなぁって。同時に、チャンピオンになった限りは防衛戦を考えなきゃいけないし、それはそれで大変ですけど――良い意味で、MMAを続けさせてもらえるんだなと思いました」
――もし前回のNØRI戦でベルトを獲得できなければ、引退あるいは第一線を退く可能性はありましたか。
「うーん……、……たぶん、どうするかは悩んでいたでしょうね。もし負けていたら、このまま選手として続けて良いのかどうか。あの試合に限らず、それこそどの選手でも、どの試合でも負けたら考えることだと思います。私もいろいろと抱えているものがあるので、ベルトを巻くことができなければ、他の道を選択することもあったかもしれないですね」
――2019年4月、シッジ・ホッシャとのフライ級QOP決定戦に敗れた時は、そのように考えることはなかったのでしょうか。
「あの時は、初代フライ級QOPのベルトが懸かっていたので、メチャクチャ獲りたかったです。結果は負けて悔しかったんですけど、自分の中で『まだできる』という気持ちがあったんですね。だから、あの時に辞めるという選択肢はありませんでした」
――国際戦と、日本人選手との試合でモチベーションは変わりますか。
「相手によってモチベーションが違うということはないですね。昔は『海外で試合をしたい』という夢や目標があって、実際に海外で試合をさせてもらいました。でも勝ったり負けたりで――負けたほうが多いのかな。そんななかで、今は誰々と対戦したいとか、海外の選手と試合したいとかっていう気持ちはないんですよ。うーん、何なんでしょうね(苦笑)」
――和術慧舟會の後輩である藤野恵実選手は、60歳まで現役を続けるという説が浮上してきました。今の話を聞いていると、端選手もMMAを辞めることはないのだろうなと思えてきます。
「アハハハ。そうかもしれないですね。自分のなかでは、まだまだ続けたい気持ちが強いので。生活の中から格闘技がなくなっている自分を想像することができないんです。たぶん何かしら仕事はしていると思いますけど、仕事以外で何をしているのか(笑)」
――今は格闘技をやっていない時間は何をしているのですか。
「まぁ、適当に遊んでいます(笑)。ただ、本当に時間が足りないんですよ。練習する時間が足りない。だから遊びに行きたいという気持ちも無くなってきました。アハハハ」
――和術慧舟會東京本部の時代から、端選手が練習の手を緩めることが想像できません。実際、今も端選手は当時と変わらない練習を行っていると聞きます。特に端選手の場合は、女子選手の練習会ではなく、あくまで男子選手と共に練習してきたと記憶しています。
「それは今も同じですよ。私の中ではそれが普通で、あんまり考えたことがないですけど……。今も同じような練習をしていることが、良いことなのかどうか分かりませんけどね(笑)」
――一ファイターとしては在るべき姿ではないのでしょうか。
「そうであれば良かったです。もし格闘技をやっていなかったら、結婚して子供を産んで普通の生活を送るという理想はありましたよ。いや、でも……そうか。それでも格闘技はバリバリやっているかもしれないです(笑)」
――それだけ端選手を駆り立てる格闘技、MMAとは一体何なのでしょうか。
「自分で始めて、自分で続けると決めてやっていることだから、もう人生の一部なんですよね。20年前に格闘技を始めて、もうすぐ人生の半分を格闘技に費やしていることになります。それだけ人生を懸けて――なんてカッコイイことは言えないけど、ずっと続けてきたことを『じゃあ辞めまーす』と言って辞めるわけにはいかないじゃないですか。
もちろん若い頃と比べたら、スタミナ面などの不安はあります。以前なら何も考えずに体が動いていたところで、疲れるなぁとか思ってしまうことも(苦笑)。いろいろ技術を覚えてきたから、ですかね。昔はできることも少なかったし、試合では自分ができることを出すだけ。出せていなかったら、出せるまで続ける。でも今は技術を覚えてきたことで、これが出せなかったら次は――と試合中に考えることも増えてきて」
――それは決して悪いことではなく、今もなお学び続け、そして習得し続けているものがあるということではないでしょうか。
「そういうことですかね? 確かに今でも自分の中でも、少しずつ変わってきている手応えはありますけど、それだけ私なんてまだまだなんですよ。一人前になれないまま、ずっと格闘技を続けているんです」
<この項、続く>