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【DEEP112】3年2カ月振りの実戦復帰、しなしさとこ─01─「60歳ぐらいまで試合ができると思います」

【写真】若い頃の自分とツーショット。これができるのは今も意気揚々、充実している証拠 (C)SHOJIRO KAMEIKE

11日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP112で、しなしさとこが古林礼名を相手に3年2カ月ぶりの試合を行う。
Text by Shojiro Kamaike

しなしにとって前戦は2019年12月、にっせーにKO負けを喫した。プロデビューから20年、現在46歳のしなしがケージの中に戻ってきた理由とは? ファイターとして、そして母として――しなしは戦い続けている……のか?


――プロデビューから20年――2月11日に45戦目のMMAを戦う、しなし選手です。

「そう聞くと、すごいですね。長くないですか(笑)」

――はい。女子だけでなく国内MMA全体でも大ベテランとなりました。ただ、それでも3年2カ月のブランクを経て復帰戦を行う理由から教えてください。

「この期間も、試合用の練習ではなかったんですけど、練習自体は継続していました。何て言うんでしょうね……。今やらないと、一生復帰できない。そんな気がしました。だから『今やろう!』と思ったんです」

――しなし選手は、このまま生涯現役を貫くのでしょうか。

「アハハハ。コンディショニングがしっかり出来ていれば、60歳ぐらいまで試合ができると思いますよ(笑)。あくまで希望ですけど」

――60歳まで!

「他の競技でも、そこまで試合をしている人はいないですよね。スマックガール初期に出ていた人たちも、みんな引退しているし……。あ、久江ちゃん(渡辺久江、現・久遠)が復帰しましたよね。それは嬉しいです。私自身、戦うことが好きなんです。一方でマイペースな性格なので、自分のペースで試合をしたいと思っています。普段から身体はつくっていたいし、試合となれば尚更ちゃんと身体をつくってから出たくて」

――しなし選手といえば、現在でもバキバキの腹筋を披露しています。

「もう不摂生はしなくなりましたよ。基本的に夜は出かけない。コロナ禍もあって、友人から食事に誘われても断ることが多くなりました。朝は5時ぐらいに起きて子供のお弁当づくり、夜は9時ぐらいには寝ます。食事もバランス良く――ウチは炊飯器ではなく土鍋でごはんを炊いているんです。大変だけど丁寧に食事の支度をしていると、年齢を重ねるにつれて生活も丁寧になったというか。年を取ると、余計なものを食べなくなりませんか?」

――余計なものを食べないといいますか、以前よりも食に対するこだわりは無くなりました。あとは、お肉も脂身が多いものを食べる量は減っています。

「そうなんですね。私は今でもお肉が好きだから(笑)」

――肉を欲する、それが今でも戦っている証ではないでしょうか。試合をしていない期間は、何か物足りなさを感じませんでしたか。

「ベルトを返上してからは自分のペースで試合ができているので、そういう物足りなさはなかったです。今までずっと試合をしてきたから、むしろ少し休めましたよね。コロナ禍で練習環境も難しくて、応援に来られる人も少ないでしょうし、そんななかで慌てて試合をする必要もないのかなと思いました。休める時に休もう、ということで。あと、一度負けたらメンタルが回復するまでに時間が掛かるんです。アハハハ」

――……。

「でもお休みしていたおかげで、ここ10年ぐらいのなかで今が一番調子が良いです。若い時のようなガツガツ感もなくなりましたよね。記者の方からも『カドが取れましたよね』って言われるぐらいで(笑)。ただ、ガツガツ感はなくなったけど、いつも自分らしくいられている気はします」

――「一度負けたらメンタルが回復するまで時間が掛かる」ということは、にっせー戦の敗北はご自身のなかで大きな傷が出来てしまったのでしょうか。

「毎回そうなんですよ。久江ちゃんに負けた時(2006年8月にKO負け)も、すぐブラジルに逃げちゃって。負けると気持ちが落ちちゃいます。勝ち続けることのストレスが大きいので。ただ勝つだけなら、そうでもないです。でも勝ち続けることは難しいじゃないですか。一般的に強いと言われている相手でも、私とは実力差があると言われている相手であっても。私の場合は、10回に1回ぐらい試合に集中しきれない時があって、その時はだいたい負けています。前回の試合もそうでした」

――そんなことがあったのですか。これは失礼な言い方になるかもしれませんが、しなし選手はすでに現役で戦う必要のない人生を送っています。これまで44試合に出場し、敗れたのはわずか4戦のみ。過去にはDEEPのベルトも巻きました。それでも試合に出続けるのは、15歳で柔道を始めてから30年間ずっと戦ってきたからなのか……。

「確かに体を動かしていなかったのは、2009年に息子を産んでから数年間ぐらいですね。出産前は周囲に『産んでから1カ月ぐらいで復帰する』と言っていました。それが全身麻酔の帝王切開という超難産になって。産んだあとも母乳をあげていたので、練習もできていなかったんです。でも、私の復帰を待ってくれている人がいるし、そのまま復帰しなかったら嘘つきになってしまう。だから2014年に思い切って復帰しました」

――息子さんは今もお母さんが戦っていることについて何と言っているのでしょうか。

「昔は小さかったので、私が何をやっているのか分かっていなかったです。『お母さんは相撲をやっているんだよ』ぐらいのイメージで。そんな息子が、もう中学1年生になりました。その年齢だとMMAも認識できるし――実は、息子が中学校に入ってからレスリングを始めたんですよ」

――えぇっ!! やはり格闘遺伝子なのでしょうか。

「中1から始めるって、まさかって感じですよ。やっぱり血って怖いなと思いました(苦笑)。『自分が決めたことだから、高校まで6年間しっかり続けなさい』と伝えました。まだ初心者で、投げることすら難しい状態です。でも息子がレスリングを始めた時に思ったんです。私がケージの中で戦って、母親として息子に勝負の厳しさを見せたい。そしてレスリングを頑張ってほしい。そのために今、私は復帰するんです」

<この項、続く

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