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お蔵入り厳禁【UFC ESPN40】8月8日に佐藤天が語っていたこと―02―「ケージの中は1人なんです」

【写真】MMAの本質、敗北直後の言葉には佐藤天の軸が見える言葉の数々だった (C)MMAPLANET

8月6日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されたUFC on ESPN40「Santos vs Hill」で、ブライアン・バトルに敗れた 佐藤天インタビュー後編。

諸事情ではなく、単なる力量不足で掲載が遅れに遅れた同インタビュー。その後の日本のMMA界、格闘技界の在り方の変化に触れ、彼の言葉こそ2022年の区切りに伝えたいと思うようになった。

お蔵入り厳禁――MMAは格闘技、格闘技は強さを津希求する戦いという本質を。UFCで戦い続けるためにもがき続ける佐藤天は常に我々に教えてくれる。

<佐藤天インタビューPart.01はコチラから>


――要は海外、国内という二極化した問題ではなくて。どのような人間関係を築いて練習ができるのか。どれだけチームを信じることができるのか――そういうことなのかと、改めて米国に来て……キルクリフFCの練習を見て確認できたような気がします。

「どこにいようが、個人の問題なんですよ。自分自身が1人、1人がやっていかないといけない。ただし、そのなかでも家族のような関係で、皆が温かい。そしてコーチも選手も強くなることが、最大の共通点だからアスリートとしてやるべきことをやる。ソーシャルメディアだけじゃ伝わらないと思いますけど、それでも僕は発信したいと思っています。

一度は来るべきだというのは1日、ここでの練習を見てもらうと分かってもらえると思います。結局のところは選手次第ですけど、僕はここで大切な仲間に出会えた。だから、ここで結果を残したい。僕の覚悟とかは、個人の問題です。でも、この環境がどういうものかは知ってほしい……知るべきです。

僕を見てほしいんじゃなくて、僕のチームのメンバーがどういう気持ちでMMAに向き合っているのか……どういう風にMMAに夢を持っているのか。そこを知ってほしいです。

そこが日本のMMA界と明確に違うので。その違いは良い悪いではなくて、こういう環境があることを知って、選手がどのような道を行くのかを判断すれば良いと思っています。そこを色々な選手に肌で感じてほしい。僕はキルクリフFCという良いジムに巡り合えて、凄く幸せです。

ただし、米国といっても広いし。色々なジムがある。そのなかでもキルクリフFCのように一丸となっているジムは珍しいと思います。ただし大所帯になることで、足りない部分も出てきます」

――ハイ。そこは指摘される点でもありますよね。

「そうなんです。ただ、それを誰かの体験談として耳に入れるんじゃなくて、肌や空気で分かってほしい。それが国内で練習していても、強くなるための体験になると思うんです」

――そういう点でいえば毎週末に試合があるので、週の半ばからコーチが不在という状況は所属選手数が多い有名ジムだからこそ見られる現象かと。

「それこそ、トップを目指そうという選手が、コーチが不在だからって練習に向き合う姿勢がダメになるなんてありえないです。どれだけコーチの指導が良くても、選手にそういう部分が欠けていたら強くなれるはずがない。その期間に何をするのかは、選手たちは十分に分かっています。手を抜く選手は、どこで戦おうが勝てない。だから、週末のコーチの不在なんて大きな問題じゃない。

それに逆を言えば月曜日から水曜日まで、コーチが揃っている。そのコーチ達も含め、良い環境、良い空気があるからこそ、不在の時だって良い練習ができる。グレッグも『AからBまでは教えることができる。でも、この間のことは自分で考えないといけない』って言っています。その考えることができる環境があるので、木曜日から土曜日までスパーリング、グラップリング、サーキット・トレと不自由なく過ごせています。コーチがいないから練習できないなんて言っていたら、試合もできないですよ(笑)。

ケージの中は1人なんです」

――ではABEMAの海外修行プロジェクトのように、資金と環境してくれる状況をどのように捉えていますか。

「素晴らしいです。素晴らしい体験をさせてもらっているからこそ、分かってほしいのは……1カ月でメチャクチャ強くなるなんてありえないということ。コーチも短期滞在では、その選手のことを理解できることもない。所属選手もゲストファイターには、ちょっと試しでやってみようぐらいで、何年も一緒にやっているチームの人間との練習とは違ってきます。でも、そこで選手が何を感じるのか。

当然、米国での練習や生活が合わない選手もいると思います。英語が話せない、食べ物が違う。移動手段が違う。実力が足りない。日本との違いはいくらでもあります。そこには色々な壁がある。でも、それは来ないと分からない。

強くなるためには、知る必要があるのに知れないままというのは最も避けたいことです。このプロジェクトを活用して米国を知ることで、選択肢が広がる。それは凄く良いことだと思います。どんな選手がいて、どういうジムの雰囲気なのかは理解することはできるはずです。それを日本に持ち帰るか、ここでずっとやりたいと思うか。それは選手次第です。

正直、僕としては3カ月ぐらいいてほしい。そうすれば、分かってくる。コーチの言っていること、自分のやっていることがつながってくる。そこから自分の技術にしていくのに、また時間がかかるわけですけど。それは日本も同じはずです。

僕もこっちに来て、こうやって過ごしていても勝てない時は勝てない。SNSでは『海外かぶれ』と書かれますけど、ここでの生活が分からない人には、そういわれてもしょうがないと思っています。それ以上、僕が負けることでこの環境を否定されることになる。だからこそ、僕はここで勝ちたいです。ここでやってきたことが試合で出せなかった。そこが一番悔しいです。

いずれしても、若い選手がABEMAの力を借りて、こっちに来る。そして自分の目で見て、自分の肌で感じることができる。何回も言っているけど、そこから先は選手次第。この取り組み自体は素晴らしいことだと思います。触ったことによって視野が少しでも広がる。ここでの経験を持ち帰ることができる。と同時に米国で練習することで日本の良さも分かるはずです。そこを敏感に感じ取ることができる選手は強くなれると思います」

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