【UFC ESPN40】バトル戦から2日後の佐藤天―01―「全然汗をかいてないと20回は言っていたそうです」
【写真】フロリダの陽光の下で、敗戦と自らの環境について佐藤は話した(C)MMAPLANET
6日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されたUFC on ESPN40「Santos vs Hill」で、佐藤天がブライアン・バトルに44秒KO負けを喫した。
右ストレートを見せておいての、右側の蹴りがガードの拳一つ分上を通り抜け、佐藤の顔面を完璧に捉えた。
そして失神。翌日にフロリダに戻り、月曜日の朝のトレーニングセッション時にキルクリフFCを訪れた佐藤と、場所を自宅に移して話した。
――敗戦から2日が経ちました。フロリダに戻ってきて、どのような気持ちでしょうか。
「ホントに入場してコールを受けた後から覚えていなくて。でも21試合目だったと思うのですが、やってしまったなと。練習でもあのコンビネーションを貰ったこともないですし、あそこで……こんなところでやるか。やってしまなったなと」
――UFCで戦い続けるには、絶対に負けてはいけない相手。勝ち方が問われるという見方を我々はしている一方で、オッズはバトルが有利でした。
「今回の負けに関しては覚えていないというのもありますが、やってしまったなというのが大きくて。どれぐらい強いのか分からない。手探りの状況でやられてしまった。力量差があったのか、ないのかも分かる前に終わっているので、こういう競技だから起こりうることはあるかと思いますが、やはり『ここでやるか』ということにつきます」
――佐藤選手のKO負けは2015年8月の高木健太戦以来となります。
「あの時は今回と同じように『どうやって負けたんですか』って何回も聞いていたそうですけど、倒れた瞬間とかはスローモーションみたいに自分の体が倒れていくのとかは覚えていたんです。でも今回は入場をしたのは覚えています。コールの時に『今日はブルース・バッファーじゃないな』と思ったところまでなんです、記憶にあるのは。次の瞬間には、控室に座っていました。
ヘンリー(フーフト)がスプライトをくれた時も『試合前にコレは飲めねぇよ』ってなったのですが、隣にいたニック(末永)さんが映像を見せてくれて……。『えぇ!!』みたいな(苦笑)。そこから『全然汗かいてないし』と1度言ったことは覚えているのですが、少なくとも20回は言っていたらしいです。
控室に歩いて戻ったことも覚えていないですし、ドクターとのペーパーワークのやりとも全く覚えていなくて。KO負けした選手が、『1週間前の記憶がない』とか言っているのを聞いても、『さすがに盛り過ぎだろう』って思っていたのですが、実際にこうなるんだと……。
小さいところを見落とした結果なのか……心の傷というよりも、残念な気持ちには変わりないです。腹立たしいという気持ちがないわけでなく、負けているので悔しいという気持ちがなくはないです。でも分からないんです。こんな風に全ての記憶がすっぽりと抜けているが初めてで」
――妥協としたとか、行けなかったとかという想いもないわけですしね。
「自分のやってきたことを出す前に。右ストレートのフェイントから右ハイに上手くはめられたという結果なんですが、こういうことが多々ある中で自分にも起こってしまった。なので僕の気持ちも端的に表すと、残念ということになります。自分のキャリアのなかで間違いなくベストのキャンプができて、凄く調子も良くて。体だけでなくて、気持ちも良く仕上がっていて。そういう時に、こういうことが起こるんだという……残念さ、ですね」
――バトルにしても、様子見で当たればもうけもんと言う感じで、スッと入れた蹴りだったのかと思います。倒す気なら、もっと力んでいたかもしれないですし。
「映像を視ただけですが、探っているなかでの攻撃だったかと思いました。それがドンピシャで当たった。アゴも痛くなくて、頭痛もほとんどない。相手も狙っているんじゃなくて、ポンと出したのが当たってしまった……」
――とはいえ結果は出ました。気になるのはUFCがどのような判断をするのか。
「昨日もマネージャーのシュウさんとも話していて、『切られるなら数日のうちに連絡がはいる』と。4試合契約で2試合なので望みはあると願いつつ、起こってしまったことは変えられないので――自分ができることは回復に努めて、前を向くことです。強くなっているという実感は凄くあって、でも結果が出ていない。負けてしまっても、まだ自分を信じています。だから敗戦のなかでも、強くなれるというのがあって前を向いてやっていくしかないです」
――仮にリリースされたら、身の振り方をどのように考えていますか。
「根本的には変わらないです。さっきも言ったように今の自分よりも、1日1日と強くなる努力を続ける。UFCで勝つためにこれまでやってきて……結局、どうなってどこで戦っていても辿り着くところは、そこしかない。一番上はUFCです。そこさえブレなければ、やることは変わらない。
今日もジムにいって、ヘンリーやグレッグ(ジョーンズ)、コーチ達とも話をして。ホントに皆が迎え入れてくれて……涙が出そうになりました。ホントに素晴らしいチームにいるので。ここで結果を出すのは、僕の使命です。皆が自分のことを歓迎してくれて……自分が最高の調子なのに、この結果に終わってしまって残念です。さきほども言ったように覚えていないから、悔しさが実感できない状態なのですが、チームメイトやコーチのメッセージを読むと……本当に悔しくて。そこに関してが、一番悔しいです。
今日、ヘンリーが「勝とうが、負けようがタカシの回りにいる人間は変わらない」と言ってくれて。チームも仲間、家族もそう。勝ったら皆、喜んでくれて。負けたら、温かい言葉を掛けてくれる」
――いや、本当にその通りでした。日本では強くなれないとか、そんなことないとか。米国でないとダメだとか、米国にいっても絶対じゃないだとか。色々な意見がありますが、佐藤天がキルクリフFCにいることの大切さは、ほんとに1つのセッションで分かったような気がします。
「今回フロリダまで来てくれたから、いつも自分が言っていることが分かってもらえたと思います。そういう環境に、僕は毎日いるということを――。だから……そうっスね。ちょっと……ヤバいです(苦笑)」
――手放せないですね。
「いや、それ以上はもう(苦笑)。そういう……仲間たちとやってきたことを……、それを出せなかった……。そこは……悔しいです。でも、やっていくことは変わらないです」
<この項、続く>