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【Gladiator019】2年2カ月振りの復帰戦、南出剛「今が一番強いっていう自分を作り上げることができた」

【写真】以前より穏やかな表情になったようにも見える南出。その分、強くっているはずだ (C)SHOJIRO KAMEIKE

25日(日)、大阪府豊中市の176BOXで開催されるGladiator019で、元フライ級王者の南出剛がライダーHIROを相手に、2年2カ月ぶりのMMA復帰戦を行う。
Text by Shojiro Kameike

南出はグラジエーターを経てDEEPで戦い、さらにROAD FCやPXCなど海外での試合も経験してきた。しかし2018年から修斗で3連敗を喫したあと、2年もの間ケージから離れていた。その南出が復帰に至った理由には、溢れんばかりの家族への愛があった。


――2020年7月に行われた修斗の服部賢大戦以来となる、2年2カ月ぶりの復帰戦を迎えます。これだけの期間、試合から遠ざかっていた理由から教えていただけますか。

「結婚したり子供が生まれたり……この期間も練習はしていたんですけど、どうしても試合をするっていう気持ちにはなれなかったんです。やっぱり連敗していたっていうこともあったので。その中で子供ができて、練習よりも子供と一緒にいたいという気持ちが強くなっていました」

――南出選手は2018年11月の安藤達也戦から3連敗を喫していました。そこでMMAを続けるか、あるいは引退ということも考えたのでしょうか。

「それは考えました。服部戦で負けた直後に、もう引退しようと。もともと試合前から、3連敗したら辞めようと考えていて。しかも服部戦の前日に、2人目の子供ができたことが分かったんです」

――その時点で、ファイターとしての自分については、どのように考えていたのですか。

「もう練習やって挑んでも勝てない。そんな試合が続いたことで、心が折れてしまったというか『もう勝てないんかな』と思ってしまいましたね」

――負けた要因があり、それを改善して次は勝つというところまで自分のモチベーションを高めていくことができなかったと。

「はい、そこまで考えることができなかったです」

――一度は引退しようと考えたところから今回の復帰に至るまで、どのような気持ちの変化があったのですか。

「格闘技が好きなので、辞めようと思ってからも体を動かす程度の練習はやっていたんですよ。その中で、応援してくれている人や家族から『試合を見たい』と言われて――ずっと僕のことを信じてくれている人たちがいたんです。そういう人たちの声によって、もう一度頑張ろうっていう気持ちになりました」

――家族の声というのは、お子さんの声も含まれているのでしょうか。

「一番上の子はまだ3歳の男の子で、今YouTubeで格闘技を見たり、自分が練習する時にジムへ連れて来たりしているんですよ。そうしたら、おもちゃで遊ぶより格闘技をするほうが好きになってしまって(笑)」

――えっ、格闘技を見ているだけではなく格闘技をするほうが……ですか。

「家でもグローブを着けて『パンチ(格闘技のこと)しよう!』と言ってくるんです。そういう子供の姿を見ていたら、自分も――っていう気持ちになりました。一番上の子は、服部戦の時が1歳ぐらいで、会場には来ていましたけど、当然まだ父親が戦っていることとかは分かっていませんよね。それが今、YouTubeで僕の試合を見ています」

――お父さんの試合映像を見て、お子さんは何と言っているのでしょうか。

「ずっと僕の試合の真似をしています。すると僕の試合だけじゃなく、朝倉海選手の試合やRIZINも見るようになって。僕の試合を見ても『パパ、強い』とか言ったことないのに、朝倉海選手を見たら『カイ強い、カイ強い』とか言うんですよ(苦笑)。だから、子供に強い父親を見せたいんです」

――お子さんが他の選手のことを強いと言ったら、父親としては悔しいですか。あるいはジェラシーなど……。

「アハハハ、悔しいっていう気持ちはないですよ。朝倉選手と自分では立場が違いすぎるので。でも父親として『パパ、強い』って言ってもらえる試合はしたいと思っています」

――そう決意したのは、いつ頃のことですか。

「1年前ぐらいから試合に向けた練習を再開していましたね。最初の頃は毎日練習できていわたけじゃないけど、意識は変わっていました。ただ体を動かしていた時期は、何も考えずにサンドバッグやミットを打ったり、スパーリングするじゃないですか。それが、いざ試合に向けて練習しようと思うと、サンドバッグにしてもミットにしても、常に一つひとつ攻撃と防御を考えて打つようになって。自分ではすぐに以前の動きを取り戻せると思いました」

――では現在、どれぐらい取り戻せていると思いますか。

「取り戻すというよりも、今までで一番強いと思います。僕も連勝していた時期があったんですよね。『5~6年前にRoad FCやPXCに出ていた頃の自分が一番強い』と思うこともありました。でも今回は、今が一番強いっていう自分を作り上げることができたので、試合が楽しみです」

――過去の自分と比較して、今が一番強いと感じるポイントは何でしょうか。

「やっぱり子供の存在が大きいんですよ、ウフフフ」

――お子さんの話になると、完全に表情が崩れますね(笑)。

「『パンチしたい』って言うので子供も練習に連れてくるんです。子供に見られていると、いつもより頑張ってしまうというか。そういう積み重ねですね。独りの時より、家族ができて子供に見られている今のほうが練習にも集中できているし、負けたくないっていう気持ちが強くなってきたので。強くなりたい、そう思って一つひとつ練習できました」

――たとえ練習といえども、お子さんの前で情けない姿は見せられないですか。

「そうですね(笑)。そういうのは、やっぱり嫌ですよ」

――南出選手といえば、ベースである空手を生かした打撃主体のファイターです。服部戦も打ち合いの末、KO負けを喫しました。今回復帰するにあたり、ファイトスタイルも以前とは異なるものになるのでしょうか。

「いえ、打撃主体なのは変わらないです。でも服部戦については……僕の中では、自分らしい試合じゃなかったんですよね。僕は攻撃型のストライカーじゃなくて、自分の距離を保って戦ってきました。待ってカウンターを合わせるのが得意で。でも服部戦は、攻撃重視で行きすぎたところがあって」

<この項、続く


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