【Shooto2022#05】POUNDSTROMで飛翔、高岡宏気と対戦──齋藤奨司「跳びヒザを躊躇なく出せた」
【写真】POUNDSTROMは齋藤の自信をより確かなモノにした。そんな風に感じられる彼の口調だった(C)SHOJIRO KAMEIKE
17日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2022#05で、齋藤奨司が高岡宏気と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
齋藤は3月の後楽園ホール大会でLyo’oに判定勝ちを収めた1カ月後、POUNDSTORMに出場して風間敏臣を跳びヒザで沈めた。修斗ノーランカーの齋藤に対し、風間はパンクラスのバンタム級1位であったこと。そしてPOUNDSTORM後に風間がRoad to UFCで勝利を収めていることを考えると、結果論だがPOUNDSTORMで最大のアップセットだったかもしれない。格闘DREMAERSを経てプロデビュー戦を落とした齋藤が、この2試合で見せた急激な変化とは? 高岡戦を控える齋藤に訊いた。
――前回のインタビュー後、2カ月連続で試合に臨み、連勝しています。まずこの2連勝については、どのように感じていますか。
「デビュー戦はもったいないことしたなぁ、という感じですね(笑)。3戦目で名前のある選手に勝つことができて……でも、まだまだ試合したいです」
――3月21日に修斗でLyo’o選手に勝利し、翌4月24日にPOUNDSTORMで風間敏臣選手と戦うことになった時、試合間隔が1カ月というのは短くはなかったですか。
「Lyo’o選手に勝った後に次の試合の話を頂いて、やりますって即答しました。相手も強い選手でしたし、やっぱり髙谷(裕之LDHマーシャルアーツ代表)さんの大会でしたから。髙谷さんが初めて開催するビッグイベントで試合ができる、こんなチャンスは二度と来ないだろうなと思って。POUNDSTORMまで1カ月を切っていましたけど、全く迷いはなかったです。まだMMA3戦目のペーペーで、ここでチャンスを掴んでやろうと思いました」
――その2連戦について、まずLyo’o戦について振り返っていただけますでしょうか。Lyo’o戦では、それまでの試合とは異なるファイトスタイルを見せていました。
「自分としては守りに入ってしまって、攻め切ることができなかったなとは思っています。でも相手のテイクダウンを切って、打撃で試合を作ることができました」
――最も印象的だったのは、受けが強くなった部分でした。齋藤選手は自分から攻めることもできますが、あの試合では相手の攻撃をかわしてから、自分が攻撃するといいますか。
「確かに攻めるのが得意なので、今までは自分から先に行く試合が多かったです。ただ、あのスタイルは試合前からやろうと思っていたことではなくて。試合で相手と対峙した時に、自分の距離を作れるなと感じたんですよ。相手のパンチも大振りで、これは受けながらでも戦えるなと」
――終始、手と足、そしてヒザを織り交ぜたフェイントで相手を誘いこんだり、プレッシャーをかけていました。あの動きは普段から練習しているのでしょうか。
「あれは練習しています。やっぱり相手に組ませないように戦うこと、組んできても削っていく。そう考えて練習していて、Lyo’o戦でもテイクダウンは奪われなかったですし。相手は組み際が嫌だったと思います。ケージに押し込まれた時もヒジとヒザで削って、相手が嫌がっているのも分かりました。それも普段の練習の成果が出ましたね」
――あの至近距離の攻防は、Lyo’o戦の対策だったのでしょうか。
「以前から練習していたものです。だんだんと自分のスタイルが分かってきて、こういうふうに戦ったら楽しいなと理解できるようになったんですよね。そこにコーチが僕に合っているものを当てはめてくれました。そうやって今までの練習で築き上げてきたものなんです。誰が相手でも、自分の好きなスタイルをやっているっていう感じですよね」
――齋藤選手が学生時代に経験したアマチュアボクシングはもちろん、プロボクシングでもインサイドワークが得意なメキシカン以外、あれだけ至近距離で相手を削る攻防は見られません。
「MMAを始めて最初は、その距離感に手こずりました。でも今は自分の距離も分かってきたし、ああやって削ることができると楽に戦えますよね。西川大和君とか、ああいう削り方が巧くて」
――一方で、あの試合展開はKOを目指したものだったのか。それともポイントアウトしようと考えたのか、どちらだったのでしょうか。
「フィニッシュしたかったんですけど、自分が勝っているだろうなとも思ったので。あの試合に負けていたら次はない。結果的に、あの試合で勝ったからPOUNDSTORMに出ることができたので、良かったと思っています。ただ……面白くない試合をしちゃいましたよね。勝てたから良かったけど、不完全燃焼みたいな感じで(苦笑)」
――そこは難しいところですよね。以前から齋藤選手の試合を見ていると、Lyo’o戦の変化や進化を面白いと思うかもしれません。しかし試合を単発で見ると印象も違ってきます。
「アハハハ、そうかもしれないですね。僕は4試合やってきて、たぶん全て変化してきていると思うので。そのぶん1戦1戦、成長できている実感はあります」
――さらに成長を見せたのが、POUNDSTORMの風間敏臣戦だったと思います。
「試合が決まった時点では、風間選手がRoad to UFCに出ることは知らなくて。途中で風間選手が出場リストに入っているような話を聞いたんです。それは、僕との試合を消化して、良い感じでRoad to UFCに出ようって感じじゃないですか。ナメんなよ、って思いました」
――風間選手に責任はないとしても、齋藤選手の立場からすれば面白くはないですよね。試合前、ファイターとしてはどのような印象を持っていましたか。
「試合映像を見ると、すぐに組んでテイクダウンして極める。その得意なパターンにハメている試合が多かったので、寝技が強い選手だなと思っていました。もちろんパンクラスのランキング1位なので、強いことは最初から分かっていたので」
――その相手に対して、1カ月で対策を作り上げることができたのですか。
「Lyo’o戦のあとも休むことなく練習を再開して、ずっと対策を練習していました。おかげで、その1カ月間はすごく濃密な期間でしたね。僕がやることは変わらないんですけど、しつこく組んでくる相手をどう対処するか。特に相手が入ってきた時の対応ですね」
――相手が入ってきた時の対応……それがフィニッシュの跳びヒザだったのですね。
「はい。1Rは自分が思っていたより早くテイクダウンされてしまって(笑)。組み技に圧倒的な自信を持っているというか、力がるというより巧さ、テクニックがありました。でもグラウンドは極められなかったので自信を持つことができましたね。それで2Rが始まる前に、セコンドから『今度はお前の番だぞ!』と」
――ただ、1Rも開始早々に跳びヒザを狙って外されていました。一度失敗して、次のラウンドで再挑戦するのは怖くなかったですか。
「アハハハ、もう僕の中で何かが振り切っていたんでしょうね(笑)。
1Rも一度だけじゃなく、何度も狙っていたのに外されていて。でも試合前からイメージしていたし、外したら外したで、次の展開も考えていましたから。……うん、そうですね。やっぱり自分のスタイルが分かってきたから、あの跳びヒザを躊躇なく出せたんだと思います。それは大きいです」
<この項、続く>