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【Shooto2022#03】澤田千優と対戦、久遠「次の試合が最後じゃない。1年後に完全に距離感を掴めるよう」

【写真】これだけ自己分析ができているのだから、格闘IQは相当に高いはず (C)SHOJIRO KAMEIKE

22日(日)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2022#03で、渡辺久江改め久遠が澤田千優と対戦する。
Text by Shojiro Kameike

2002年にスマックガールでプロデビューした久遠は、2007年のゲンカーム・ルークチャオポーカム戦を最後に、MMAから離れていた。2010年にはキックボクシングやシュートボクシングのリングに立ったものの、2011年から再び戦いの舞台から姿を消すことに。2016年にはMMAに復帰し、WSOF CGとVTJで2試合を戦ってから6年――キックボクシングの試合を経て修斗に出場した久遠に空白の5年と現在、そして今後について訊いた。

なお、本日21日(土)行われた計量前に杉本恵と対戦予定だった須恵樹季が、体調不良で搬送され女子ストロー級2回戦は中止となった。


――試合を5日後に控えた久遠選手です(※取材は5月17日に行われた)。

「どうも! お久しぶりです!!」

――格闘技ファンにとっても、渡辺久江改め久遠選手のインタビューは久々となるかと思います。久遠選手は昨年キックボクシングの試合で復帰し、今年に入ってケージでMMAの試合を行いました。MMAとしては2016年6月のVTJ(パク・ジョンウンとドロー)から昨年まで、この5年間は何をされていたのでしょうか。

「VTJのあとも試合が決まっていたんですけど、実はその時に妊娠していることが分かって。出産したあと……ご察しのとおり離婚して、ドタバタしていました。実家に戻ってから落ち着いてきたので、何をしようかと考えたら、私には格闘技しかなかったということです」

――そうだったのですか。昨年11月にで久遠選手の修斗出場が発表されたとき、お子さんを連れられていたので驚きました。

「アハハハ。格闘技については、まだできるっていう気持ちが強かったので。だから何をするにしても、まずは格闘技をやってから考えようと」

――お子さんが生まれるまでは、格闘技の試合を見ることはあったのでしょうか。

「一切見ていなかったです。見ていると、格闘技をやりたくなっちゃうんですよね。すると、もどかしさというか、羨ましさというか……。今はRIZINに女子選手が出ているじゃないですか──父は格闘技が好きなので、テレビで見ているんですよ。すると私の目にも入ってくるし、知り合いからも連絡が来るわけです。そうやって格闘技界に関する情報は入ってくるんだけど、自分から見ることはなかったです」

――お知り合いから「RIZINに出ないの?」といったような連絡が来るのですか。

「それもあるし、あとは『久江ちゃんは、もう無理だよね』、『RENAって、チョー強くない?』とか。全然見ていないからって答えるんですけど、ちょっと見てみると、私もやれると思ったりして。そうなると余計に――格闘技したい、羨ましいって妬みの感情も生まれちゃうので、一切見ないようにしていました」

――久遠選手がプロデビューした2002年から、一度試合から遠ざかる2007年までは、地上波放送でMMAの試合が流れても、そこで女子の試合が行われることはありませんでした。なかには地上波テレビ局が、女子選手が殴り合う試合を放送したくないという方針だったという話も聞いています。その時代を経て、地上波でも女子の試合が流れるような現状については、どのように感じていますか。

「海外については裾野が広がったじゃないですか。日本だと浜崎さん? ……申し訳ないんですけど、あまりよく知らなくて」

――浜崎朱加選手がインヴィクタ世界アトム王座を獲得したのが2015年です。久遠選手にとっては、まったく絡んだことのない世代ですよね。

「そう考えると行き着くのは、私の甘さなんですよ。もっと自分が格闘技を追い求めていたら、その間も続けていたでしょうし、海外にも興味を持っていたかもしれない。時代は動いていたのに、私は動いていなかったわけで。でも今は、私の階級も海外で試合が行われているじゃないですか。選手も増えて、カッコいい選手も多いし。逆に国内は、私が出ていたスマックガールと同じ道を辿っているようにしか見えなくて」

――えっ、どういうことでしょうか。

「MMAをやっていない選手が、いきなりMMAをやって注目される。MMA選手×キックボクシング選手の試合をMMAでやるとか。それは地上波で放送されるか、されていないかの違いも大きいとは思うけど……。そういうのを見ていると、私もまだ戦えるんじゃないかなって。海外でも試合がしたいです。ただ、年をとって殴り合いはしたくない(笑)」

――1月の加藤春奈戦では、相手の左ジャブをもらって口から出血していましたが……。

「あの時ね、完全に試合勘がなくなっていて、なぜこんなにパンチをもらうのかなって自分でも思っていたんですよ。でも次の試合は、そんなことはないと思う。この間のキックの試合(3月に宮城でKARENと対戦してドロー)は、ちゃんと戦えていたから」

――加藤戦では、相手のパンチに対して反応できていない面がありました。その原因が試合勘だったとすれば、この4カ月で解消できたということですか。

「私の中では重心の問題で、動けるスタンスと動けないスタンスがあるんですよ。正直、今もそこは100パーセントにはなっていないです。まだ試合の緊張感が影響すると、ちょっとブレていたりするけど、ガッチリ合ったら昔以上に良いパンチや良い蹴りを打てる状態にはなっているので。

それに、次の試合が最後じゃないから。口から血を流そうが、目の上がパックリ切れようが、次の試合は勝てばいい。試合をこなしていって、1年後には完全に距離感を掴めるようになっていればいいかなって。

それでも……千優ちゃんって呼んじゃうけど、千優ちゃんをKOできると思っていますよ。そこで距離感が合わなかったらどうしよう、とか考えても仕方ないから。試合中にビビったら、完全に相手に飲まれて悪い展開になっちゃうし」

――距離感でいえば、ケージでレスリングベースの選手と対戦するのは、今回の澤田戦が初めてではないですか。

「そうなんですよ。ケージで戦ったのも、2016年のWSOF GCとVTJだけでしたからね。でも相手のタイプは気にしていなくて。今、そんな対策ができるような練習環境じゃないから」

――今はどのような環境で練習しているのですか。

「所属しているキックボクシングジム(ZERO)で打撃をやっていて、ねわざワールド宇都宮で柔術の練習に参加させてもらったりしています。コロナ禍じゃなければ東京に行って練習したいんですけど……。ただ、そういう出稽古じゃなく、日常的に練習したくて。今はチケットを売ったり、ツイキャス中継を買ってもらって入ってきたお金を、生活環境と練習環境に費やしたいですね」

――2010年ごろまでの久遠選手を考えると、当時とは全く違う環境にあるのですね。

「当時は一切何も考えていなかった。子供が生まれるまで、その日暮らしだったから。今は子供のためにも、チケットが売れるような選手にならなきゃいけないので。あとはルンピニーとか海外の試合にも出たいし」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
5月22日(日)
午後5時50分~ Twit Casting LIVE
             
■Shooto2022#03

<修斗環太平洋バンタム級選手権試合/5分3R>
[王者] 小野島恒太:61.2キロ
[挑戦者] 石井逸人:61.2キロ

<ストロー級/5分3R>
新井丈:52.2キロ
黒澤亮平:52.2キロ

<バンタム級/5分3R>
藤井伸樹:60.9キロ
齋藤翼:61.25キロ→61.2キロ

<インフィニティリーグ2022女子アトム級/5分2R>
久遠:47.6キロ
澤田千優:47.4キロ

<ストロー級/5分2R>
木内“SKINNYZOMBIE”崇雅:52.2キロ
阿部マサトシ:52.2キロ

<バンタム級/5分2R>
榎本明:61.1キロ
ガッツ天斗:61.0キロ

<フライ級/5分2R>
大竹陽:56.7キロ
須藤晃大:56.7キロ

<バンタム級/5分2R>
伊集龍皇:61.2キロ
川北晏生:61.2キロ

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