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【TORAO27】環太平洋ウェルター級ソーキにリベンジ戦、田村ヒビキ─02─「納得しないまま終わるのは嫌」

【写真】2019年6月16日に行われた前回の一戦。2年11月を経て、再び相対する(C)MMAPLANET

15日(日)、福岡市中央区のよしもと福岡大和証券 / CONNECT劇場で行われるTORAO27で、ソーキが持つ修斗環太平洋ウェルター級王座に挑む田村ヒビキのインタビュー後編。

ファイターにとって納得のいく試合とは、どのようなものだろうか? その答えを探してファイターは戦い続ける。2004年にプロデビューし、今年40歳になった田村に、そんなMMAファイターとしての練習環境とソーキ戦へのモチベーションを訊いた。

<田村ヒビキ・インタビューPart.01はコチラから>


――福岡に移ってから現在まで、MMAについてはどのような環境で練習されているのですか。

「今はウチのジムでもアマチュアとプロが育ってきたので、彼らとの練習があります。それと福岡では、T-REXアカデミーの中村(勇太)選手とか体格が大きい方と選手練習をやらせてもらっていますね。大阪からRYO選手も試合前は練習に付き合ってくれています。ここ1カ月ぐらいは北九州に帰ってきている田中半蔵選手と練習させてもらってきました。半蔵さんも同じ大会に出るんですけど、お互い次の対戦相手のタイプが近かったので」

――田中半蔵選手と練習されているのですか。

「はい。半蔵さんは昔、同じ修斗の大阪大会に出たことがあるんです。その時、半蔵さんは僕の練習仲間だったジャックナイフ・ツネオに、どえらいKO勝ちしていて。とんでもないパンチを出してくる選手やなぁって、その印象がすごく強かったです。でも練習してみると、組みも含めてしっかり総合的に強い選手で、フィジカルも強いし。同い年で、同じ時代に修斗で戦っていた選手なので、その半蔵さんと練習できるのは、すごくありがたいです」

――なるほど。最初に「前回の試合では納得のいくパフォーマンスができなかった」というお話がありましたが、田村選手にとって納得のいくパフォーマンスとは、何か明確な理想などがあるのでしょうか。

「理想の形というのは難しいと思うんです。僕もベテランと呼ばれる域に入りましたけど、これが完成形やっていうのは掴めていないんですよね。でも納得いく、納得いかないという部分でいえば、翌日のインタビューでも言った『試合で体が動かなかった』という原因が、試合間隔なのかモチベーションなのか分かりませんでした。

でも時間が経って、いろいろ考えてみると気持ちの面でフワフワしていたというか。それは後日、RYOさんと話した時に気づかされたんですよ。実際、試合で相手と向かい合ってもフワっとした感覚やったんですね。その状態で戦ってベストな動きができたかっていうと、全然できていなくて。これはイカンなぁと思いました」

――……。

「もう1回やって同じパフォーマンスしか出せないなら、それは自分の限界だと思います。でも練習したり考えているうちに、あれは自分のベストではないって、この何年間はずっとモヤモヤしていたんですよ。年齢のこともあるし、ジムのこと、コロナのこともあって、このまま選手を辞めてもいいんじゃないかという気持ちにもなりました。でも、そこをクリアしないとフワフワしたままやし、納得しないまま終わるのも嫌なので。これは言葉では言い表しづらいのですけど、自分のベストを出したうえで答え合わせをしたいんです。

そういう意味では、同じ相手とやったほうが答え合わせしやすいという考えもあると思います。前の試合から3年も経っているので、もちろんソーキ選手も強くなっているやろうし、もしかしたらファイトスタイルも変わっているかもしれない。だから前回と同じ試合になると思ってはいないんですけど……」

――前回の試合の気持ちについては、翌日のインタビューでは「落ち着いていた」という表現をしていました。そのあと考えた結果、落ち着いているというよりもフワフワしていたことに気づいたのですか。

「試合当日は緊張もなく、本当にフラットなメンタルだと、その時は思っていました。それは落ち着いているということなんだと。でも考えてみると、こんなこと今までになかった。相手と向かい合った時にスイッチが入りますし、気持ちは冷静には保ちますけど、そういう類の落ち着きではなかったなって。気持ちがフワフワしていた理由は、今もまだ分からないです。なので、どう表現したらいいのか微妙ですけど……」

――そうだったのですか。昨年12月にTORAOで森戸新士選手とグラップリングマッチで対戦した際は、完全にファイターの表情と試合内容だったので、そのお話を聞いて逆に意外でした。

「森戸君との試合は、楽しみのほうが大きかったです。MMAとグラップリングではルールが違いますし、特に打撃のあるルールでは気持ちの入り方も違います。でも久々にケージの中で試合をする、相手も森戸君という日本トップの柔術家と戦えるということで、楽しみのほうが上回っていました。あぁ戦えるって良いな、っていうメンタルで。気持ちは落ち着いていましたけど、フワフワしているようなこともなく。やってやる――そういう気持ちで試合をしていました」

――グラップリングのお話になりますが、森戸選手が足関節のエントリーに入った時、田村選手がヒザ固めで返したシーンは見応えがありました。

「そう言ってもらえるのは嬉しいです(笑)。試合前から、足を狙うことは考えていました。でも正直、まさか森戸君がいきなりヒールを狙うとは思っていなかったです。おかげで僕は一瞬テンパったんですけど、あのヒザ固めは練習でもやっている技だし、狙っていました」

――森戸戦の試合内容を考えると、MMAの試合がなくても気持ちをつくることはできているのだろうと思います。

「はい。前回の試合から3年、その間にクインテッドにも出ましたし、柔術の試合にも出て、森戸君との試合もありました。モチベーションも高く、気持ちをつくって試合に臨むことができます。だから前回のようなことはない、自分の中ではそう思っています」

――先ほど田村選手も仰ったとおり、次の試合については難しい面があります。この3年間、ソーキ選手もMMAの試合をしておらず、ソーキ選手がどんなファイターになっているか分からない。その点は不安ではないですか。

「データ的なものでいえば、前回自分が戦った感覚しかないですよね。そこから考えるしかないんですけど、3年も空いていれば大きく変わっているかもしれません。だからそこは相手どうこうよりも、自分が練習したこと――前回出し切れなかったものを出すしかないですね。データがないこと自体は、今まで海外で試合した時もそうでしたし。最後は自分がやってきたことを信じて、それを出すしかないので」

――では反対に、田村選手はこの3年間で何が変わったと思いますか。

「ずっとMMAの試合をしたくてもできなかった期間がありました。それが今回、試合をすることができる。もちろん技術的な成長もありますけど、まだ戦える――いや、まだ戦いたい。その気持ちが以前よりも強くなりました。今のジム生にも、最近はMMAで良い試合を見せることができていないので、そういう試合を見せたいです」

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