【BICW2022】BRAVE国際コンバットウィーク in バーレーン―03―『SUPER CUP。激強、これでアマ??』
【写真】チーム・バーレーンのフェザー級選手ハジ・モハメッド・アリ、えげつないコントロール力を見せていた(C)MMAPLANET
バーレーン3日目、9日(水・現地時間)より、BRAVE International Combat Weekの二本の軸の一つ、MMA SUPER CUPが始まりました。
IMMAFランキング上位6カ国に2つのワイルドカード・チームを加えた8チームが男子7階級、女子2階級の9×9の国別対抗戦を行い、優勝した国の協会に10万ドルの賞金が与えられるという今大会。
ロシアのウクライナ侵攻の影響で両国の参加が見送られ、参加チームはアイルランド、オセアニア、メキシコ、アラブ王者、バルカン王者、カザフスタン、バーレーンの8チームとなりました。
ハリファ・スポーツシティ・アリーナでは朝の9時からアイルランド×オセアニアが始まり、普通にプロレベルの攻防が目の前で繰り広げられていました。
ボクシングができて、蹴りが使える。テイクダウンもスクランブルも、バックチョークも下からの仕掛けも。彼らがチーム別のラッシュを着ていなければ、誰もがプロの試合だと思ったはずです。
3分×3R、ヒールなし、エルボーなし。パウンドありを普通に戦い、何よりも怖いのはフライ級からヘビー級まで選手を揃えられて、一定以上の力をアイルランド勢、オセアニア勢が揃って持っていたこと。これは脅威意外の何ものでもないです。
ヤバいなぁ、日本は……とすぐに考えてしまうのですが、続くメキシコ×アラブ王者を見て、ここでベスト6に入るのか――なら、それほど悲観することないと思いなおすことができました。
ただし、それは余りにもアラブ王者チームが非力だったことも影響しているに違いありません。
早々に5勝を挙げたメキシコ勢は、それ以降の選手が翌日の準決勝を考慮してエナジーセーブ、試合開始直後にタップするという01秒決着後は、入場して不戦敗→ついには入場もなくメキシコ勢の勝利が場内に伝えられました。
ルールの盲点というか、先に対策が講じられて然りの状況において、この日のために準備をし、計量も済ませたにも関わらずヘラヘラ笑いながら、不戦敗を伝えるメキシコ勢を呆然と見つめるアラブ王者チームの後半出場予定だった4選手が、気の毒すぎました。
この試合後、会場ではカザフ×バルカン王者チームの試合が実施されましたが、記者団はマナーマ市内に戻り、BRAVE CF57の公開会見場であるオアシス・モールへ向かいました。
金曜日開催のBRAVE CFではバンタム級王座決定戦=ハムザ・コヘジ×ブラッド・カトーナ、ライトヘビー級王座決定戦=モハメド・ファフレディン×モハメド・サイード・マレム、暫定ライト級王座決定戦=アブディサラム・クバチニエフ×クレイトン・シウバら3つのタイトル戦を中心に、中央アジアなど旧ソ連圏、アラブ国家と世界17カ国から選手が集う、その日本での無名ぶりが楽しみでならない大会です。
会見にはバンタム級とライトヘビー級王座を賭けて戦う4選手、暫定ライト級のベルトに挑むクバチニエフとバンタム級戦出場のモハメッド・ファハッドが出席。ちなみに彼らの国籍はバーレーン、カナダ、レバノン、アルジェリア(※スイス在住)、キルギス、インドとなります。
選手権以外の試合の出場選手であるファハッドの会見出席とあいなったのは、マナーマにもヒンドゥー寺院があるようにバーレーンの労働力の主となっているのがインド人ということが影響していると思われます。
実際、会見のあったモールで「ラムを食べたい」とインフォメーションで尋ねると「アラビックのレストランはない。インド料理と中国料理がある」と言われたほどです……。ちなみにモールやホテルで働く人々は。英語はマストのように話しています。
そして両替所ではパキスタンやアフリカの家族に送金する人たちの姿が目立つ――市中を歩く機会はほとんどないなかで、感じたバーレーンの様子です(スーパーではアルファベット表記だけのフルーツジュースと、アラビア語表記のあるジュースでは値段が3倍ほど違うのと、ローストされたアーモンドを購入して、ホテルの部屋でグラスに入れておいても、まったくしけることがないほど、乾燥しています)。
閑話休題――会見では、思わぬバーレーン人気質を直視し驚かされました。メインで同国のヒーロー=コヘジと対戦するカトーナへのブーイングが半端なく、「僕はBRAVE CFで2勝、他でのキャリアは彼と違うし、そういう場所でタフな相手に勝ってきた」という発言に、「ステロイド!!」というヤジが飛ばすファンまでいるほど。
カトーナは苦笑いを浮かべながらコメントを続けると、コヘジ・チャントで妨害するという徹底ぶりでした。素直に、この人たちともめたくない――そう思った次第です。
そんな会見を終え、ハリファ・スポーツシティ・アリーナへトンボ帰りすると、SUPER CUP最後の準々決勝バーレーン×タジキスタンの開始直前でした。
実は雑誌の締め切りと、週末の世界各国の大会の記事を書くためにホテルに戻ろうとしていたところ、BRAVE CFの広報として働くブラジル人のジョアオ・ヴィトー君に「この試合を見ないと後悔するよ」と言われ、「ほんまかよ」と思いつつ同行した次第です。
ヴィトー君から直前に――自分も現地に行った2011年8月のUFCリオ大会=アンデウソン・シウバ×岡見勇信をブラジルの新聞社在籍時代に取材していたことを聞かされ、何より長年の友人でありブラジルMMAメディアのパイオニア=マルセーロ・アロンソを崇拝している彼の言葉を信じてみようと思った次第です。
結果、これはもうアマチュアではない。そしてブラジル人とロシア人で構成されたチーム・バーレーンに対して、タジキスタン勢の奮闘ぶりは……こ、本当に世界と戦うということは、どういう意味を持つようになるのか。再度、考えを改めないといけないことに気づかされました。
彼女は1月のIMMAF世界選手権の優勝者で、素晴らしい切れのジャブから蹴りのコンビネーション、さらにテイクダウン後も一本こそ取れなかったですが、RNCや三角絞め、腕十字とアグレッシブに攻め続け、判定勝ちに不満を感じるという強さを見せつけました。きっと1Rが3分でなく5分なら試合を終わらせていたに違いありません。女子戦の印象が強くないBRAVEですが、今後どのようなキャリアを積んでいくのか要注目です。
さらに2番手の女子バンタム級には前回のADCC女子60キロ級世界王者ビア・バジリオがバーレーン国旗を掲げて登場!! 荒いが馬力あふれる打撃から、テイクダウン――ここから先のマウント奪取、殴って腕十字という流れは見事の一言、反則モノの強さでした。
反則モノといえば、ウェルター級に出場したロシアからの帰化ファイター=ラマザン・ギチノフです。対戦相手のジョビドン・マクムドフがまた素晴らしいテイクダウンディフェンスと正確かつパワフルなストライカーだったことが、ギチノフの強さを際立たせました。
先の世界選手権MVPのギチモフが、マクムドフの打撃に屈せず組んで消耗させまくると、最後は逆にテイクダウンを狙ったマクムドフをアナコンダチョークで仕留め、世界大会決勝の再戦で返り討ちを果たしました。
フォークスタイルこそMMAに欠かせないという自分の信念にも似た想いを改める必要があるのか。とにかくロシアからの帰化選手に限らず、中央アジアやコーカサス勢のケージレスリングの強さはずぬけています。そしてBRAVEの中東勢は、そんなダゲスタンでキャンプを張る環境を持っています。
こんなアマチュアあってたまるか。EXFIGHTが可愛く見える……。日本だと修斗、パンクラス、DEEPの王者クラスの力が既にある、そう思ってしまうギチモフらバーレーン勢、準決勝はバルカン王者チームを5‐0で圧倒したカザフ勢とのマッチアップとなります。
「これ、見ない方が夢を見ることができた……」。ホテルに戻り、ざくろジュースを飲みながら「来て良かっただろう」と満面の笑みを浮かべるドラえもん体形のヴィトー君を思い出し、チョッピリ恨みたくなるSUPER CUPのレベルの高さでした。