【UFC】2021年12月30日(現地時間)の佐藤天「1回で良いんです。チャンスを与えてくれれば……」
【写真】2021年の締め、佐藤天インタビュー。インタビューから7時間後――この選手を声を今日、この時間に伝えておきたいと思いました(C)TAKASHI SATO
佐藤天が最後にUFCで戦ったのは、昨年11月28日。ミゲール・バエザに敗れ、オクタゴン戦績は2勝2敗となった佐藤に2021年は次が訪れないままだった。
この間もフロリダ、サンフォードMMAでUFCやBellagtor、PFLで戦うチームメイトと日々切磋琢磨してきた。それでも試合がない――現状を佐藤はどう考えているのかを尋ねた。
「ここで改めて説明させていただくと、まず去年の11月の試合が終わった時点で、UFC戦績は2勝2敗で契約更新できるのか、見えていない状況でした。試合から数日後、UFCからはコロナ禍もあり『ショートノーティスの可能性が高くなるけど、フロリダにいるならオファーを出す。その時点で契約更新になる』という連絡があったんです。
で5月か6月には試合をできるということだったので昨年末の帰国から、1月に米国に戻り4月からはファイトキャンプ状態で練習を続けていました。でも、なかなかオファーこない状況が続きました。夏過ぎにはもう一度しっかりと交渉をしてもっても決まらなかったです。僕としては自分ができることをするだけなので、1週間前のオファーでも受けられるように常に体重もキープしてきました。コンディショニングのトレーニングもずっとしてきたのですが、気が付けば12月になっていました(苦笑)」
――まったくオファーがなかったのですか。
「実は12月4日の大会の緊急オファーが11月の終わりにありました。もちろんOKしましたし、対戦相手の受けてくれました。そうですね、10日前ぐらいのオファーでした」
――でも実現しなかったのは?
「実は前回の帰国から米国に戻る際にP1ビザが切れていて、Bビザで入国したんです。で、オファーがあるとP1に切り替えるということでフロリダで練習してきたのですが、オファーがあったのが感謝祭のころで……。行政もストップ状態で切り替えができるのが、試合の2日後になるということで戦うことができなかったんです」
――……。いや、なんと言ってよいのか。商用観光ビザだと米国で働くことはできないですからね。
「結果、1月か2月かになるから引き続き準備をしておいてくれという連絡があったのですが、今、コロナの影響でビザの切り替えが、通常は4、5日だったのが2週間から3週間ほど掛かる状況で。そうなるとスクランブルのオファーは受けることができない……。それが現状です」
――う~ん、いやぁ2勝2敗。こういうとアレですが、FCがそこまで佐藤選手にオファーを出さないのはどういうことなのか。
「カミやヘンリーも『ファイトスタイル的に好かれているはずだ』と言ってくれていたのですが……僕は米国にいる外国人選手ですから、与えられたチャンスは手にしないといけないというのは十分に理解してきたつもりです。ただUFCからのドーピング検査も受けて、『試合を組みたい』と言ってもらっても、この状況が続くのは……」
――UFCで戦いたい気持ちを持ち続けている佐藤選手ですが、キャリアを続ける上で他の選択や帰国を考えることはなかったですか。
「コーチたちとも『選手として、試合をしないのは良くない。また1年とか待つことになると、良い時期を逃すことになる』という話にはなります。なので他の団体の意向も聞いてみようという気持ちはあります。
ただし日本に帰るということは全く考えていないです。ヘンリーだけでなく、ヘンリーの奥さんもそうだし、サンフォードの皆が僕のことを大切に思ってくれて。ウェルター級で欠場があると、すぐに動こうってアンテナまで張り巡らしてくれるほど気遣ってくれるんです。
もうぶっちゃけていうと、他のプロモーションから夏ごろにオファーがありました。でも、断らせてもらったんです。やっぱりUFCで戦いたい。もちろん、今もその気持ちです。ただ、ここまでくると他のプロモーションの話も聞く……ということですね」
――UFCは世界最高峰です。だからといって、佐藤選手より力のないファイターとも契約しているじゃないかと、怒りすら自分などは覚えてしまいます。
「怒りというか……求められないのは、辛いです。だから試合があれば、しっかりと見せる。そのために練習をし続けています。まぁ、キツイことはキツイです。ただ自分は自分の中にある価値観、それを大事にしています。選手としての商品価値、どう見えるのかは周りが判断することで。自分のなかで曲げたくないことがあります。その気持ちがあるから、サポートしてくれる人たちもいる。そういう人たちの気持ちも大切にしたいです」
――BELLATORやPFLでも、日本で戦うことができない強い選手と戦えるので、他の選択があっても……と勝手ながら考えてしまいます。
「もちろんBellatorやPFLで戦っている選手たちの強さを知っていますし、彼らがUFCで戦っていないから、選手として価値が劣るとは全く思わないです。ただ、もう自分の意地なのかもしれないですが、1回で良いんです。そのチャンスを与えてくれれば、全てを賭けて掴みにかかる。そのチャンスを1回、1回ごとに掴む。そういう厳しい状況で戦っていくことが、自分の成しえたいことなんです。
BellatorもPFLも本当にレベルが高いです。でも、手が届かないところに挑戦したい。その気持ちは捨てきれないでいます。本当にあと1回で良いです。結果が出なければ自分はダメなわけで。ホントに1試合、5分×3Rを戦う機会が欲しい……です。そういう気持ちでいます。
上をいくらでも見ることができる一方で、嘘をつくことができないところで自分は格闘家として結果を出したい。そこを曲げてしまったら、自分じゃなくなります。そんなことをしてしまうと、同じ気持ちで応援してくれていた人達を裏切ることになる。
なによりも、自分が自分を嫌いになりそうで……」
――ホントにUFCって何なんでしょうね。佐藤選手や田中路教選手の生き様を見させてもらうと……本当に、どんだけなんだよって。
「中学、高校と格闘家に憧れて成長しました。その憧れの人たちが勝てなかった場所がUFCです。同じことをやっていたら、自分も勝てない。だから自分は違う選択、可能性に賭けて今の選択をしました。やっぱり粘りたいです。何度も言っていますが1試合……、1度で良いです。チャンスが欲しいです」