この星の格闘技を追いかける

【Bellator272】セルジオ・ペティスのセコンドを務める平本蓮─01─「ここで死に物狂いでやっていれば…」

【写真】サンクスギビング・デーのディナー前の時間を拝借して、平本蓮に米国での日々を話してもらった(C)MMAPLANET

12月3日(金・現地時間)、コネチカット州アンカスビルのモヒガンサン・アリーナで開催されるBellator272で堀口恭司の挑戦を受ける、Bellator世界バンタム級王者セルジオ・ペティス。世界チャンピオンはこの防衛戦のコーナーマンに9月からルーファスポーツで練習している平本蓮を指名した。

K-1から鳴り物入りでMMAに転向も、昨年の大晦日のRIZIN26で萩原京平にTKO負けを喫した平本は、9月から僅か3カ月間の米国生活でペティスから絶対の信頼を得た。

デューク・ルーファス率いる米国のMMAトップアカデミーで平本は何を体感し、経験を積んできたのか。そしてセルジオ・ペティスによって学んだMMAにおける自らの打撃の生かしたかと、MMAファイターとしての成長を訊いた。


──なにか周囲から楽しそうな声が聞こえてきますね。

「ハイ、デューク・ルーファス(ルーファスポーツMMAのヘッドコーチ及び経営者)のファミリーにサンクスギビングデー(感謝祭)の食事に誘われて。今日がそういう日っていうのも知らなかったので、インタビュー時間と重なってしまってスイマセン」

──いえいえ、そこまで馴染んでいることに逆に安心感を覚えます。

「ホント、皆が良くしてくれます。暖かくて迎え入れてくれて、嬉しいです」

──先日、セルジオ・ペティスのインタビューをした際に自分としては、どこかで平本選手はどのような感じですか──ぐらいで質問をしようと思っていたところ、彼が平本選手をベタ誉めして。

「アハハハハ。メチャクチャ嬉しいです」

──この短期間にここまで信頼関係を築けたことに驚きました。

「実は僕が米国で練習しようって思ったのって、去年Fight&Lifeでハセケン(長谷川賢)さんとインタビューしてもらった時に、高島さんが『アメリカは行かないとわからない』って強い口調で言っていたからなんですよ」

──ホント、軽々しく強調してしまって申し訳ないです。

「アハハハ。そんなことないです。それで去年の大晦日に萩原(京平)戦で負けて、本当に悔しくて。このまま分からないんじゃなくて、米国に行ってMMAが分かりたいって思ったんです。結果、ミルウォーキーに来て米国の生活に馴染んでいます(笑)」

──米国の有名ジムに行けば良い練習はできると思います。ただし、馴染めるかどうか別で。馴染めることで練習もより成果があるのではないかと。普段が楽しくないのに、練習が日本より良くなるわけがないと自分は思っています。

「ファッションとか音楽とか趣味的なことでも話が合いますし、人間関係のストレスがないのも大きいです。格闘技のことだけを考えて日々を過ごすことができていて」

──平本選手は思ったことを面と向かって、ストレートに言葉にする。そこで相手のリアクションがあるのは、英語を操る文化圏にフィットしやすいのかと。

「ホントにストレスがなく過ごせています。この3カ月でイチから人間関係を構築してきて、その中で気持ちが伝わればOKみたいなところがあるなって。格闘技は幸いなことに世界共通語があって、練習はもう全く問題なく日本以上に飲み込めている気がします」

──英会話は段階がありますが、まずは恥ずかしがらずに気持ちをぶつけること。時制の一致なんてどうでも良いと思います。こちらの気持ちを受け入れて、聞き取ろうしてくれる人には通じるかと思います。

「そうですよね、分かります。エリックっていうキックのトレーナーがいるんですけど、今日のパーティにもいる人で、僕より2カ月前にこっちに来たばかりだから、知り合いも少ない者同士でいつも一緒にいるんです。車で色々なところに連れて行ってくれたりして。

とにかくエリックには翻訳機も使って何かを伝えようと話してきたから、他の皆には通じない言葉も分かってもらえるんです。で、『レンはこういうことを言っているんだ』と英語から英語にエリックが通訳をしてくれて(笑)。

日本にいる時は打撃のことを尋ねても、『打撃は平本君の方が分かるから、自分を信じれば大丈夫』っていう風に遠慮されることが多かったです。それがこっちではデュークとかも『キックはこうだけど、MMAはこうだ』っていう風にバシバシ言ってくれます」

──デュークが元キックボクサーで、GLORYの解説者をするほどでしたから、キックへの造詣もありますし。とにかく言葉にする文化ですよね。間違っていたら、ゴメンと言って。全てがそうじゃないですが、日本よりは少なくとも口にする文化だと自分も思っています。

「ハイ。だから、僕はここに来るべくして来たんだと感じました。日本だとMMAの練習をしていて、僕の打撃はビビられていると思います。でも、こっちは関係ないんですよ。K-1もキックボクサーも関係なく、ガンガン来ます。久しぶりに殴り合ったなって、逆に新鮮でした。結果、殴り合ったことで皆の見る目が変わって。それで認めてくれました。

で、時差ボケが直ったぐらいの時に、初めてセルジオとスパーリングをしたんです。正直、日本での練習ではMMAスパーでもテイクダウンを警戒して、打撃を意識するということはなかったです。

でもセルジオとかになると、そうはいかないです。普通にキックボクサーで。『しっかりガードしないと危ない』と思いました。そのうえでテイクダウンも速いわけじゃないですか。初めてセルジオとぶつかり合いを経験した時に、凄く感動して。『ここで死に物狂いでやっていれば、間違いなく強くなれる』と思い本当に練習が楽しくなりました。

他の選手も組んでいる最中でも、いきなり殴ってきますしね(笑)。躊躇ないです。でも、殴ってくる相手に殴られて冷静にいられるようにもなって」

──大丈夫だと思っているとカッとしますが、そうじゃないから冷静になれるということでしょうか。

「ハイ。そういう感じです。それもセルジオがすぐに『リラックス!!』って声を掛けてくれたのも大きいです」

──いやぁ本当にハマったのですね。ルーファスポーツが。

「米国に来るまでに組み技の方は、相当に練習をさせてもらっていて、自分のなかでは基礎は身に着けたと思ってやってきたのですが、レスリングのクラスの後もセルジオとUFCファイターのジェラルド・マーシャードが色々とアドバイスをくれます。最初の頃は本当にきつかったんですけど、今、気付いたら自分は総合格闘家になっている。そんな自分にビックリしている感じです(笑)」

──平本選手は自分で色々と考えることができる選手なだけに、練習と合致させるという部分で難しいこともあるのではないかと、実は思っていました。ただ米国に行く前に相当にMMAとして基礎が身についているとも練習仲間から聞いていました。

「シンプルに言って、デビュー戦を戦った頃は寝技に関して僕は素人でした。あの試合後にテイクダウンディフェンスだけでなく、パンチの技術も含め全部変えていかないといけない……一旦全て白紙にしようと思いました。

自分の拘りを捨ててストライカーだ、どうだということでなくてMMAを戦う上で一番強くなれるスタイルを創っていこうと。そこから組み技や寝技に関しても、色々と練習をし、質問をして知識を増やしてきました。結果UFCとか見ていて、自分だったらどうなるかとか考えることができるまでにはなっていたと思います。

ただ教えてもらったことを組み合わせていくのは自分の作業だったのが、こっちに来ると打撃、テイクダウン、スクランブル、寝技、それらの組み立て方と答えがあって。そこを鍛えてもらうことで、強くなれている。大晦日の試合では寝かされるとヤバイから、とにかく打撃を当てないといけなかったですが、今はテイクダウンも切ることができるし、寝かされても立てば良い。そして一から殴って、蹴ってとやっていえば良いという考えになりました」

──そうなると、余計に打撃が生きますね。

「ハイ。本当にステップアップできていると思います。だから試合をしたいですね。試合をして分かることってあるので。小さい頃からキックの練習と試合を続けてきましたけど、今、ここにいて初めて努力していると感じないで、努力することができるようになりました。なんか全然疲れないんですよ。明るい明日があるから、追い込んでも疲れないのか。ここまで追い込んでいるのに、なぜ疲れないのか分からないです(笑)」

──ゾーンですかね(笑)。

「あるとすれば格闘技に集中できているから、そこかなと」

<この項、続く

■BELLATOR272視聴方法(予定)
12月4日(土)
午前9時00分~ U-NEXT

PR
PR

関連記事

Movie