【DEEP104】フライ級チャンプ神龍誠戦へ、福田龍彌─01─「平良戦で勝っても返上するつもりやったんで」
【写真】一区切りのつもりで戦っていた7月の平良戦 (C) MMAPLANET
23日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるDEEP104で、元修斗世界フライ級王者・福田龍彌が現DEEPフライ級正規王者の神龍誠と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
今年6月、平良達郎に敗れて修斗のベルトを失った福田。対する神龍も昨年8月にRIZINで行われた伊藤盛一郎戦以来の復帰戦であり、その両者の対戦は驚きでもあった。
福田が新しい戦いの場としてDEEPを選んだ理由とは? そこには、福田らしい格闘技観が存在していた。
――今回のDEEP参戦、そして現フライ級正規王者の神龍誠選手との対戦には驚きました。まずDEEPに出場することになった経緯などを教えていただけますでしょうか。
「純粋に競技を楽しみたい。ワクワクする試合がしたい。それが一番ですね」
――純粋に競技を楽しみたい、というと?
「戦う場所が欲しいんです。競技者として、練習するだけじゃなく、練習したことを試す場が欲しい。僕、今までずっと地方大会で戦ってきたじゃないですか」
――修斗の大阪大会はもちろん、高松大会や沖縄大会に出場してきましたね。
「基本的に試合のオファーは、よっぽどのことがないかぎり受けてきました。でも、なかなか試合の場がない。いつオファーが来るか分からない状況が続いて……。なのに、僕に負けた選手が先に東京で試合をしたりしていて。コロナ禍っていうこともあるんでしょうけど」
――それだけ、後楽園ホールで試合をすることに対して、こだわりがあったのですか。
「後楽園ホールとか、会場そのものじゃないんです。僕が最初に格闘技を見始めた頃は、先輩たちは結果を出したら後楽園ホールに出ていた。地方大会とか下北で勝ち残ったヤツが、後楽園ホールで潰し合う。そういう場だったんですよね。僕も29歳になって、ケガも多くなりましたし、あとどれくらい選手生活できるんかな、って考えることも増えたんですよ」
――……。
「それを考えたら、『福田を使ったら面白いんちゃうかな』って思ってもらえるところで戦いたいと思ったんです」
――もう修斗フライ級では、次に戦いたい相手も思い浮かばなかったのでしょうか。敗れた平良選手との再戦、という可能性もあったかと思います。
「いや、もともと平良くんとの試合で修斗は一区切りにするつもりでした。勝ってもベルトを返上するつもりやったんで。試合が終わってから関係者の方にも『お世話になりました』と挨拶しています。もしかしたら、僕が引退すると思われたかもしれないですけど」
――ベルトを賭けるかどうかはともかく、平良選手にリベンジしたいという気持ちはないですか。
「リベンジ……特にないですね。もちろん、勝てへんかったのは、純粋に悔しいです。もう1回試合する機会があれば、勝ちに行きますよ。でもそれは、縁があればっていうことで」
――ベルトには興味がなくなったということですか。それともDEEPのベルトを狙いに行くという気持ちはありますか。
「ベルトが欲しいという気持ちが、ないわけではないです。ただ――成り上がってやろうという気持ちが無くなったといったら変だけど、肩書や大金が欲しいとか、そういうことは求めていないんですよ」
――というと?
「僕は他にも仕事をしていて、格闘技だけで生きているわけじゃない。格闘技はライフスタイル、僕が僕であるためにやっていることで。そのために、戦う場が欲しい。とにかく戦う人間でありたい、戦う職人でいたいんです。強い相手と実力を試していきたいんですよ。」
――分かりました。では、次に戦う場所としてDEEPを選んだ理由を教えてください。
「今DEEPフライ級には、いろんな選手が集まってきているじゃないですか。佐伯(繁DEEP代表)さんが『フライ級でトーナメントをやりたい』みたいなことを言っていると聞いて。僕も修斗の新人王以外、トーナメントに出たことがないから、それも楽しそうやなと思って」
――福田選手は以前にもDEEPに出場したことがありますよね。
「DEEP大阪大会ですよね(2019年4月、安谷屋智弘に判定負け)。あの時も、修斗で試合が組めないなら他で試合させてください、っていうことは修斗側に伝えて、DEEPに出させてもらいました」
――その安谷屋戦から2年ぶりのDEEP参戦となるわけですが、対戦相手が神龍誠選手となったのは……。
「ビックリしましたよ。まさか、いきなりトップと対戦できるとは思っていなかったです。DEEPに出ている人、神龍選手が持っているベルトを目指している人に対して申し訳ない」
――申し訳ない……試合の煽り映像でも「他のDEEPに出ている選手には申し訳ないと思うんですけど」という言葉がありましたが、あれは他のフライ級のファイターを煽るものではなかったのですか。
「違います。自分はDEEPでは新参者で、しかも前の試合では安谷屋選手に負けているじゃないですか。なのに藤田(大和)選手は暫定タイトルマッチで、自分が正規王者とノンタイトル戦……ごめんね、という気持ちが強いです。僕自身が、そういうもどかしい想いを抱えて戦ってきたから」
――神龍選手の復帰とタイトルの扱いについては、タイミングもあるので仕方ない部分はあるかと思います。その神龍選手との試合を、後楽園ホールで迎えます。
「後楽園ホールに対して、もう憧れはないです。後楽園ホールで対戦できるのは嬉しいですけどね。でもケージがあって、戦う相手がいれば一緒やから。別に会場が広島でも沖縄でも、宮城――神龍選手の地元でもよかった。神龍選手と対戦できるなら、どこでもいいですよ。それだけの相手やと思っています」
<この項、続く>