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【PFL2026#07】ベンソン・ヘンダーソン、42歳の復帰戦。「自分の人生は自分で豊かにできる」

【写真】試合前からファンに活力、勇気を与えることができる。そんな言葉を聞かせてもらった (C)MMAPLANET

23日(土・現地時間)、ベルギーはブリュッセルのINGアリーナで開催されるPFL 2026#07「Brussels」のメインで、地元の新鋭パトリッキ・アビホハと対戦するベンソン・ヘンダーソン。元WEC及びUFC世界ライト級チャンピオンが、3年2カ月振りにMMAを戦う。
Text by Manabu Takashima

2023年3月にウスマン・ヌルマゴメドフの持つBellator世界ライト級王座に挑み、初回でRNCにより敗れたベンヘンは数々の栄光を手にしたケージを後にした。

UFCやBellatorのトップ戦線で戦っていた当時からグラップリングや柔術の試合に出ていたベンヘンは、Karate Combatやボクシングマッチなど打撃の分野にも進出。さらにはレスリングでアルジャメイン・ステーリングと戦うなど、格闘家としての活動は続けていた。

昨年も幻に終わったGFLで再起という話もあったが、イベントがキャンセルされたことでベンヘンのMMA復帰の話も立ち消えていた。それから1年を経て、PLFでレジェンド対決でなく欧州を代表するヤング・プロスペクトのアビホハと戦うことが発表された。

楽しむために競技活動を続けてきたと言うベンヘンが、再びMMAを戦う理由を訊いた。


僕が何者かといえば、MMAファイターなんだ

――ベンソン、お久しぶりです。

「本当に、久しぶりだね」

――再びMMAファイター、ベンソンにインタビューができる日が来るとは思っていなかったです。まず復帰を決めた理由を教えてもらえますか。

「PFLから尋ねられたからだよ。PFLのヘッド・マッチメーカーはBellatorのヘッド・マッチメーカーだったマイク・コーガンだ。僕らはずっと良い関係で、彼からテキストが送られてきたんだ。『おお、すぐに既読になったな』って電話がきた。僕がレスリング的なことや、ボクシング的なこと、そして柔術のコンペティションに出ていることが話題になった。

柔術もレスリングもボクシングも楽しむためで。MMAを引退した後もトレーニングは続けていたから、試合に出て楽しみたくなるって話したんだ。そうしたらマイクは『皆、まだ君のことを覚えている。ベンソン・ヘンダーソンが何者で、何をしてきたかを』と言うから、『マイク、何が言いたいんだ。ハッキリ言ってくれ』と伝えた。

すると『PFLでMMAの試合を組む。だからシリアスに考えて、シリアスに練習をしてほしい』と言われた。で、『分かったよ。良い話だ。OK』と返事をして決まった」

――そんな簡単なやりとりで、3年2カ月振りの試合に出ることになったのですか。

「MMAの試合を戦うのに、僕がシリアスにならないわけがない。マイクは、それが分かっていたんだ。そしてパトリッキ・アビホハの名を聞かされ、試合は5月23日になることも聞いた。電話があったのは、3月の終わりか4月の最初だったよ」

――準備期間は2カ月弱。去年のGFLで復帰という話もあったベンソンですが、ここまでMMAで成功を収めてきたのに、まだやり切ったという気持ちではなかったということでしょうか。

「もう十分にやって来たとは思っている。そして、いかなる面で、より良くなる努力を続けてきた。ファイターだけでなく、夫として、父親として、そして息子として。その方がベター・ファイターになるより大切なことだった。でも、自分がどういう人生を歩んできたのかも分かっている。常にマーシャルアーツを追求してきた。

僕が何者かといえば、MMAファイターなんだ。それに子供たちも少し成長して、父親が何をしているのか分かる年齢になってきた。子供たちに、試合までの取り組みからファイトまでを――良い生き方の一例として見せたい。どのように努力して、成功を手にするのか。別にファイターだけじゃない、レポーター、ドクター、法律家、歯科医。何を目指そうが、ハードワークの意味と一生懸命努力することの大切さが分かるように」

――楽しむために戦っていたとベンソンが言っていたRAF(レスリング)、ACBJJやADXC(グラップリング)、MF&DAZON X Series(ボクシング)、キックボクシング(Karate Combat)の出場ですが、常にグッドシェイプを保っていたように見えました。

「MMAを公式に引退しても、ジムでのトレーニングは毎日続けてきたからね。練習をしていると、ファイターとしての成長も感じられていた。トレーニングをストップすることはなかった。だから、グッドシェイプでい続けることはできたと思う。

本当に練習スケジュールも、現役時代と違いはなかった。技術やシチュエーション、ハード・スパーリング、ハード・レスリングも続けていた。ただ、ウェイトはしていなかったから小さくはなっている。筋肉量は落ちていた。それらの試合に出る時も、特にウェイトをやるわけではなかったし。ただ、MMAに復帰することを決めてからウェイトを再開して、体を強くしている」

――フィジカルとカーディオを強化するような形で、調整を進めてきたということでしょうか。

「そうだね。カーディオは僕のメインウェポンだから。ずっとスタミナには自信を持ってきた。だから強化したのはウェイトだったよ。体を強くすることに力をいれてきた」

――楽しむための出場だったとしてもボクシング、グラップリング、レスリングという個々のルールで試合をすることで、何かMMAに役立つことはあると感じていますか。

「MMAを戦っていた間、僕自身は極めてウェルランディット・ファイターだったと思っている。対戦相手も、そのつもりで戦っていたはずだ。ボクシングのルールでは、ボクシンググローブをつけて、ボクシングで勝とうとする。レスリングではシングレットを着てレスリング・ルールで戦い、レスリングで勝利を目指す。K-1やGloryに出ていたら、キックボクシングで勝つために戦う。ムエタイを戦っていたら、ヒジやヒザ蹴りを使っていただろう。そういう個々のルールで戦うことが、凄く良い経験になるのは絶対だ。

パトリッキ・アビホハに対してはレスリングの試合で勝てるし、キックボクシングの試合でも勝てる。ムエタイでもMMAでも勝てるだろう。どの局面においても自分の技術、スキルに自信を持っていて、彼に勝つことができる。

彼が勝てる可能性が一番あるのはボクシングだろう。スローで退屈なボクシングになればね。でも、僕の積極的なペースに、彼は防御も攻撃もついてくることはできない。持ちうる全てを駆使してMMAを戦う。僕は掌の上で彼を躍らせて試合に勝つ」

――凄く自信があるようですが、パトリッキは新時代を代表するファイターになる可能性を持つ新鋭です。このタフな相手と試合をする前に、MMAルールでチューンナップファイトは必要なかったでしょうか。

「MMAを戦うからといって、チューナップ・ファイトは必要ない。もう、僕には十分な経験がある。それだけの経験を僕はしてきた。厳しい戦いをやってきたからね。僕が引退を発表した時には、皆が十分に戦い続けてきたと思っていたじゃないか。

その後もレスリング、ボクシング、グラップリングとイージーな相手、イージーな試合をしてこなかった。ずっとタフな戦いをしてきた。アビホハはコーチがしっかりしているのか、キャリアの序盤から良い相手と戦わせてきたようだ。8勝0敗とはいっても、5、6試合はタフな相手じゃない。アビホハのための試合だよ。

最近の2試合は元UFCファイターと戦い、そこを超えた。本当に良いキャリアの積み方を用意してもらっている。結果、僕と戦うことになったわけだけど、ちょっと彼にとってこのステップアップは大きすぎる。きっと僕のことなんて、年を取って枯れているとでも思っているのだろう。簡単にはいかせない。僕が何者であるかを示し、経験の差を見せつける。絶対にね」

――この試合後も現役を続けるつもりでいるのでしょうか。

「どうだろうね。PFLとは3試合契約をしているから、また戦うことになると思う。もっと戦いたいと思って、自分をプッシュできるなら最高だよ。同時に、もう2度と戦わないという判断をすることになっても最高であることは変わらない。自分のキャリアに満足して、その判断をするのだから。

パトリッキに勝った時、僕自身がどう思うのか。試合で競い合うことが好きだし、ハイレベルなコンペティションで戦い続けることができるなら戦う。体が戦うことを許してくれるならね。

ただ、もう××と戦いたいとか、世界のベルトを巻きたいとか。そういうことで戦っているわけじゃない。良いマッチアップだと思えば戦うかもしれないし、そうならないかもしれない。僕自身は柔術のワールド・マスターでも戦っていると楽しいから」

好きなことがあるなら、やりたいことがあるなら、年齢なんて関係ない。貪欲に、ハングリーに、そして努力をし、その道を究めて欲しい

――ベンソン、今もうMMAファイターとして強さを証明するための戦いではないなかで、実戦を通して何を見せたいと思っていますか。

「子供たちに努力をすることによって、得られることがあるということを知って欲しい。それはこの試合を視てくれる世界中の人々にも当てはまることだ。年を重ね、40歳以上になったことで自分に制限を与え、もうできないと思っている人が多くいるかもしれない。そんな人たちに、僕の試合を視て欲しい。

母は64歳だ。そして、若い頃にできなかったと言って学校に通い出し、やりたい学習に勤しんでいる。彼女はコンビニを過去20年経営して、成功を手にしてきた。でも、もっと勉強がしたいと思い続けてきたんだ。韓国から米国に移住してきて、途中で勉学を諦めないといけなくなったから。母から、成長する姿勢とは何かを学ばせてもらった。

63歳から勉強をやりなおしている母は、きっと75歳になった時に『あの時、トライして良かった』と思うことになるだろう。人は成長し続けることができると母から教わった。自分の力でずっと成長できると、ね。

今回の試合で、僕も母のように人間は成長し続けることができると皆に思ってもらえる。そんな試合がしたい。35歳、42歳、仕事は日々忙しい。体もきつい。でも、自分の人生は自分で豊かにできるんだ。

何より好きなことがあるなら、やりたいことがあるなら、年齢なんて関係ない。貪欲に、ハングリーに、そして努力をし、その道を究めて欲しい」

――ベンソン、本当にありがとうございます。いやぁ、既に勇気をもらえました。では最後に日本のファンにメッセージをお願いできないでしょうか。

「UFCのベルトを初めて巻いた国。日本は僕の心の中にいつもあり続ける、特別な場所だ。さいたまスーパーアリーナでメインイベントを戦うことが夢のようだった。日本のファンも、ずっと僕の心に残っている。MMAに見識があって、スマートな日本のファンのことを愛している。そして、ずっと僕の応援をし続けてくれた。皆の応援が僕の後押しをしてくれた。もう1度、今回の試合でも僕をサポートしてほしい」

■視聴方法(予定)
5月24日(日・日本時間)
午前1時15分~ U-NEXT


■PFL2026#07 対戦カード

<ウェルター級/5分3R>
パトリッキ・アビホハ(ベルギー)
ベンソン・ヘンダーソン(米国)

<バンタム級/5分3R>
テイラー・ラピルース(フランス)
ジェイク・ハードリー(英国)

<ライトヘビー級/5分3R>
ボリス・アムバルギャ・アトンギャナ(ベルギー)
ジャレッド・グッデン(米国)

<バンタム級/5分3R>
マルシルリー・アウベス(ブラジル)
井上直樹(日本)

<フェザー級/5分3R>
アザエル・アジョウジ(アルジェリア)
SASUKE(日本)

<バンタム級/5分3R>
バリス・アディギュゼル(フランス)
グスタボ・オリヴェイラ(ポルトガル)

<ライトヘビー級/5分3R>
ドネギ・アベイナ(スリナム)
ジョー・シリング(米国)

<バンタム級/5分3R>
モブサル・イブラヒモフ(ベルギー)
ユスーフ・ビネイトゥ(コートジボアール)

<ウェルター級/5分3R>
カムザット・アバエフ(ベルギー)
ルカ・ポクリ(モルドバ)

<フェザー級/5分3R>
アダム・メスキニ(モロッコ)
キウイニー・ロピス(ブラジル)

<ウェルター級/5分3R>
ルスタン・セルビエフ(ベルギー)
アシュリー・リース(英国)

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