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【HEAT49】まさかのMMAデビュー戦へ、イゴール・タナベ─01─「世界一になる夢が柔術からMMAに」

【写真】イゴールの右ロー、相当に新鮮だ (C)MMAPLANET

17日(日)に名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で開催されるHEAT49でMMAデビュー戦を戦うイゴール・タナベ。

9月4日の全日本ノーギ柔術選手権ではスーパーヘビー級と無差別級の2階級を制覇、5試合全てを腕十字で一本勝ちしているイゴールが、思いもしないタイミングでMMAデビュー戦を清水洸志相手に戦う。

紫帯ではムンジアルとノーギワールズを制しているイゴールだが、今後はMMAを主軸を置き柔術はタイミングを合えば戦うと明言。21歳、人生の舵取りの変化にはどのような理由があったのだろうか。MMA初陣を1週間後に控えたイゴールに話を訊いた。


──イゴールのMMAデビューに関しては、寝耳に水で凄く驚きました。いつ頃から正式にMMAで戦おうと思うようになっていたのでしょうか。

「試合をしようと決めたのは、8月とかになってからです。でも実はだいぶ前からMMAを戦いたいとは思っていたんです。4月にHEATでグラップリングの試合をした時も、MMAを戦いたいという気持ちはありました。

住村(竜市朗)さんとグラップリングの練習をするようになって、その量が増えてくるとどんどんMMAを戦いたいという気持ちが大きくなってきました。コロナ禍では柔術の試合も少なくなっていましたし、海外にも行けない。MMAに転向するのは良いタイミングなんじゃないかと」

──MMAというか、打撃有りの練習はいつ頃からやってきたのでしょうか。

「今年の始めからボチボチやってきていました。住村さんとグラップリングをやって親しくなって、やっぱりMMAは格好良いんで。それに格上じゃないですか。スポーツとしても、MMAは柔術より」

──えっ!? 自分は全くそういう考えはないです。スポーツとしてどちらが上とかは。ただ、選手が試合をしてプロとして生きていけるという境遇はMMAと柔術では違うと思いますが。

「そこなんですよ。単純に考えると、MMAの一番大きな舞台と柔術の大きな舞台の違いは明白で。柔術はやっぱりマイナースポーツです。MMAより規模は小さい」

──ホイスの時代のようなオールドスクール柔術の時代は、MMAと柔術は技術的な接点も多いですが、今の柔術はそうでない部分の方が主流です。そのような柔術の技術を磨いてきたイゴールにとって、MMAは柔術の延長線上にあったのですか。

「全然、考えていなかったです。僕、ラペラをやりますからね(笑)。ラペラを取って戦っていたら、MMAとの接点はないですよ。ただしMMAは子供の頃から凄く好きでした。8歳ぐらいの時に柔術を始めて、そこからMMAも見るようになり、ずっとUFCに出たいと思っていました。でも成長して、現実が見えるようになると──顔を殴られるのは嫌だと思うようになりました。と同時にお父さんが柔術のジムを開いて、そこから柔術に専念してきました。

だからMMAは絶対にやらないと思っていた時期もあります。柔術に専念していて、東京に来てMMAの選手と触れ合うことが多くなってから、またMMAのことを考えるようになったんです。それでさっきも言ったように柔術の試合がなくなった。その間にグラップリングの練習を増やして、MMAの人たちと近くなりました。で、グラップリングの試合もあまりない。何より住村さんとマンツーマンで練習することも大きかったですし、そういうことが重なってMMAを本格的にやろうと決めました。MMAは試合数が多いですしね。」

──MMAで戦っていくことは、誰かに相談しましたか。

「ハイ、住村さんです」

──住村選手、その時はどのように返答したのでしょうか。

住村 まず、なんで僕に……って思いました(笑)。でも若いですしね、今からなんで。色んなことを経験できます。イゴールって、まだ21歳なんですよ。それでこれだけ柔術で実績を残してきて。僕が格闘技を始めたのが、21歳ですからね。

「柔術で世界一になりたかった夢が、今ではMMAに変りました」

──今後、柔術の試合というのは?

「柔術も続けたいと思っていましたけど、今はタイミングが合った時……、MMAの試合がない時に機会があれば戦おうかとは思っています。最初はMMAをやってみようという気持ちだったんですけど、今の自分はMMAをやる──という風になっているんです。ただグラップリングはMMAでも練習していることなので、続けて試合をしたいです、ADCCには出たいと思っています」

──MMA転向はホベルト・サトシ選手やクレベル・コイケ選手の影響もありますか。

「あります。ずっと小さい頃からサトシのファンだったし、クレベルとは本当に仲が良いですし。2人の試合を見ていて、影響はあります」

──ではMMAでも、柔術技で勝ちたいですか。

「う~ん、そうですね。やっぱり柔術の強さは見せたいです。ただし、柔術に頼る選手にはなりたくない。理想はジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズのように打撃でもガンガン戦える選手です。ジャカレもそうでした。柔術に頼らなくても、打撃に対応できる選手になりたいです」

──その打撃の練習は、どれぐらいやってきましたか。

「以前は住村さんとボチボチ、月に2回ぐらいのペースでやっていました。試合を戦うと決めてからは、週3。今は毎日やっています」

──今回、柔術やノーギのようにミディアムヘビー級やヘビー級、スーパーヘビー級でなくミドル級というのは? 本当にしぼれていますね。

「僕はファット忍者というニックネームの通り、ただのデブだったので(笑)。これまでは好きなだけ食べて太っているか、減量をしているかで適正体重ってモノがなかったです。ただ、MMAの試合に出るなら体重からちゃんと仕上げていかないといけないし、この試合に向けて2カ月掛けて16キロ落とし、今は88キロです」

──これから4キロだと、もう水抜きも必要ないかもしれないですね。

「これからはファット10 パーセント忍者です(笑)。減量は真剣にやっていくうえで必要なことだと思います。普段から食事も気を付けるようになり、以前よりずっとヘルシーになっています。これからは90キロ、それよりもう少し軽い体重を普段からキープしてやっていきたいです。

理想は住村さんが引退するタイミングで、俺がウェルター級に落として跡を継ごうかと思ったのですが、それは厳しそうです(笑)。ただミドル級を目指して体重を落としたことで、体の反応も良くなっています。柔術には申し訳ないのですが、MMAをやるって決めた時から、柔術をしている時以上に目標が定まったような気がしています」

──レスリング、キック、ムエタイ、ボクシング、シュートボクシング、グラップリングと色々な競技の選手がMMAに集まってきています。アマMMAを経験する選手、そうでない選手がいますが、イゴールもいきなりプロとしてMMAを戦います。

「アマチュアで戦う考えはなかったです。HEATはグラップリングでも僕をプッシュしてくれて、『また出てほしい』と言ってくれました。僕も出たいと思っていたのですが、MMAを戦いたいと思うようになり、ちょうどタイミングも良かったです。ならHEATでデビューとなりました」

──石井慧選手とMMAの練習は?

「ちょうど石井さんが、K-1に出ることになって打撃だけの練習をしていたので、一緒にMMAの練習はしていないです。それに石井さんのパンチは、僕は耐えられないです(苦笑)。飛んでいっちゃいますね」

<この項、続く

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