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【Column】ハム・ソヒ✖デニス・ザンボアンガの裁定を審議するということについて、ちょっと考えました

【写真】ONE73のサゲッダーオ✖マ・ジャワン。ミャンマーでの一戦は、ONEの歴史で勝敗が入れ替わった唯一の例だ(C)MMAPLANET

9月3日に開催されたONE Empower、女子アトム級ワールドGP準々決勝のハム・ソヒ✖デニス・ザンボアンガ戦の裁定に関して、「コンペティション・コミッティーが審査し、検討する」という旨の発表をチャトリ・シットヨートンがSNSで行った。

MMAPLANETに於いても──この2-1でハム・ソヒが判定勝ちした裁定は、あり得ないと書き記した。簡単にいえば打撃で大差なく、テイクダウンとトップコントロールをしたザンボアンガの負けはMMAとしてないと感じたからだ。

ONEはダメージ、ニアフィニッシュを最重視しており、テイクダウンは言ってしまえばスプロールすれば帳消し、あるいは下になったままの選手がパンチやエルボーを下から打てば効果的とされないという見方もできる。

とはいえ、この試合ではダメージやニアフィニッシュという部分で、ハム・ソヒが明白にリードしていたわけではない。顔の傷を評価対象にするのは無理がある。個人的にダメージと傷、有効打と腫れ具合はイコールだとは思っていない。

そして裁定に関して、色々な意見が出ることは正しい。だからジャッジは3人いる。3人が下した結果で勝敗が決まる。それが定められたルールだ。

過去、ONEにおいて自分が記憶している限り、裁定が覆ったのは4度ある。最初は2012年にシャノン・ウィラチャイが、ミッチ・チルソンをサッカーボールキックで破った一戦だ。後日、裁定が覆りノーコンテストになっている。この試合に関して、多くの試合結果をまとめているサイトではイリーガルキックとなっているが、当時のONEはサッカーボールキックを認めており、なぜ結果が変わったのか恥ずかしい限りだが自分は失念してしまっている。

2度目は2018年6月29日、サゲッダーオ・ペットパヤータイ✖マー・ジャワン戦。前者が後者を3-0で下したが、敗者側の抗議を受けてマー・ジャワンの勝利となり白・黒が入れ替わった。

3度目はキックだが、2019年のフェザー級GPでペットモラコット・ペッティンディーアカデミーが判定勝ちも、レフェリーが首相撲を適正に裁かなかったという理由でジョルジオ・ペトロシアンから挙げた勝利がノーコンテストになった。

4度目は記憶に新しい今年4月のエディ・アルバレスとユーリ・ラピクスの一戦だ。エディのパウンドが後頭部だったと判断したレフェリーが、反則負けの断を下した。が、ノーコンテストに変更された。

上記4試合中、ウィラチャイ✖カーン、ペットモラコット✖ペトロシアンの2試合は再戦が組まれた。

今回、裁定が覆れば5度目ということになる。従来のMMAに通例でいえば、ドラックテストの結果を受けて、陽性のファイターの勝利が取り消される以外では、一度下った裁定が覆ることはほぼない。

その常識が覆ることに違和感を覚えることもあるが、まぁケージの中やリングの上での裁定は暫定結果で、問題があれば裁定は変わるという方法論をONEが用いるのであれば、それはそれで良いだろう。

とはいえ、ここで浮上したコンペティション・コミッティーの存在と、その構成メンバー、どのような執り行いがあったのは明白になる必要がある。ここが不透明だと、委員会に興行運営陣が噛むことで──公正でないという見方もされて然りだ。その意見も分かる。と同時に興行論と競技運営論を混同しないのであれば、興行側の人間が試合を裁くことに関係するのもありだと思っている。

それがONEであればマット・ヒュームであり、日本だと梅木さんだ。興業団体関係者及びジム関係者が審判団に入ることで公平性を欠くという意見は、自分も長らく信奉してきた。サッカーで横浜マリノスの関係者が審判団にいないように。阪神タイガースの選手のフィジカルを指導している人物が、審判団に属していないのと同じように。

この考えに変化が加わったのは、MMAのような進化や変化が激しいスポーツで、一切選手と関わらない、普段はMMAから離れた人物には攻防は理解できないことに気付いたからだ。第三者機関なら良いというのであれば、米国のようにコミッションから派遣されたキックしかみたことがないジャッジが、あり得ない判定をしても良いことになる。

レフェリーはMMAを知るために、実際に練習をする方が逆に正しいとさえ感じている。最近では試合経験のあるリタイア組が、レフェリーを務めるケースも増えてきた。彼らの中には後進の指導に当たっている者も当然のように存在している。だからONEの競技委員会が、ONEの組織内にあっても──興行論とは一線を画した存在であれば──構わない。

その一方で、裁定を見直すことができる権利はONEという舞台で戦う選手全てに平等に与えらなければならない。そのように思えないから今回の件は判定には異論を捉えている人々からも非難されるているのだろう。

自分は本来、『審判だって人間。ミスはある。MMAはヒューマンスポーツ、一度下った裁定は覆られない』という考えた方だけれども、注目度の高さ、視聴者の抗議の声、SNSの反応に依り、特定の人物が「これは見直すべきだろう」ということで審議対象になるのはなく、全選手に与えられた権利で、全選手がその権利を行使できるなら、再審議はあっても良いかとも思う。


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