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【PFL2021#01】ケニー・フロリアンに訊くPFL2021年シーズン─01─「ケガなく戦うのはMMAの根源」

【写真】渋くなっているケンフロ。最高の解説が、戻ってくる。こんな嬉しいことはない(C)MMAPLANET

23日(金・現地時間)にニュージャージー州アトランティックシティのオーシャン・カジノリゾート開幕するPFL2021#01。

ライト級とフェザー級の2階級で戦いの幕が切って落とされる──過去最高のメンバーが揃ったPFLの戦い。しかし、ライト級で活躍が期待されていたジョニー・ケースが家庭内暴力で逮捕されたことで出場が取り消され、代役をパラグアイのアレックス・マルチネスが務めることになった。

同じくオリヴィエ・オバメルシェも負傷欠場し、彼の代わりにTitan FCライト級王者のハウシュ・マンフィオのシーズン参戦が決まった。そのTitan FCからはフェザー級の台風の目と目されていたジェイソン・ソアレスがメディカルに引っ掛かり、初戦を待たずして撤退。ソアレスに代わりラジャー・ストヤディノビッチがロースターに加わった。

ケース、ソアレスを失ったことは非常に残念だが、それでもライト級にはアンソニー・ペティス、さらに2連覇中のナタン・シュルチやポーランドの足関キングことマルチン・ヘルドがおり、フェザー級でも3連覇を目指すランス・パーマー、BRAVE CFフェザー級王者バッバ・ジェンキンス、ロシアのモヴィッド・ハイブラエフと十分に魅力的な面子が残っている。

そんなPFL2021の中継陣にケージの賢人ケニー・フロリアンが加わった。知己溢れる解説で定評のあるケンフロにPFL2021年シーズン、そしてPFLのフォーマットの楽しみ方を尋ねた。


──ケニー、PFLでの解説が決まり本当に嬉しいです。これだけMMAの中継、配信が行われているのに長い間、ケニーの声を聞くことがなかったです。この間、どうされていたのですか。

「PFLと一緒にやっていくことになり、とても嬉しいよ。2017年頃から、なぜかUFCから解説の声が掛からなくなった。確かな理由は聞かされていない。そしてUFCの中継がFOXからESPNに代わった時、僕はESPNのUFC中継チームには選ばれなかった。

それからは自分の他のビジネスのことに集中していて、投資もしてきた。3年前にはLAを離れ、サウスカロライナに移ってきたんだ。ジムはマサチューセッツに持っていて、弟のキースに任せているけど、以前より練習する時間もできたし、健康的になっている。そして3歳の娘に続き、5月には長男が生まれる予定なんだ」

──おお、息子さんが!! おめでとうございます。

「ありがとう。このタイミングでまたMMAの仕事が出来てパーフェクトだよ」

──自分もケニーの解説が聞きたくてしょうがないです。ドミニク・クルーズとケニー・フロリアンが、最高のMMA解説者であることは間違いないと思っています。

「嬉しいよ、そう言ってもらえて。僕もこの仕事が好きなんだ。他の多くの解説者と違い、技術面に重点を置いた話をしてファンにMMAをもっと理解してもらいたいと思っている。

そしてPFLという、これまでとは違うフォーマットのMMAプロモーションでの解説は、僕にとっても新しいチャレンジになると思っている。ショーン・オコネルとランディ・クートゥアーとの実況が楽しみだよ」

──ケニーだけがMMAの解説でジュードー・スローと言わないです(笑)。

「アハハハハ。でも、そういうことが大切なはずなんだよ。柔道の技の名前は米国では浸透していない。だから、僕も完璧じゃないことは分かっている。でも、解説をする限りは自分の知らなかったことも学んで皆に伝えないといけない。

MMAは非常にテクニカルで、とてもハードだ。殴った、テイクダウンした、蹴ったという見たままの攻防でなく、そのMMAの裏にあるたくさんの技術、そのシステムが理解できればもっとMMAが楽しくなるはずだ」

──そしてドミニクとケニーの共通点は、おかしいことはおかしいと指摘することです。この判定はおかしい。レフェリングは間違っている──と。

「アハハハ。その通りかもね」

──だから団体に煙たがられたのでは?(笑)。

「きっとそうだね。アハハハハ。知識を広め、経験を積む。そして正直に話す。だってファイターは懸命にトレーニングをして勝利を目指しているんだ。それなのにおかしな判定があったり、レフェリングにミスがあれば指摘して然りだよ。

そんなミスジャッジで、彼らの人生に大きな影響を与えてしまうんだから。このスポーツで、最もフラストレーションがたまるのが理解できてない判定や、おかしなレフェリングだからね」

──全くもってその通りです。ところでケニーはPFLのシーズン制をどのように思っていますか。

「興味深いね。プレーオフのワンナイト・トーナメントはMMAのルーツを思い起こさせる。それにマーシャルアーツの試合って、大概がトーナメント戦じゃないか。そういう伝統的な空気がするよね。

そして僕自身はMMAのワンナイト・トーナメントを経験していないんだ。と同時に4月から12月──大晦日まで8カ月という長いシーズンを通し、ファイターたちがどのようにトレーニングをし、体調を整えて試合に臨むのか。そんな一面を解説しつつ、自分も学びたいと思っている」

──シーズン・フォーマットは、多くのファンがまだ見慣れていないです。

「さっきも言ったけど、選手たちはシーズンを通しての準備が必要になる。勝ち進めば、誰と当たるかが分かってくる。これはマッチメイカーが考えたワンマッチのオファーを待つのとは違う。1試合ごとしっかりと準備をしつつ、シーズンを戦い抜くだけのコンディションを心身ともにキープしないといけない。

例えばファンもローリー・マクドナルドの初戦を見て、同時に彼とシーズンを争うであろうレイ・クーバー3世やマゴメド・マゴメドカリモフの試合にも注意を払える。シーズン制だから、ファンも対象をしぼって選手の動向を追うことができるんじゃないかな。そして、どこかのタイミングで彼らが戦う。そういうことを考えることができることが、シーズン制の特徴だね。

そして階級ごとにお気に入りの選手、気になる選手がいれば、シーズンを通して楽しめる。次の試合がいつあるのかが、あらかじめ分かっているからね。そこが従来のMMAイベントとの違いだよ」

──MMAにはUFCという絶対の存在があり、シーズン制を用いず、ワンナイト・トーナメントを行っていません。トーナメント戦を見た時、UFC標準でモノゴトを見ることで『トーナメント戦でなければ、どうなっていたのだろう』という風に考えがちになるかと思うのですが。

「そこに1試合だけでなく、シーズンを通して、その試合の次がどうなるのかという楽しみや期待が不随してくるんだよ。ファイターは勝利が必要だ。でも、スマートに勝たないといけない。ダメージを多く負うことはできない。次の試合の予定はもう決まっているんだ。ケガをしないで勝つ、これはマーシャルアーツの根源だよ。

MMAはもともと、如何に自分を守ることができるのか──護身として、どのスタイルが有効なのかを証明するために始まった。今、そんなルーツは忘れられてしまっているかもしれないけど、セルフィディフェンスに通じる──ケガがないように戦うことは、凄く興味深いことだと思うよ」

<この項、続く

■視聴方法(予定)
4月24日(土・日本時間)
午前6時30分~Official Facebook

■PFL2021#01対戦カード

<ライト級/5分3R>
アンソニー・ペティス(米国)
カシアス・クレイ・コラード(米国)

<ライト級/5分5R>
ナタン・シュルチ(ブラジル)
マルチン・ヘルド(ポーランド)

<フェザー級/5分3R>
モヴィッド・ハイブラエフ(ロシア)
ラジャー・ストヤディノビッチ(米国)

<フェザー級/5分3R>
ランス・パーマー(米国)
バッバ・ジェンキンス(米国)

<フェザー級/5分3R>
ブレンダン・ラウネーン(英国)
シェイヤン・モラエス(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
ジョイルトン・ラターバッバ(ドイツ)
ハウシュ・マンフィオ(ブラジル)

<ライト級/5分3R>
アクメト・アリエフ(ロシア)
ミハイル・オジンツォフ(ベラルーシ)

<フェザー級/5分3R>
クリス・ウェード(米国)
アントニー・ディジー(フランス)
<フェザー級/5分3R>
チョ・ソンビン(韓国)
タイラー・ダイヤモンド(米国)

<ライト級/5分3R>
ロイック・ラジャポフ(タジキスタン)
アレックス・マルチネス(パラグアイ)

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