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【Special】特別寄稿。ゴング格闘技復刊に向けて──松山郷「ゴング格闘技は2019年の春に向かいます」

GONG Kakutogi【写真】版元はともかくとして、スタッフから愛され抜いていた雑誌であった。それだけは言える(C)GONGKAKUTOGI

27日(木)、1年8カ月前の休刊から、GONG格闘技が復刊することが松山郷編集長により明らかとなった。

格闘氷河期を決定づける出来事、それこそ専門誌がなくなるという事態だった。この冬の時代、格闘技は死に絶えたか。決してそうではない。伝え方が変化したうえで、日本の格闘技界は新たな時代を迎えた。

そしてゴング格闘技が復刊する。復刊に寄せて、松山氏がその想いを綴ってくれた。


「『間合い? 近くなる』──ヨーセングライ・IWEフェアテックスは、MMAグローブをはめてサークルケージのなかで戦うことで、ムエタイと比較し、その距離がどのように変わるのかを問われて、そう答えました。

全く逆の回答を予想していた私は通訳を介したため、うまく意図が伝わらなかったのか、あるいはリップサービスかもしれないとさえ思っていました。ところが実際にヨーセングライはルイス・レジスの攻撃をしっかりと見切ると、遠い距離からはミドルで圧力をかけ、組みの展開でもバランスを崩すことなく近距離も制し、最後は金網に詰めて右アッパーの連打で試合を決めました。

ペットモラコットもパンパヤックも、まるでいつものムエタイを戦うかのように金網のなかでタイクリンチ、ヒジ・ヒザを平然と使いこなし、その姿を見た私はチャトリ・シットヨートンCEOはONE Championshipという舞台で、壮大な格闘技の実験をしているのではないかと思うようになっていました。

それが『ゴング格闘技』休刊から1年8カ月後に、私がマレーシア・クアラルンプールの大観衆のなかで見た光景でした。

2017年6月号──『ゴング格闘技』が最後に紙に印刷された号において、某ライター氏は「Realistic FantasyよりもFantastic Reality」とタイトルに打ち、このようなリードから後半の特集を制作しました。

『分かり難い? 知らないよ。地味だ? そうなんだ。『ゴング格闘技』は全てを楽しんできた。これから、もっと楽しんでいくための21ページ、武道がエンターテイメントになるよりも、リアルのなかにファンタジーを求めたい』と。

EPSON MFP imageそれらのページではライアン・ホールがサブ・オンリー柔術を、カポエイラのステップを池崎雄一氏が語り、ヒデ三好氏は金網際の逆転技であるスイッチ及びコブラを、鈴木秀明氏がムエタイ流の崩し=リアムを実演する姿が映し出されています。さらに岩﨑達也氏の指導のもと澤田龍人が武術空手の突きからコンビネーションを実演、ゲイリー・トノンが柔術とMMAについて語っています。

最後に、BLOWSの中蔵隆志代表が語った言葉。「ダメなものはダメと言わないといけない」──これが本誌の「最後の」提言として、編集部の言葉ではなく、某氏の取材により中蔵代表の口から引き出されたことに、私は少なからず後悔の念を持って紙の『ゴング格闘技』の制作から離れました。

今回、『ゴング格闘技』の復刊が決まったことで『MMAPLANET』に言葉を寄せさせていただくことにしたのは、あの“続き”を『MMA PLANET』が続けていたからでした。

『ゴング格闘技』は全てを楽しんできた──と書かれてある通り、人類5千年の歴史の集積のうえにある格闘技には、まだまだ探求すべき事柄が残されています。スポーツであり、文化であり、アートであり、そして何よりファイトである格闘技について、“今と未来”を戦うファイターたちを通して、そのもっと奥深くを『ゴング格闘技』は知りたいと思っています。

そう思わせてくれたのは、休刊の間もSNS用と、復刊したとき用の資料写真撮影のための取材を二つ返事で快諾し、私にリングサイドに座ることを許可してくれた各団体の代表の方々、そして──あの続きを探求し続けている『MMAPLANET』の報道でした。

休刊後、『ゴング格闘技』をデザインしてくれていたトサカデザインの戸倉巌さんと小酒保子さんは、『ALL ABOUT MARTIALARTS』とプリントされたTシャツを、スタッフ全員に送ってくれました。

休刊前の115ページからの特集──には続きがあります。それをアジアの地で再確認し、日本で本当に格闘技が好きだった人たちの手に、あの頃のスタッフたちと再び、雑誌を届けられることに感謝の気持ちを抱きつつ、『ゴング格闘技』は2019年の春に向かいます」

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