この星の格闘技を追いかける

【ONE】3月23日(火)発売GONG#313から。青木真也✖平田樹、番外編。青木が3月11日を語る……

【写真】ライル・ビアホーム戦は東日本大震災から1カ月もしないうちに行われ、青木真也は米国の記者に震災について尋ねられ──思いもしない返答をした (C)MMAPLANET

青木真也が、平田樹に格闘技、MMAとは何か熱弁を振るった。題して青木塾、開校。そんな両者にとって初めてのロング対談の模様を3月23日(火)発売のGONG格闘技ではABEMAとタッグを組み、共同取材を行った。

スペースの都合上、泣く泣くカットした──青木真也と北岡悟が、どれほどだったか理解できるエピソードをここで紹介したい。

あの日の練習──青木真也が2011年3月11日を振り返った。


――今日は3月11日ということで……本当に久々に思い出したのですが、青木選手が東日本大震災から1カ月も経っていない4月9日にサンディエゴで試合をしました。

青木 はい。ライル・ビアホーム戦でした。

――あの時は川尻達也選手と髙谷裕之選手も出場Strikeforceのビッグショーで。ギルバート・メレンデスと戦う川尻選手と、青木選手が現地の記者の取材を受けたんです。川尻選手は茨城だったから、その時の大変な状況を話して『みんなに勇気を』という話をして。

平田 ハイ。

──至極真っ当ですよね。その時に青木選手は「関係ないよ。地震で親が死のうが、別にオレは試合するよ。勝てば良いんだろ」って。

青木 ハハハハハ。

――米国のメディアは皆が取材の後で「アイツは頭がおかしいんじゃないか?」と私に話しかけてきて。こういう青木選手のメンタルをどう思いますか。

平田 変わっているなぁって……。

一同 爆笑

青木 でもね、3月11日は練習していたもん。地震が起こった時に八隅さんのところで。

平田 私はまだ小学生でした。ちょうど休みだったか何かで。自分とお母さん、お母さんのお姉さんとで大阪に行っていたんです。だから、あまり地震を体験していないんです。東京に戻れなくなったなぁって言っている時に、津波の映像が流れてきて……。

青木 僕は練習していてさ。第一波の時にすごく揺れて。「何だよ」って思いながらバックを取っていたの。で、北岡は横で誰かをガブッていたの。揺れても、誰も外に出ようとしない(苦笑)。すっごく揺れていたのに。

――当時のロータスは、私の自宅に今より近いので、どれだけ揺れたかは想像がつきます。家の庭とコンクリの部分が何かの遊戯マシーンと思えるほど、ズレて揺れ続けていましたから。

青木 僕らは「ヤバいんじゃない? でも良いか」と思ってスパーしていたら、宇野薫はやっぱりまともで。宇野さんが「やめて、すぐに出ろ!」って叫んで。それで何人か外に出たんですよ。それでも北岡はまだガブっていて、オレはバックについていて(笑)。で、「お前ら出ろ!」って宇野さんが怒ったんですよ。宇野さんが絶叫したのは、あの時だけ。

――不謹慎かもしれないですが、良い話です。

青木 揺れが収まってから、もう1回練習していたんですよ。やっていて、余震が来てもう「打ち止め、まぁしょうがないか」って感じで終わった。それだけ、変わらず練習していたんですよ。あの時のメンバーは、10年経ってもまだやっているから。

平田 ……。

青木 それぐらい、みんな好きだったんですよ。

――あの揺れは本当に凄かったですけどね。

青木 僕たちは本当に……次の日は、僕と北岡さんだけだったかな。2人だけで練習して。狂っていましたね。あっ、あともう1人いたけど、誰かは思い出せない。地震の翌日も練習していて、物がないのよ。水がないとか。コンビニに何も売っていなくて。

そうしたら北岡さんは、麦茶でプロテインを割って飲んでいて。「水が売ってねぇよ!」ってキレていましたけど、「いや、プロテインを飲まなくてもいいだろ」みたいな話をしていた記憶があります(笑)。それだけブレていなかったと思います。

――いや、ブレていないですね。でも人としてはどうかなということですけど。「親が死んでも戦って勝つんだよ」って平田さんは言えますか。

平田 ……、いやぁ。

青木 でも僕、それは思っていますよ。いまだに。この仕事は親の死に目に会えない仕事だと思ってやっている。僕、祖母がDREAMのマッハ戦の前に亡くなったんですよ。「どうするの? 帰ってくる?」と聞かれても「帰るわけないでしょ」って。ウチの親もそう思っている。「帰らないよね」って。そんな感じのテンションでいるので。

――その想いはあっても、地震で日本のことを心配してくれている記者に対して、わざわざああいうことを言うかなとは正直感じました。

青木 僕が逆にビビッたのは、「じゃあ僕に何を求めているのかな?」って。「試合しないで帰ります」と言ったら困るだろって(笑)。

――川尻選手は「被災者の皆のために戦う」と言っていて、凄く対照的だったんですよね。

青木 僕は「みんなのために戦う」って思ったことがないんですよね。自分のために、自分が好きだからやりたいので。何もないんですよ。だから、そんなにのめり込まないほうがいいよ。好きになっちゃうと、困っちゃうから。

※距離、バック奪取から襷掛けの是非、首投げと袈裟固め、試合に向けての気持ちの作り方と追い込み、プロとしての境遇と立場、セージ・ノースカット戦、平田樹が強くなる──などなど、90分に渡るインタビューの要点は23日(火)発売のGONG格闘技でお楽しみください。

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